新ワード紹介(5)周産期心筋症【令和6年版 医師国家試験出題基準】
令和6年版医師国家試験出題基準(118回国試より適用)から,新しくガイドラインに加わったキーワードを紹介していくこの企画.今回は周産期心筋症についてご紹介いたします.
目次
出題基準のどこに追加されたの?
医学各論>I 先天異常・周産期の異常,成長・発達の異常>1 妊娠の異常 に追加されました.
周産期心筋症とは?
周産期心筋症とは,心筋疾患の既往のなかった女性が妊娠中から産後に心不全を発症するという疾患です.画像検査上では,心拡大と心収縮能力の低下を認めます.診断としては,心筋梗塞や心筋炎などの鑑別疾患を除外し,他に原因がない場合に周産期心筋症となります.
この疾患のポイントは「妊産婦の心不全症状を見たらすぐに検査を行う」ということです.息切れ,浮腫,体重増加などの心不全症状は健常妊産婦も自覚する症状と似ており,診断が遅れがちです.妊産婦に心不全症状が現れた場合には,心電図,胸部X線,心エコーといった検査を行う必要があります.BNPなどの心不全マーカーも診断に有用です.
周産期心筋症のリスク因子には,妊娠高血圧症候群,多産,高齢,多胎,子宮収縮抑制薬,肥満などがあります.なかでも妊娠高血圧症候群は,周産期心筋症の患者のうち37%が合併しているという報告があり,最大の危険因子です.妊娠高血圧症候群の診療指針では、周産期心筋症は妊娠高血圧症候群関連疾患の一つに挙げられています.治療は通常の心不全と同じです.半数以上の患者が1年以内に回復する一方で,心機能低下が改善しなかったり,母体死亡に至ったりする場合もあるため,抑えておきたい疾患です.
出題基準に追加された背景は?
国際的に統一された診断基準はないものの,2019年に国内で『周産期心筋症診療の手引き』が作成されたことで,疾患としての認知度も高まってきたと思われます.さらに臨床的には,本疾患でみられる息切れや浮腫は健常妊婦の自覚する症状と似ており,診断が遅れがちであるという実情があります.母体死亡原因の一つであり,早期に診断することが母児の生命予後にも直結するため,医学生にぜひ知っておいてほしいという意味も込め,今回出題基準に追加されたのではないでしょうか.
過去問での出題状況は?
新出題基準の発表があって最初の国試である118回国試での出題はありませんでした.
ですが,114C49で誤答選択肢として一度登場しております. 解いてみましょう!
確認問題を解いてみよう!
Q.周産期心筋症を疑う場合に行う検査として誤っているものはどれか.
a 心電図
b 胸部X線
c 胸部CT
d 心エコー
e BNP
A.答えは記事の最下部にあります!
いかがでしたでしょうか.次回の連載もお楽しみに!
※監修:小岩 由紀子先生(鎌ヶ谷バースクリニック)
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確認問題の答え:c