[5年生向け]国試からみる,臨床実習のポイント!(その3)教科書の丸暗記では対応できない問題
こんにちは,編集部のA.Mです.
今週もお届けします,「国試からみる,臨床実習のポイント!」
第3回の今日は「教科書の丸暗記では対応できない問題」についてお送りします.
■教科書の知識をベースに臨床での対応力を磨く!
最近の国家試験は,教科書に書かれていることを
ただ暗記するだけでは解けない問題が増えています.
患者さんの状態や事情,現場の状況をふまえた上で,
柔軟に対応できる思考力が問われる傾向にあるんです.
ここで,実際に出題された112回の臨床問題をみてみましょう.
【112A17】
62歳の男性.胸部食道癌の術後に人工呼吸から離脱できず,アンピシリンの投与を受けていた.術後3日目の朝,39.1℃の発熱と喀痰増加がみられ,胸部X線写真で右下肺野に新たな浸潤影を認めた.血液および喀痰培養を行い抗菌薬を変更したが,術後4日目になっても39℃を超える熱が持続している.培養検査の結果はまだ判明していない.
この時点の対応として適切でないのはどれか.
a 上体を30度挙上する.
b ドレーン排液の性状を確認する.
c 気管チューブのカフ圧を確認する.
d 抗菌薬を再度変更する.
e 創部の状態を確認する.
正答率89.5%,ほとんどの受験生が解けた問題で,正解はdでした.
人工呼吸器関連肺炎(VAP)であることはなんとなくわかる方も多いと思います.
では,VAPについてだけ勉強すれば解ける問題かというと,
選択肢bやeは食道癌術後の対応も関わってくるため,そうでもなさそうです.
まさに患者さんの状態を見極めて,どのように対応しなければならないか,
きちんと考えなければならない問題ですね.
ちなみに,「効いてなさそうだったら抗菌薬を変更」という対応は,
若手の医師がやってしまいがちなことではあります.
抗菌薬の使用法は学生さんだけでなく研修医になってからも戸惑うことが多いです.
特に教科書だけでは学びづらい部分でもありますので,
病棟で抗菌薬を投与されている患者さんに当たったら,
なぜ,その抗菌薬が投与されているのか(ついでに投与方法まで)注目すると
いいと思います.
他にも【112E42】舌根沈下時の気道確保,【112A21】ドレーンが抜けた人への対応,
【112B30】前置胎盤への対応など,教科書的知識のみを当てはめてしまうと
不正解となってしまったり,解けなかったりする問題がありました.
ちなみに必修問題の【112B30】は「設問が不明確なため複数の選択肢が正解」と
なっています.
必修問題でも,教科書丸暗記では解けない問題があるというわけですね.
また,治療の優先度を考えさせるような問題も毎年出ます.
112回でいうと,【112A16】DICを伴うAPLの治療,
【112A40】中枢神経系原発悪性リンパ腫の治療などがこれにあたります.
教科書では,治療法が並列で書かれているだけのことがありますが,
実際には優先度を考えて,どの治療法から開始するかを見極めなければなりません.
さらに,患者さんの一時的な状態だけからでなく,
経時的な変化を追って対応を考えなければならない問題もあります.
いずれも教科書丸暗記では対応が難しいですね.
教科書で学んだ対応や治療法が,実際の臨床現場ではどんな患者さんに,
どんなタイミングで行われているかを実習中に確認してみましょう
今日はここまでです.
それではまた次回,お楽しみに!
(編集部A.M)