第116回医師国家試験問題解説
第115回医師国家試験【座談会】本番の国試を体験した者だけが語れる!
【登場人物紹介】
鷹虎(T):その高身長と人柄とで,クラスメイトがいつもわらわらと寄ってくる留まり樹のような癒やし系.成績は良いのに,本人は何かと自分に自信が持てず,周囲からもったいなく思われている.
賢太郎(K):マニアックなレベルで学校の試験でも国試でも過去問研究に余念がなく,趣味が高じて各校講義動画の比較対象なんかもやってたり.反面,時々うっかりやらかしがみられ,国試当日も受験会場を間違えた!
愛子(I):学校では国試対策委員長を務めていたしっかり者.同級生の勉強の面倒を見すぎて,自分の成績はいつも中の上くらい(でも全然気にしてないあたりが委員長の器).
十郎(J):医学部でなく全学の陸上部に所属し,某大会には県代表として出場したこともあるガチアスリート.運動も勉強も,限られた時間の中で効率性を重視してクレバーに取り組む.
朱音(A):出身も育ちも関西にゆかりがないのに,しばしば友人にも教員にもツッコミが激しい.かと思うと,急に周りに盛大に流されたりもする.いつも赤点ギリギリでここまで乗り切ってきた!
全体に対する所感
司会(以下●)皆さん,医師国家試験の受験,2日間お疲れさまでした! 今年は新型コロナウイルスの流行もあり,大変でしたね.
今年の試験はどうでした? 例年と比べて難しかったですか? 簡単でしたか? それとも普通?
朱音(A):難しかったと思います! 周りの人もみんな「難しかった」って言ってた~.
鷹虎(T):難しく感じたんだけど,講師速報の採点予想を見てみると,思ったより平均点が高いなって印象があって.みんな難しかったって言う割には点数取れてて,びっくりしました.
●試験って,解けた箇所はあまり記憶に残らなくて,解けなかった問題ばかりが気になってしまいますよね.
愛子(I):これは皆さんが感じていることだと思うんですが,大学によって状況は違えど,コロナ禍の影響で勉強時間が増えたりしましたよね.勉強の前倒しが進んだとかの影響もあって,難しくても得点できた人が多かったのかなって思います.
●みんな,勉強しかすることがなかったみたいですね(泣).近年,国試のレベルがどんどん上がっている,ということはよく言われています.数年前に卒業した先輩たちは,最近の国試問題を見て「最近の受験生はこんなことまで勉強するのか!」とみんな言いますね.覚えなきゃいけないこともどんどん増えていますし.
トピック的な問題
●最近話題のトピックス的な出題はありましたか? 例えば新型コロナウイルス感染症に関する出題などは?
T:肺炎の問題で「新型コロナウイルス〈SARS-CoV-2〉PCR検査は陰性であった.」と文中で示されている臨床問題がありました!【115D23】
賢太郎(K):(医師国家試験より少し前に実施された)歯科医師国家試験では新型コロナウイルスを直接問う出題(ハイリスク者へのアプローチに関する出題)があったみたいだけど,こっち(医師国家試験)はストレートな出題はなかったね.
I:感染対策に関する出題は多かったかなって印象はありました.
A:次亜塩素酸ナトリウムで手指を消毒をすることが誤りであることを選ばせる問題とか.(次亜塩素酸ナトリウムを誤って手指消毒用に使用している施設などがあったことに対して)「医療従事者はきちんと理解しておいてね!」っていうメッセージかなって.【115E47】
●では新型コロナウイルスに関しては,直接の出題というより,周辺知識を聞いてきた感じですね.
●今回からみられた新たな出題傾向などはありましたか?
A:糖尿病の患者さんに関する問題で,「朝食前の血糖値は高いが,夜中の発汗(=低血糖)がある」っていう状況で,対応を問う出題がありました.1対1対応の知識で解くのではなく,状況をきちんと整理して考えないと解けない感じ.【115A53】
T:自信を持って解答できるというよりは,自分が選んだ選択肢が「結局あってたのかな」って後になって不安に思えてくるような,そんな問題が多かった気がします.絶対これが答えだ!って言える問題が少なかった気がする.
●どの問題でもその傾向はありましたか?
A:私は特に各論でそういう傾向が強かったと思います.
T:わかる! 各論,そんな感じだった!!
I:D問題が難しく感じました.平均点も低かったですよね?
T:D問題の後はみんなザワザワしてたよね….
A:うん,精神的につらかった….
●D問題(2日目の各論)が難しかったなら,A問題(1日目の各論)は比較的楽だった?
I:いや,そんなことはなかったです(笑)
T:1日目の後,まわりの友達と「うーん…手応え微妙だったね…」って話をしてたんですよ.「じゃあ明日は簡単なんじゃない?」って言って期待してたんですけど.結局2日目が始まってみると,D問題も難しかったから「あれ?」ってなってました(笑)
●じゃあ,試験中ずっと辛かった感じでしょうか?
T:あんまり晴れやかではなかった….
十郎(J):2日間終わっても,全然すっきりしない気持ちのまんまで試験会場を出た….僕は先輩から「会場に向かったときと,会場から出たときの爽快感が違う!」って聞いてたけど,全くそんなこともなく(笑)
●モヤモヤが最初から最後までつきまとう試験だったんですね(笑) お疲れさまでした.
各科目について所感:まずはメジャー科目から
●では科目別の話に行きましょうか.
メジャー疾患について,辛かった科目や,これはいけた!っていう科目はありますか? あるいは傾向の変化とかは?
昨年,一昨年などは,「肝胆膵がつらい」「そのかわり消化管が簡単に」という声が聞かれていました.
I:肝胆膵はつらくなかったよね.
T:うん,そんなに.あ,でも消化管で内視鏡が….
一同:GERD(胃食道逆流症)かNERD(非びらん性胃食道逆流症)かみたいなやつ!【115A50】
I:今までNERDが正解選択肢だったこと,なかったのに~.
●NERDが正解だった問題は,消化管内視鏡の所見としてはほぼ異常なしだったみたいですね.異常が「ない」からNERD,って,それでいいの?!っていう.
T:よく見たらどこかに異常があるんじゃないかな?!って気がしてきて,自信がなくなりました.
J:NERDって正解にならないイメージだったのにね.
●わりと模試とかでは出る出るって言われていたんですが,国試としては初めての出題だったようです.「出る出る」と言われているものは,そのうちいつか出るという.
逆に,その4問くらい前にNERDが外れ選択肢になっている問題もありましたね.【115A47】
I:やたらNERDが出てきてた!(笑)
T:消化管関連の問題はすごい写真が多かったなって印象があります.
A:確かに.
T:内視鏡画像出してきて,病変部位はどこですか?っていう問題とか【115F53】.ちゃんと普段の勉強から写真を見たほうがいいんだな~って思いましたね.
●循環器での出題はどうでしたか?
A:たこつぼ心筋症!【115D35】
J:そろそろ来るって言われてた~.
A:でも結局,「診断:たこつぼ心筋症」,じゃなくて.
K:「可能性として考えられない疾患:たこつぼ心筋症」だったよね.
●正解の疾患ではないんですね.巧妙な出し方.
A:ようやくたこつぼが正解選択肢になったという.
J:循環器はたこつぼのイメージが濃く残ってますね.
A:バチバチ循環器での出題ってよりは,心アミロイドーシスとか.【115D4】
T:THE循環器ってよりは,他の分野と絡めた出題が多かったです.
J:どっちに分類されるのかな~って思ってました.
A:(この座談会の資料では)循環器の方に分類されていますが,SLEが合併していて~みたいな問題は,結構膠原病寄りの出題なのかなって.オーバーラップしてる.あの問題,選択肢に「心外膜炎」と「心内膜炎」がどっちもあって….【115A27】
J:それ!!
A:内膜炎も外膜炎も選択肢にあるの,いやらしい!
●エコーから外膜炎か内膜炎かどうかは見えませんでした?
一同:画像はもう,空気なんで(笑)
T:確かに,その問題は悩んだ記憶が….
A:SLE自体は心外膜炎と心内膜炎,どっちでもありうるからね.
I:もうBeckの三徴(低血圧,頸静脈怒張,心音の減弱)だけ見て,心タンポナーデ,それなら心外膜炎かな~って解いちゃいました.
A:わかる.そこだけ信じて解いた.出題したの,SLEが相当好きな先生だよ,絶対.
●他の科目はどうでしょうか? 内分泌・代謝とか.
J:リフィーディング症候群の問題があったよね! どの輸液が適切か…みたいなやつ.【115D75】
A:リフィーディング症候群の問題だって後で気づいて,いや~~そっか…急に栄養入れちゃいけないんだ…ってなった(笑)
●a(20%ブドウ糖含有,外れ選択肢)か,e(5%ブドウ糖含有,正解選択肢)かで割れてて,20%を選んだ人のほうが多いという.
J:20%ブドウ糖を入れてあげたくなる.
A:おなかすいてるのに~って思っちゃうよね(笑) 「末梢静脈から投与する場合」とか書いてくれてたら5%を選びやすくなるのに,「静脈栄養として適切なのはどれか」だもんね.
●エグいですね.
A:ちょっとこれは….
J:際どい問題.
T:ま,いっか! 1点だし! って思ってました(笑)
●リフィーディング症候群で急に栄養入れるのがどれぐらい危ないか,それ次第では「20%ブドウ糖含有,ビタミンB1なし,微量元素なし」のd選択肢が禁忌肢としてカウントされている可能性もあります.どれくらい危ないことなんでしょうね.
一同:確かに….
K:さすがに,添加物2種類なしなしの選択肢を選んだ人は少なかっただろうけど.
T:選択肢が8つもあって,添加物なしなしを選ぶ人はなかなか勇気ある.
K:逆に5肢択一だったりしたら,もう少し難しくなりそうですよね.8つ全部のパターンを網羅した多選択肢問題だったのが,ある意味優しさというか.
J:これ,選択肢a(20%ブドウ糖含有,ビタミンB1あり,微量元素あり)は禁忌肢にはならないんじゃない?
A:aは大丈夫でしょう.
●禁忌は1問につき1選択肢だけのはず.これまでどおりでいけばですね.
●腎臓は…….
一同:Fabry病!【115D55】
A:(115回国家試験の中で)何回か出てきたよね.さっきの循環器のたこつぼの問題の外れ選択肢【115D35】で登場して,その後の問題でFabry病が正解になるものが出てくるっていう.
●Fabry病は内科系専門医試験で繰り返し出ていたらしいんですよね.そのうち国試にも…,とは思っていました.
A:112回か113回にも出題があった記憶が.
J:一番最初のほうか何かだったよね.無汗症に関する一般問題で.【112A2】
A:で,ようやく臨床問題でFabry病が出てきた~って感じですね.
●Fabry病疑いの患者さんに対しては,特に熱中症の既往歴を聞く,とかがあるんですよね.汗を出しにくいから.
一同:へ~!
I:この場で学ぶという(笑)
●あと,マルベリー小体が尿沈渣で見えるとかね.
A:臨床検査で結構報告があるみたいですね.
英語問題と感染症
J:やっぱり英語の問題が多くなったなって感じた.
●英語で感染症がらみの出題もありましたしね.
A:ジカ熱!【115A6】
●ペラっと(1日目A問題の)1枚目めくって,いきなり英語か!って感じで.
A:ジカウイルスなんて全然知らない…!ってなったけど,意外と解きやすかった.
J:外れがわかりやすいように問題を作ってあったなって思う.
●初っ端からただ受験生をびびらせるためだけの英語,でしたね.
J:しかも,正解選択肢が最後のeだから,a,b,c,dって順に読んでるとき「全部知らん…」ってなるという.
T:英語,あと何が出たっけ?
I:ジカ熱と,あとはスクリーニングの話のやつと….
J:ああ,新生児マススクリーニング.hot airがどうのみたいなやつでしたね.【115C25】
A:screening testのpaperはhot airで乾かさなければいけない,って選択肢を見ながら,NO!NO!NO!って頭のなかでツッコんでた(笑)
J:ドライヤーで乾かすみたいな感じかな.
K:英語で定点把握対象疾患の問題もあったよね.【115C13】
A:全数把握しなきゃいけないのか,定点把握でいいのか,みたいなやつね.
●日本の制度についての問題なのに,英語で出題するという.
A:日本語でよくない?!?って思っちゃいました.この英語を使う機会はいつなんだ….
T:でも全体的に,英語問題でめちゃめちゃ難しいのはなくて,逆に安心して解けたかもしれない.
A:必修で英語のやつもあった.アルコール多飲者で,Wernicke脳症.あれは素直に,フカヨミせず,ありがたい3点だった!【115B32】
学校のテストと国試
I:免疫チェックポイント阻害薬の問題が結構出てましたね.【115A4】【115A65】【115D58】
T:卒試でも聞かれることが多かったような??
●今,適応がどんどん広がっています.そういうことも踏まえての気合の入った出題なのでしょう.
T:4年生くらいのときの学校の試験だと,「こういうのもありますよ」程度でそんなに覚えなくてもいいかな~って空気だったんだけど,6年の時の卒試ではガッツリ出てて.ちゃんと覚えなきゃいけなくなってきたんだな!って感じました.これからもっと大変になるんだろうな~.
●それまで3次治療で使っていたりしたものとかも,気づいたら第一選択になってたりしますからね.
J:メディックメディアは,もともと免疫チェックポイント阻害薬のことをプッシュしてた.講師速報の予想問題で,肺扁平上皮癌の話をしてたよね.
A:これからは臨床問題とかで紛らわしい選択肢として出たりするのかなって思います.
I:この分野ってどんどん適応が広がるから,勉強と適応のいたちごっこになっちゃう.
T:古い知識で戦わないほうがいいね!
A:改めて,学校の卒試って大事だなって思いました.卒試の知識なんて国試本番でそんなに使わないじゃん!って思ってたけど,やっぱり,新しいことを臨床の先生として学校で教えてくれるわけだから,きちんと学ばなきゃな~って.
●そうそう,大学の先生って臨床的なトレンドに一番敏感なひとだから,授業でポロっと言ったことがバッチリ1・2年後の国試に出たりもしますね.
K:直前Assistで盛永先生が「これはいろんな卒試で出てたよ!」って言ってくれてた.
●どんな問題が出るかの傾向予測は,卒試が参考になりますね.
J:盛永先生の直前講座,必修予想は結構当たってた.
A:盛永先生オリジナルのカテーテル感染症の問題のやつ,治療薬はバンコマイシンだよ~みたいな問題が,そのまんま国試に出てた.【115C62】
J:あれ,自分は間違えちゃったんだよね!(笑) 冬期講習で「ふ~ん」って思ってたけど,いざ本番になってみると「どうせみんなメロペネム選ぶだろ」って思っちゃって.後で「あれだけ強調されてたのに…」ってなりました.案の定,バンコマイシンでした….
マイナー科目
●では次は,マイナー科目でなにか.
K:皮膚科がわからなかった…….
I:自分は眼科~.
T:眼科,「知らないものは知らない!」で突き進んだ(笑)
A:卒業試験も出てたけど,kogojが出てたよね.そのときは名称すら読めなくて友達と,「ココジェー」って読んでた(笑).【115A21.正しくは「Kogoj(コゴイ)海綿状膿疱」です】.今頃うちの学校の先生,ドヤ顔になってると思うよ(笑)
J:やっぱり卒試は馬鹿にできないね.
A:ちょうど友達と「こごじぇ~」って言ってたところだったから,ちょっと恥ずかしいけど記憶に残ってました.
I:あと「痒くなる皮膚科病変」ってやつ!【115C18】
T:扁平苔癬はおさえてるけど….
A:落ち着いてたら解けるけど,試験だと選べないよね.冷静じゃなくなる.
T:過去問通りの,これね!って気持ちよく選べるものもあったけど,でも一方で,解答が不安になるようなものもあった.かといって,全体的に難易度上がったかっていうと,そうでもないような気がしたから,「みんなが取れるとこで点数取れないと落ちるんだな…」って思ってました.
J:血管肉腫の問題とか.【115F36】
T:ここは絶対外しちゃだめだ!って思った.
A:水族館も.ありがとうございます!って思った(笑)【115D33】
T:水族館のキーワードだけで解けました.
●病歴で「水族館で勤務していますか?」って,なかなか聞かないですよね.
じゃあ,今までの話をまとめると,これまで通り取れる問題も出てはいたし,取れない問題も出ていたと.
T:自分が難しいと感じる問題はみんな解けないだろうし,そこは気にせず先に進んでしまっていました.
●画像系の問題とかは? マイナー科目では,画像問題が例年頻出ですが.
A:血管新生緑内障の問題とか.【115A70】
T:これはだいたいそうかなって思えた問題でした.イヤーノートに載ってたよな確か!って思って,後で確認してみたらやっぱり~ってなりました.
A:最近,「抗VEGF薬が血管新生緑内障に使えるようになる」ってトピックがあって.
T:あ,やっぱきたか~って思ったよね.
A:推してる疾患っぽかった.
J:あと,境界性パーソナリティ障害の問題がありましたね….【115D28】
T:あれ,間違えた….
KIJ:自分も間違えた.
J:だってどう見ても,問題文にあったような行動って,注目を集めたい!(e選択肢)っていう欲求から出るものでしょ?
A:いやいや,自分のことを無力だと思ってる(c選択肢)から,ああいう行動に出るのよ.
T:答え選ぶの,難しいですよね.大学の友達の間でも,すごい解答が割れてた.
A:あの問題,直前期に見ていたYouTubeの動画の関連で,たまたま診断基準とかに目を通してて解けました.ドンピシャで出題されたって感じでした! でも本番はやっぱり迷いました.
T:6割の人がeを選んでるんだね.これって初めての出題?
A:境界性パーソナリティ障害の臨床問題は初めてっぽい.
●個人的には採点除外かな,って思っています.(※採点除外にはなりませんでした…)
T:採点除外になるかどうかって,正答率によるんですか?
●いや,事後会議的なことをやっているのではないでしょうか? 正答率と問題の内容とをみて,試験後に総合的に判断するんじゃないんですかね.
I:必修の場合は?
●必修は通常の採点除外もありますが,必修としては難しすぎたね,ということで「不正解者は採点から除く」という取り扱いになることが昔はありました.最近はあんまり見ないですね.
(必修除外:「問題としては適切であるが,必修問題としては妥当でないため」「正解した受験者については採点対象に含め,不正解の受験者については採点対象から除外する」と厚生労働省より発表される.直近では【112E6】など)
K:偏食が激しくて,夜だけふらつく,みたいな去年のやつも採点除外?【114E29】
●ですね.必修除外ではなく,普通の採点除外でしたね.
T:今年も暗闇でふらつく話があった!【115E42】 去年の採点除外のことがあったから,そのリベンジ的な意味での出題なのかな,って考えてました.
A:ちゃんと解ける問題をね.
J:今年のは9割くらいが正解してたような.
A:それでいいんだよ!(笑)
T:話題になってたのが,全生活史健忘に罹患した際に覚えている項目はどれ,みたいな問題.【115D15】
K:自分の名前とかは忘れてるけど,切符の買い方(d選択肢)や日本で一番高い山の名前(e選択肢)は覚えてる,ってやつだよね.
T:1日目も外れ選択肢で全生活史健忘が出てて【115A24】,「これ,なんだろな~」って思ってたら,次の日にガッツリ出題されてました.
J:1日目に出てたんだ!?
K:自分の名前(a選択肢)と自分の年齢(b選択肢)とが並んでたから,どっちかは正解なのかな?って思っちゃった.
A:わかるわかる.
T:日本で一番高い山を悩んでる人もいたよ(笑) 「これ,なんだっけ!?」って.
I:それはむしろ,噂に聞く国試性昏迷なんじゃないの!?(笑)
●1日目の選択肢が,実はジャブだったんですね.
T:よく言われますよね,「1日目を振り返ると,2日目のためになる」ってやつ.
J:後からは何だって言えるんですよ!
A:1日目に気になったものはその日の夜に調べたりはしましたけど,問題見返してとか,そこまでは手がまわらなかった~.まさか出るとは思いませんでしたね.
●眼科は緑内障の出題が複数ありました.
K:40年前くらいの外傷性緑内障がありましたね.【115C39】
I:緑内障と白内障がかぶる(外傷性白内障に伴う続発性緑内障)ってのは,メディックメディアの模試で出てた! 白内障と緑内障が全然別のものってわけじゃないんだな,って印象が残ってたので,ラッキーでした.
J:画像だけ見て「緑内障でいいかな」って選んだ(笑)
●画像があることで多少安心できる系統の問題でしたかね.
●耳鼻科はどうでした? ここ3年ほどは,毎年「鬼だった!」って聞いていましたが.
K:アデノイドのやつ,プール問題だ!って思いながら間違えました.【115C34】
T:わたしも間違えました.
K:嚥下困難選んじゃった.
I:過去問のやつですよね.
T:3つ選ばせてきたからですよね,今回難しかった理由って.
A:国試で出そうな喉頭内視鏡画像がほぼ全部選択肢に並んだ問題【115A28】も,結局主訴で高い声が出ない,とかで,意外に普通に解ける感じがありました.
●そうすると,耳鼻科の難易度的にはちょっと落ち着きましたかね.
T:比較的やさしさを感じました.
I:114回で出題されてた,聴性脳幹反応〈ABR〉が無反応でもとりあえず補聴器を装用する問題【114A17】なんかは難しかった.ああいうのは絶対に知らないと解けない,どう頑張っても解けない.
J:あれは難問だった.今年はあんな感じのはなかったよね,結構過去問ベースで出てきてた.
T:平和だったと思います.
A:よく見る常連さんの問題が多かった印象だよね.
K:整形外科では外反母趾の出題がありました.【115A49】
A:関節の異常というジャンルだと,ここ何年かは肘内障(治療は徒手整復)の問題が多かったよね.それで今年,外反母趾の問題で「徒手整復する」って選択肢(e)にあったから「それはだめでしょ!」みたいに思わずツッコんだ(笑)
K:整形の先生が,「外来では外反母趾の患者さんがよく来るのに,国試には10年以上出てないから,多分そろそろ出る」って言ってて,「あ,本当に出た!」って思った(笑)
T:一瞬,外反母趾出ちゃうの?!って思って身構えてから,選択肢を見て,あ~,これは解ける(笑)って思いました.(※治療として適切でないもの(e 徒手整復)を選ぶ問題でした)
A:開放骨折の問題で,下肢切断が選択肢に含まれてる問題があって,切断はだめ~っ!て思いながら解いた.友達が「デブリドマンが出てきたらデブリドマンを選べばだいたい正解なんよ」って言ってたのを思い出しました(笑)【115A59】
J:クエスチョン・バンクのVOICEかなんかにあった気がする.過去問でデブリドマンが間違い選択肢として出ることはないってやつ.
A:安心安全デブリドマン.
T:(他の選択肢を)見なくてもこれかな!って選べる(笑)
●デブリドマンが間違い選択肢になることって過去になかったんですかね?
J:デブリ不敗神話だ!
(※調べてみました.【99H10】血気胸の問題で「次に行うべき処置はどれか」の外れ選択肢に「e 右下腿の開放骨折のデブリドマン」がありました(正解は「b 胸腔ドレナージ」).やはり一度はきちんと問題文と選択肢を読むのがお勧めです!)
●そういえば珍しい問題も見ましたね,マムシ咬傷の.【115A35】
T:マムシ!
A:マムシ! ブラックジャックにマムシの回があったの思い出した,ブラックジャックは血清持ってるけど…みたいな回があって.
J:友達に,マムシに噛まれた人いた!
A:さすがに経過観察はないなって思ったよね.
●問題としては易しかったですかね.
T:「自宅での」がついてたから,「e 自宅での経過観察」が外れ選択肢だなって選べました.易しいっていうより,どっちかというと優しさを感じた(笑)
A:減圧症もそういえば,出題としては割と新しい感じ?去年くらいがはじめての出題?【115A14】
●昨年が臨床問題【114D35】,今年が一般問題で出題された,という流れですね.その前の【108A21】は114回のとほぼ同一問題です.
J:ダイビングで~ってやつ.
A:ダイビングが流行ってるから,医師になってからの実臨床でも注意するようにって注意喚起の意味で出題されてるのかな? ダイビングした後すぐに飛行機に乗っちゃだめだよ~って話.
小児産婦
J:そういえば小児で,血便様の便が出てて,結局ブドウジュースたくさん飲んで便が着色しただけ,っていう問題があったね.【115D21】
A:あれ,ひどいよね!(笑) すごいいろいろ考えちゃった!
K:小児産婦といえば,双子の超音波画像5枚のうちから2絨毛膜性のを2枚選ぶやつ! 難しかった.【115F30】
A:bは見た目ですごい簡単に選べたんだけど,dとeが…どっちもうっすら隔壁が見えてるっていう….
J:そういえばあれ,その手前までが択1形式の問題だったのに,ちょうどその問題から択2形式になってて,気づかずに択1の問題と思って1個しか選んでないっていうミスをした人がけっこういたみたい.やっぱ形式の変わり目のチェックは必要だね.
一同:(改めて画像を見ながら)厳しい,bはわかるけど….
J:λサイン(d選択肢)っていうのか.これで判断できるんですね.
A:もうちょっとエコーのプローブ動かしてくれれば!って思っちゃいました(笑)
●今年,双子の出題が多かったですよね.帝王切開か経腟分娩かを選ぶものもありました.【115A62】
J:先進児が骨盤位だとカイザー(帝王切開)でやるって問題でしたね.
●産科の他の問題だと,妊婦のショックインデックス(SI)の問題とか【115A57】.SIを算出することに気が付かなきゃいけなくて,かつ,妊婦の場合のSIと出血量との対応をわかってないと解けないっていう.
J:SI 1.5って,普通の成人なら1,500mLの出血量相当なのに,妊婦の場合は2,500mL相当なんだよね.成人の場合しか覚えてなかったら,2,500mLの選択肢を見た時に「1L分も多いの?!」ってなって,なかなか選べない.その分輸液するって考えたら,さすがに入れすぎやろ,とか余計に思ってしまう.
●SI,出題するのであれば妊婦でなく,普通の成人の症例に留めておいてほしいですよね.
T:これでまた,116回以降の人たちはこういうのも覚えなきゃいけなくなっちゃうんだね….
A:確かに確かに.
A:上の子供がトリソミーで,~っていうのもあった.【115D64】
K:遺伝の….
●遺伝はね,毎年何かしらの形で出てるけど,年ごとにバリエーションが広いので,どういう形で出題されるかは一概には言いづらいですね.
T:だいたいカウンセリング関連かな!って思ってます(笑)
I:某予備校の直前講座で,トリソミーの問題のこと言ってました.
T:でもあんまり当たらなかったね(笑)
●直前講座などは,国試出題予想が当たる当たらないよりも,「みんなが見てる」っていう感覚をつかむことのほうが大事でしょうかね.「この問題はみんなが解けるレベルのものだ」っていう印象で,国試に臨むことができる.
公衆衛生
●公衆衛生はどうでした?
I:全額公費はどれかってやつ!【115C6】.みんな絶対解けないな,って思いました.
A:新型の感染症だったら全額公費負担…?って思った後に,新型コロナのことを考えて,頭の中ごちゃごちゃしちゃった.
I:患者さんからすると,どうでもいい!
J:厚労省はワクチンとの長い歴史があるから…そういう意味で,eだと思った(笑)
K:ワクチン関連の問題で,4種混合が答えになるのがありましたよね.【115C44】
A:(生後)4ヵ月までに打ちましょうってやつですね.
K:出る出るって言われてて,ついに出題されたって感じ.
A:確かに確かに.
●公衆衛生では,(介護が必要となった原因の第4位を聞く問題で)「骨折」が答えになっていた問題がありましたね.【115C9】
J:4位について聞いてくるんだ?!っていう(笑)
T:せめて1位か2位を聞いてほしかった! なんでそこを聞いてくるのっていう.
T:食塩の問題も盛り上がった! あの妙ちきりんなグラフの出題の仕方!【115C14】
●グラフで「10g」の補助線よりひとつ上の補助線の目盛りの数字を消してあって,それを当てるというね(笑)
K:7.5と6.5の差で解ける,って友達が言ってたのですが….
A:えっ,そういう問題なの?!
J:俺もそう思った,10+1で11かなって思ったけど…答えは12なのか.
A:結構11で間違えてる人多かった.
T:罠だね.
A:非医療系の姉に聞いたら「12とかじゃない?」ってスパッと答えられたから,7.5とか6.5とかの知識が逆に邪魔したのかな~って思いました.
K:そんなこと家族で話すんですね?! 羨ましい!
一同:(笑)
J:男性と女性の差を考えて導こうとしたりしてる人もいましたね.
K:正答率が気になる.
A:2~3割だった気がします.(※30%でした.)
T:栄養とか,1問以上は出るだろうな!とは思ってはいても,食塩関連のものがこんな形で出題されるなんて誰も思わない……っていう感じはありますよね.
●過去の摂取量とか,昔のことなんてどうでもいいじゃん!ってなりますよね(笑)
●公衆衛生では,久しぶりにシックハウス症候群の原因を問う出題もありました.【115F59】
T:これ,答えは結局何?
AJ:a(カビ),b(ダニ),e(揮発性有機化合物)らしい.
T:eはすんなり選べたけど,3つも選ぶのが大変でした.
K:カビ?!っていう.
J:自分は,c(紫外線),d(浮遊粒子状物質)は自宅の中では曝露されそうもないな,って考えて,選択肢を絞れましたね.
●公衆衛生全体の難易度としては,例年並みなんですかね?
A:一般問題の公衆衛生はスッキリしない問題が多かったですね.
T:スッキリしなかった~~~~.
A:解けなかった…って思いだけが残りました.
T:公衆衛生,対策をやった割に,だめなんだろうな…って気持ちになりました.
I:プール問題ばっかりじゃないなと感じました.
A:過去問で主要なところを出し尽くしちゃったから,もう細かいとこ出すしかない!といった感じなのかな?
一同:あ~,確かに.
I:公衆衛生は細かい内容を問う問題,いくらでも出せますからね.
J:数字をいじればいくらでもね.す~ぐに「この原因のうち4番目に多いのは何?」とか聞いてくる.1位2位くらいまでしか覚えてないよ!
A:尤度比の問題も盛永先生が出るだろうって予想していました.【115B43,44】
I:B問題の後ろの方は,臨床問題なのに疫学分野の出題が多かったです.しかも3問くらい連問で.嫌なことするな~,って思いました(笑)
A:いつもの疫学の出題なら1点なのに.必修で臨床問題だから3点なのか~って思いました.これも今回のコロナ禍の影響なのか,「PCRとかそのへん,わかってますか?」って意味合いもあったんだと思います.
K:同じような問題が過去に出題されたときは,採点除外になってた.
A:クエスチョン・バンクからも外されてました(笑)
T:疫学が好き!っていう人が,身近にあんまりいなくて.私の友達はみんな「疫学,出ちゃったね…」って雰囲気になりました.ちょっとひやっとしましたね.
●しかも必修で,しかも連問で.
試験当日のこと
●問題についてはこんなところでしょうか.ありがとうございました!
では少し話題を変えていきましょう.当日の心構えとかはどうでしたか? 試験が終わった今だからこそ言えることなどがありましたら.
A:皆さんは1日目に自己採点をしますか?しませんか? 私はしなかったのですが.
TKJ:しなかった.
●採点までせずとも,問題を振り返って復習とかはしますか? それとも1日目の出題は済んだことと割り切って,自分でおさらいしたい箇所を見たりする?
A:1日目の出題のうち,強烈に気になった問題はその日のうちに調べました.
T:私もそうでした.
A:公衆衛生やばい!って思って,わからなかったところを「明日も出る範囲だし~」ってカバーしたかな.持って帰ってきたA~Cの問題用紙を開いたりとかはしてなかったです.
●移動とかはどうでしたでしょうか? 新型コロナのこともありましたし,大変じゃなかった? 公共交通機関を使うにあたって,気をつけたことなどはありますか? 密にならないように,と厚生労働省からは通知がありました.
K:試験会場で体温測定がありました.
T:どきどきした~.
I:自分の会場は割と管理が甘めでした.
T:ザルだったよね!
K:1日目,自分の会場を間違えてて,急遽移動して時間ギリギリで本来の会場に到着したんですよ.そしたら体温測定もなく,はい,どうぞ~でした….
I:結構適当でしたよね.ビルの1階にあるコンビニの出入り口がビル内側と道路側と2箇所あって,そこを通り抜ければ体温測定なしに会場に入れたり.
T:てっきり体温測定も受験票を出して一人ひとりきちんと確認するのかな,と思ってたんだけど,単純に体温を測るだけで,拍子抜けしました.
A:(体温測定のために)ゆっくり歩いてください,の指示くらいしかありませんでした.
I:受験票忘れても大丈夫だったし,大学入試のときのセンター試験より緩かったです.
A:コロナ対策も厳重なのかな?って思ってたけど,換気もそんなに徹底されてなくて.逆にちょっと恐かったです.
K:トイレに行く人も普通にいたし,試験中(受験会場である部屋の)ドアが閉まってた時もあった気がします.近くの人が靴を脱いで試験を受けていて,試験監督が注意をしていたんですけど,その時もすごく密な距離感で注意をしていて(笑) こ,これってソーシャルディスタンスは…?ってなりました.
A:まあ,みんなマスクはしてたしね.
T:あ,マスクが無地かどうかっていう問題で少しごたついた会場があったって話を聞きました.
A:えっ,そんなのあったんだ!
T:なんか会場の試験監督にもよるみたいでした.
●来年もマスクで対策する方針は続きそうですね.
T:新型コロナ対策のメリットとしては,1つの机を一人で使えたから快適でした(笑)
A:隣のひとが消しゴムかける時の「ガタガタッ」がなくて良かったね.
J:「ウッ,隣の人,優秀そうだ…」っていうプレッシャーみたいなのもなくて,快適でした.でもまあ,来年の受験生は普通に受けてほしいなとも思いますね.
来年の受験生へ!
●本番の国試を経験した方でないとわからないような貴重な経験談をたくさんいただきまして,本当にありがとうございました! 最後に,来年の受験生に向けて一言ずつメッセージをお願いいたします.
T:後輩たちは実習もあんまりちゃんとできてないのかな?
K:今回の座談会を通して気づいたのは,こういう場でリラックスして見てみれば簡単に解ける問題が,本番の場だとそうもいかないこともある,ということですよね.「緊張してない!」って自分では思っていても,やっぱりいつもとちがうメンタルステイトに多少なりともなっているはずなんですよね.だから,普段通りではない心の状態で問題を解くことになるんだ!と,そういう心持ちで本番に臨んだ方がいいのかもしれませんね.
J:僕はいつもは緊張しないんですけど,国試本番は本当に緊張して.模試ではなかなか体験できない緊張感にとらわれました.自分がやってきたことを信じることが大切です.正解できているかどうかを気にするよりも,「最後までマークすれば,今日やるべきことはちゃんとできてる!」と,そんな風に考えてました.焦らず頑張って下さい!
A:本番は,普段と違うような心の状態になりますよね.そういう時に「あ,この問題,講座で●●先生が言っていたやつだ!」と,少し本題とは違う思考回路になれると,平常心を取り戻せるかと思います.今まで友達と勉強したことや,色々自分がやってきたこと,見てきたもの,それらが積み重なって,結果としてうまくいくのだと思います.
I:どれだけ前半でサクサク解けたとしても,解けない問題に遭遇すると,色んなことが頭をよぎると思います.緊張していますから,余計.でも緊張感っていうのは,本番に限らず模試を受験する時もあったものだと思うし,いい意味でも悪い意味でも,「模試の時と同じだ」と思って本番の問題に取り組むといいんじゃないかなって,自分は思います.
T:これまでだったら,夏とか直前期とかって,友達と相談したり,一緒に勉強したりができました.でも今年は新型コロナの流行の影響で,そういう機会がなくて.ずっと一人で閉じこもって勉強してたから,孤独が結構辛かったです.来年も同じような状況かもしれないことを想定して,そういう中でも友達とかと悩みを共有できれば,精神の安定にもつながると思うし,そのための手段やツールを確保しておくといいと思います.