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新ワード紹介(1)喘息COPDオーバーラップ〈ACO〉【令和6年版 医師国家試験出題基準】

令和6年版医師国家試験出題基準(118回国試より適用)から,新しくガイドラインに加わったキーワードを紹介していくこの企画.

今回は喘息COPDオーバーラップ〈ACO〉についてご紹介いたします.

目次

出題基準のどこに追加されたの?

医学各論>Ⅳ 呼吸器・胸壁・縦隔疾患>2 気管・気管支・肺の形態・機能異常,外傷>C 気管支・肺の異常 に追加されました.

今回の出題基準で導入されたレベル分類のうち「レベルa」にあたる疾患のため,病態生理の理解はもちろん,初期対応から継続診療に必要な知識まで,幅広く問われる可能性があります.

 

喘息COPDオーバーラップ〈ACO〉とは?

気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,どちらも閉塞性換気障害をきたすcommonな呼吸器疾患です.

気管支喘息がアレルギー疾患である一方,COPDはタバコ煙を中心とした有害物質を長い間吸入することで発症する炎症性疾患であり,それぞれ異なる機序で発症します.

しかし,実際は両疾患の特徴を併せ持つ場合が多くみられ,近年,このような病態が喘息COPDオーバーラップ(Asthma-COPD overlap:ACO)として新しく定義されました.

 

ACOの診断基準では,40歳以上で気管支拡張薬吸入後の1秒率(FEV1%)70%未満の患者が,生活歴や臨床所見,検査所見上で喘息とCOPDの特徴を併せ持つ場合にACOと診断されます.

ACOは気管支喘息やCOPDの中に15〜20%含まれるとされ,気管支喘息やCOPDに比べると症状が不安定で予後が悪いといわれています.

 

ACOの治療は,現在のガイドラインでは吸入ステロイド(ICS)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)・長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3剤を併用することが推奨されています.

ここでポイントとなるのは,通常であればCOPDに対するICSの投与は肺炎のリスクを上昇させるため適応がありませんが,COPD患者に喘息の要素がみられた場合,すなわちACOである場合にはICSを用いるということです.

 

ACOは全く新しい疾患という訳ではなく疾患概念の見直しに伴って付けられた名称ですので,今後呼び方や扱いが変わっていく可能性があります.

しかし,両疾患が合併しているのではないかと考えることは大切です.

 

出題基準に追加された背景は?

同じように診断された疾患でも,どのようなタイプが安定してどのようなタイプが悪化しやすいかを分けて考えることで,治療方針や予後を見直すことができる場合があります.

気管支喘息の患者さんが長い喫煙習慣のために難治化しているとき,そのようなタイプをACOと診断し,適切なアプローチをすることで予後を改善できる可能性があるのです.

そのような考え方を背景として生まれたのがこのACOという概念であり,そんなACOが出題基準に追加されたことは,患者さんの個々の病態に応じた対応ができるようになってほしいというメッセージなのかもしれません.

 

過去問での出題状況は?

118回国試での出題はありませんでした.

誤答選択肢としても登場したことがないため,今後国試で初めて出題された際は,受験生によってはまるっきりの初見で驚いてしまうかもしれませんね.

 

確認問題を解いてみよう!

Q.喘息COPDオーバーラップ〈ACO〉の標準治療として適切なものを選べ.

a 吸入ステロイド単剤
b 長時間作用性β2刺激薬単剤
c 長時間作用性抗コリン薬単剤
d 長時間作用性β2刺激薬・長時間作用性抗コリン薬の2剤併用
e 吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬・長時間作用性抗コリン薬の3剤併用

 

A.答えは記事の最下部にあります!

 


 

いかがでしたでしょうか.次回の連載もお楽しみに!

※執筆:小林岳彦(近畿中央呼吸器センター臨床研究センター治験管理室長)

 

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