コラム

私の診療科の選び方① 糖尿病内科編

 私は昨年まで、卒後4年目の糖尿病内科専攻医でした。現在は出産を控え、お仕事はお休みしています。研修医時代はややハイポな大学病院に勤めていました。普段はアニメ鑑賞、料理などをして過ごしている私ですが、QOLを考えたキャリアや研修ローテーションの選択など、これまでの経験をお伝えさせていただきます!

 


目次

 

1,病院実習:関心のきっかけ


 大学時代の病院実習は、4年生では1週間ごとに全科回り、5年生では1か月ごとに様々な科を回ることができました。実習を進めていくなかで、糖尿病内科、腎臓内科、眼科に興味を持ちました。お絵描きなどチマチマした作業が好きなので、細かな作業が求められる目の手術や、血糖を見ることに惹かれたのが理由です。
 また、自分の健康を維持できて、食事に関しても自炊できるような時間を持てるような、QOLが高く無理のないライフスタイルを大事にしたい性格です。女医さんが多く、体液管理を中心とした全身管理ができて退職後に両立がしやすい腎臓内科は、とても魅力的に思えたこともありました。

 


2,研修医:研修医時代に身に着けたい能力

 

研修医時代にローテーションした科

1年目:救急→呼吸器外科→小児科→産婦人科→糖尿病内科→神経内科→腎臓内科
2年目:麻酔科→糖尿病内科→三次救→地域研修→保健所→内科全般

 

麻酔科 自分のタスクを淡々とこなすことが中心だったので楽しく、回ってみて少し入局を考えたこともありました。
保健所 皆が病院で思い描く医師とは全く違う仕事で、学校教員に対する自殺予防のための勉強会を企画したり、区の感染症の動向を調べたりと興味深かったです。
呼吸器外科 手術では術野に入って胸腔鏡の手伝いをさせていただきました。ずっと立ちっぱなしは辛かったですが、手を動かすことが多く充実していました。
小児科 子供が好きなので、患者さんにたくさん会いに行きました。採血を始め腰椎穿刺など、成人より難易度が高く勉強になりました。
三次救急 24時間重症患者を見つづけないと行けなかったりと体力が一番必要でした。瞬発力がないので一番つらかったです。

 

 ▼当直室の様子

 

研修医時代の生活サイクル

 8:00~ 病棟患者の採血,カルテ確認→回診→病棟の業務→午後の血糖値確認(糖尿病内科の場合)→17:00~ 退勤(検査が長引いたり、緊急入院あったりすると遅くなる)

 土日は当直で出勤することもありましたがそれほど多くなく、無理のない研修医生活を送っていました。ややハイポな研修医生活を送っていましたが、私のように大学病院を研修先にするような場合は、熱心な姿勢を見せないと十分な教育を受けられない場合も多いと思います。

 熱心に取り組む研修医と、見習い・雑用で終わってしまう研修医の比率は、体感で半々くらいです。科によってやる気の違いがある人が多く、その科に対して興味がどのくらいあるかが、研修に取り組む姿勢を分けていると感じます。

 とりわけ多くの科に熱心に取り組める人は、「コミュニケーション能力が高くどこの先生方からもだいたい好かれる→先生も教育しようという気になる→本人も更にやる気が出る」、といったサイクルで研修していることが多かったように感じますね。

 

▼臨床現場でも使った自作メモ


どの科でも学んでおいた方が良いこと

 どの科でも共通して困ったポイントは、輸液・抗菌薬・栄養(何を投与したら良いか、ご飯のカロリー、経管栄養)でした。特に最初の頃は、何を疑うべきなのか、また鑑別疾患が浮かびませんでした。
 後悔があるとすれば、抗菌薬をちゃんと出来るようにしておけば良かったと思います。専攻医になってから必要だからです。また、他の科への相談の仕方・打診するタイミングについても、ローテーションを回っている間に聞いておけばよかったと思っています。

 


3,なぜ糖尿病内科?:判断軸は”興味”と”QOL”

 

糖尿病内科への迷い

 診療科を選ぶ際、糖尿病内科と腎臓内科で迷いました。糖尿病内科は、「血糖しか見られない」「誰でも血糖はいじれる」と思われがちです。輸液や電解質、体液管理ができる腎臓内科のように、全身を見ることができる科に進んだ方が、今後の人生にプラスなのでは?と迷うこともありました。

 

糖尿病内科の魅力

 糖尿病内科では、半分以上は糖尿病患者の診察になります。手技が無く、基本的には血糖値を管理することが業務の中心になります。負担の少なさや安心感を感じていました。生活習慣の是正や、薬剤調整でHbA1cや血糖、自覚症状が徐々に改善していくときに喜びを感じることができます。患者さんの協力がなければ改善は難しい症例が多く、二人三脚で一緒に治療を行っている感覚があります。
 また、慢性疾患が大半のため、患者さんとコミュニケーションを取りながら信頼関係を作りやすいところも糖尿病内科の魅力だと感じますね。
 最終的には、自分の興味将来のQOLを考えて、糖尿病内科を選択することにしました。

 

なぜ糖尿病内科?

 

・生活習慣の是正や、薬剤調整でHbA1cや血糖、自覚症状が徐々に改善していく喜び

・患者さんと二人三脚で一緒に治療に取り組める

・高いQOL

・手技がなく、負担の少なさや安心感がある

・血糖値管理に惹かれた

 

糖尿病内科を目指す人へ

 糖尿病患者は心血管疾患・腎疾患を併存している方が多いので、循環器や腎臓の勉強はしておいたほうが良いと思います。また、甲状腺疾患でも循環器知識は役立つと思います。あとは、患者さんとのコミュニケーション能力も、他の科と同様に求められます。

 1分1秒を争う疾患が少ないため、病態などをじっくり考えて診察したい人や、細かい薬剤調整などが苦ではない人が向いていると思います。あとは、いくら生活指導しても実践してくれない、薬をしっかり飲んでくれない患者さんもいるので、そういうことにイライラしないで向き合っていける人が良いと思います。
 QOL面ですが、病棟の人数にもよりますが、17〜19時頃には退勤でき、外来や病棟の忙しさもちょうど良いと感じます。

 


4、私のキャリア選択と将来のビジョン

 

 最後に、キャリア選択についての私の考えをお伝えさせていただきますと、やはり第一には興味だと思います。

 QOLといっても、どの科でも大変なことや辛いことはあると思うので、興味がないとずっとやっていくのは難しいと思います。そのうえで、将来10年20年後の理想の未来を想像して、そこに近づけるようなキャリアを考えることが良いと思います。

 私が研修医時代や以前入局していたところでは、大学病院に残り続けるか、退職して実家のクリニックを継ぐ人が多かったです。糖尿病外来を新たに開業する先生もいました。ちなみに、キャリアの早い時期にゆとりのある仕事で自分の時間を確保したい人には、皮膚科がよく選ばれているのではないでしょうか。

 

▼今も使っているテキスト


 将来のビジョンは、ある程度育児が落ち着いたら専門医取得のために病棟に復帰し、専門医取得後は糖尿病・内分泌外来で診察することが理想です。産業医の資格もあるため産業医としての業務も、キャリアのどこかで経験したいと考えています。

 

編集コメント

「私の診療科の選び方」シリーズは、今後も不定期に更新していきます!

研修医の皆さん、ぜひご自身のキャリア選択の参考にしてみてくださいね!

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