[分析]データでみる106回国試(その5)分野編

「データでみる国試」5回目は,
106回国試での分野別の難易度,出題数はどうだったのかを,
105回と比較してお伝えしていきます.

◆分野別問題数◆

まずは,分野別の問題数をみてみましょう.
105回と比較したグラフです.

こうしてみると,やはり公衆衛生の出題がダントツで多いですね.

法律や統計など,あまり勉強にヤル気が起きない,
という人も多いかもしれませんが,
絶対おろそかにはできない分野です.

目立った変化としては,
救急の出題が+18問,医学総論の出題が+11問(105回比)と,
大幅に増加しています.

救急の問題数増加については,
近年の国試において,プライマリケア重視の傾向があり,
なかでも初期対応について問う問題が増加していることが関係していると考えられます.
こちらについては,後述します.

◆分野別正答率◆

次に,分野別の正答率を見てみましょう.


多くの分野で,105回に比べて正答率はほぼ同じ~上昇しており,
全体的に難易度は低めであったといえます.

ただし,出題数が20問以上のの中で,
消化管,神経,小児科,産科の正答率は,80%に達していません.

早いうちから,十分な時間を使ってしっかり勉強しておいたほうが良いでしょう.

◆より実践的なプライマリケア問題の増加◆

救急の出題数増加,プライマリケア重視の出題傾向に関連して,
実は,臨床問題の問われ方にも,変化が起きています.

10年ほど前から,「まず」行う対応(治療や検査)はどれか,
という問題が多く出題されるようになっていますが,

更に106回では,「まず」に加えて,
「現時点」で行うのはどれか?

という問題が多く出題されました.

いったい毎年どれくらい出題されているのかを知るため,
「現時点で」,「まず」,「次に」といった,
ある時点で行う対応を問う問題の数を数えてみました.

次のグラフを見て下さい.

106回国試では,ある時点での対応を問う問題の総数が増加していますが,
「まず」と「次に」はやや減少し,
「現時点」の問題が大幅に増加しています.

「まず」と「現時点」がどう違うのか,
まずは次の例題を見て下さい.

〈例題〉
Q.25歳の男性.交通事故で頭部を強く打ち,10分間ほど意識がなかった.
頭痛が続くため,30分後に友人に伴われて独歩で来院した.意識は清明.
数字の順唱は4桁しかできない.
まず行う検査はなにか.

A.頭部CT検査

というのが今までの「まず」問題です.

次に,106回で出題された「現時点」での対応を問う問題を見てみましょう.

106G39
25歳の男性.交通事故で頭部を強く打ち,10分間ほど意識がなかった.
頭痛が続くため,30分後に友人に伴われて独歩で来院した.意識は清明.
数字の順唱は4桁しかできない.頭部CTにて側頭骨に線状骨折を認め,
少量の硬膜外血腫を認める.
現時点での対応として適切なのはどれか.

a そのまま帰宅させる.
b 直ちに脳波検査を行う.
c 直ちに脳血管造影を行う.
d 2~4時間後に頭部CTを撮影する.
e 翌日,線状骨折に対して手術を行う.

【解説】
正答は『d 2~4時間後に頭部CTを撮影する』で,正答率は48.1%でした.

緊急時,とにかくやるべき初めの一手を聞く問題から進化した,
より色々な状況を想定し,対応を問う,実践的な問題が出題されるようになったと言えます.

臨床実習での成果を重視し,即戦力となる研修医を育てたい
という狙いにより,
今後もこのタイプの問題は増加していくと思われます.
実習や過去問を解く時に,意識してみて下さい.

少し長くなってしまいましたので,今回はこのくらいにして,
次回は,救急とともに問題数が増加した医学総論,
特に診察・手技に関する問題について,ご紹介しようと思います.

お楽しみに☆
(編集部 S)

 

 

 

 

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