[5・6年生向け]ガイドラインからみる107回国試
第1回:ズバリ出題された『新ワード』はこれ!(その1)
こんにちは!編集Aです.
ゴールデンウィーク明けは,新入社員が五月病になったり大学生が授業をサボり始めたりして
朝の電車がじゃっかん空くと言われていますが(主に後者かと…)
皆さんのまわりはどうですか…?
医学生は授業や実習,国試対策でこれからますます忙しくなると思いますが,
五月病には気をつけてくださいね.
さて,2月に実施された107回国家試験は,
平成25年医師国家試験出題基準(ガイドライン)導入下で行われた
初めての国家試験でした.
そのため,出題傾向や内容が変化するかどうか,注目されていたんです.
そこで,今日から全6回,
新ガイドラインが107回国試にどう反映されたのか
お伝えしていきます.
第1回目の今日は,
ガイドラインに新しく加わった用語の中から
実際に107回国試に出題されたものをピックアップしてご紹介します!
◆早速この疾患が登場!!◆
メディックメディアでは,昨年5月に新ガイドラインを分析し,
改訂の傾向や,新しく加わった用語・概念について紹介しました.
当時の予想も振り返りながら,実際の国試を見ていきましょう.
1.視神経脊髄炎
昨年のメルマガを読んでくださった方は,
ガイドライン分析の結果で紹介した“注目すべき2疾患”を
覚えているでしょうか?
『視神経脊髄炎(NMO)』と『IgG4関連疾患』でしたね.
*その記事はこちら↓*
「医師国試 新ガイドライン発表!(その3)」
このうち,107回でいきなり視神経脊髄炎が出題されました…!!
しかも, 2問!!
107I32
四肢の脱力と感覚障害とを訴える患者の頚椎MRIのT2強調矢状断像を下に示す.
(画像をクリックすると拡大します)
考えられるのはどれか.2つ選べ.
a 髄膜腫
b 神経膠腫
c 視神経脊髄炎
d 脊柱管狭窄症
e 椎間板ヘルニア
正解:b,c(正答率60.3%)
107I39
自己免疫性神経疾患とその治療薬の組合せで正しいのはどれか.2つ選べ.
a 多発性硬化症・・・・・・抗TNFα抗体
b 視神経脊髄炎・・・・・・副腎皮質ステロイド
c 重症筋無力症・・・・・・抗コリン薬
d Guillain-Barre症候群・・・・・・シクロホスファミド
e 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎・・・・・・免疫グロブリン
正解:b,e(正答率73.9%)
【解説】
107I32では,脊髄腫大から疑うべき疾患が問われました.
T2強調で高信号を示す,広範囲(約4椎体分)の脊髄腫大を認めることから,
脊髄炎や浸潤性の髄内腫瘍を考えます.
脊髄腫大というキーワードだけでも正解することはできますが,
NMOでは3椎体以上の長い髄内病変が特徴的であることも覚えておきましょう.
ちなみに脊髄腫瘍についてですが,
発生部位によって画像所見が異なることが重要です(硬膜外,硬膜内髄外,髄内).
本問では脊髄そのものが腫大しているので,
髄内腫瘍をきたす神経膠腫が正解になります.
正答率は低めでしたが,いずれも基本的な画像所見のため
『イヤーノート』や『病気がみえるvol.7』を見ていた方は
正解できたのではないでしょうか.
『イヤーノート』では,NMOのMRI所見は重要事項として
昨年版では太字になっています.
最新版ではさらに目立つように青字になっていますので
チェックしておいてくださいね.
*最新の『イヤーノート』はこんな感じです.
ポイントをぎゅっと圧縮しています.
(『イヤーノート2014』J-120ページ )
(画像をクリックすると拡大します)
2問目の107I39では,自己免疫性疾患の治療が問われ,
その中で視神経脊髄炎とステロイドの組合せが正答として登場しました.
この選択肢を選べた受験生は94.5%でしたが,
aやdを選んだ人がそれぞれ10%を越え,結果的に完答率は73.9%でした.
多発性硬化症(MS)の再発予防に用いられるのは
抗TNFα抗体ではなくIFN-βですね.
ちなみにNMOの再発予防にはIFN-βは無効とされ,
逆にMSに無効なステロイドや免疫抑制薬が有効となることがあり,
MSとNMOの鑑別は臨床上重要となっています.
臨床でも注目されているNMO.
今後も詳しく問われる可能性がありますので,ぜひ確認しておいてくださいね!
2.副鼻腔真菌症
副鼻腔真菌症についても,
このWEB INFORMAとメルマガで紹介したのですが,
覚えていただいているでしょうか…?
「医師国試 新ガイドライン発表!(その15)」
この副鼻腔真菌症が,107回で
診断を問う問題として出題されました.
その問題がこちら.
107A22
40歳の男性.3週前からの右側の鼻閉と頬部違和感とを主訴に来院した.副鼻腔X線写真と副鼻腔単純CTとで右上顎洞に異常陰影を認めたため,内視鏡下に中鼻道から上顎洞組織の生検を行った.副鼻腔単純CT冠状断像と横断像,生検組織のGrocott染色標本を別に示す.
(画像をクリックすると拡大します)
最も考えられるのはどれか.
a 上顎洞癌
b 歯性上顎洞炎
c 慢性副鼻腔炎
d 副鼻腔真菌症
e 術後性上顎嚢胞
正解:d(正答率99.4%)
【解説】
CT画像所見と病理所見から,副鼻腔真菌症と診断させる問題でした.
CTで右上顎洞内の軟部組織濃度と石灰化陰影,
上顎洞壁の骨肥厚を認めることに加え,
Grocott染色で検出されるアスペルギルスが決定打となります.
本問は深く考えなくても,単に『真菌』というキーワードから
正答できたのではないでしょうか.
実は副鼻腔真菌症は
前々回の国試(106回)で間違い選択肢として出題されていました(106A48).
国試では,過去に間違い選択肢としてさりげなく登場していた疾患が
その後の国試で徐々に重要度を増して,
数年後にはその疾患の詳しい知識が問われるケースが少なくありません.
こうしたパターンに注目し,QBを解いているときに
『正解にならなかった疾患名で,知らないものがあったときは
イヤーノートを読んでみる』という勉強法をしておくと
いいことがあるかもしれません…!
ここまで,視神経脊髄炎と副鼻腔真菌症に関する出題について紹介しました.
107回国試に出題された新ワード,まだあります.
長いので,また次回!
(編集部A)