[5・6年生]医療ニュースから予想する国試第3回:結核

みなさん,こんにちは.
編集部のA.Mです.
東京は梅雨らしい天気が続くなか,アジサイが綺麗に咲いていますね.
病院実習や国試対策で忙しいとは思いますが,
帰り道などに眺めてみるのはいかがでしょうか.

さて,「医療ニュースから予想する国試」の第3回をお届けしたいと思います.

前回までの記事はこちら
第1回:http://web-informa.com/kokushi/20130607-2/
第2回:http://web-informa.com/kokushi/20130618-3/

今回のテーマは,国試の超頻出疾患,“結核”です.
近年の国試で問われなかった回はない,といっても過言ではなく,
しかも一回の国試に数問は出題されるこの疾患.
必修問題でも度々登場していますね.

それではまず,厚生労働省の平成23年結核登録者情報調査年報集計結果から
近年の結核の動向をみてみましょう.

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou03/11.html

集計結果を簡単にまとめると,以下のようになります.

1, 結核による死亡者数は減少しているものの,近年は横ばいである.
2, 新登録結核患者数・罹患率ともに減少傾向ではあるものの,減少の鈍化が起こっている.
3, 罹患率が減少してはいるものの,諸外国と比べると,日本はまだまだ結核が多い
4, 新規登録者の割合は70歳以上が半数以上を占めており,高齢者に多い

これらのことからもわかるように,過去の病気と思われがちな結核ですが,
現代の日本でもまだまだ大きな問題であり,高齢化の進む日本においては,
いつ・誰が・どこでかかってもおかしくはない疾患なんです.
ゆえに今後も国試での出題が続くでしょう.

医療者には感染の拡大を防ぐ義務があるため,今までも重要視されてきた,
感染予防多剤耐性菌服薬指導についてはもちろんのこと,
新しい検査方法についても,確実な知識を身につけておく必要があります.

例えば2013年2月に行われた最新国試,107回の必修問題をみてみましょう.

【107C11】
結核の検査について適切なのはどれか.
a 痰が出ないときは胃液を採取し検体とする.
b 末梢血で白血球増多が著名な場合は結核の可能性が低い.
c ツベルクリン反応が陽性であれば直ちに治療を開始する.
d 隔離の必要性を決めるため気管支ファイバースコープで痰を採取する.
e 結核菌特異的全血インターフェロンγ遊離測定法〈IGRA〉が陽性であれば直ちに治療を開始する.

この問題の正解はaの「胃液を検体とする」ですね.
喀痰から結核菌が検出されない場合,あるいは喀痰が採取できない場合は,
代用検査として胃液を用いることがあります.
結核菌を知らぬ間に飲み込んでいると,胃液から検出されることがあるんですね.

ここで,選択肢eインターフェロンγ遊離測定法に注目!
クオンティフェロンという名称で聞いたことのある方も多いのではないでしょうか.

この問題,正答率が46.5%であり,必修としてはかなり難しい問題…
誤選択肢の中ではeを選んだ人が32.2%と最も多かったのです.
名称は知っていたけど“検査の内容があいまいだった”
という人も少なくはなかったのではないでしょうか.

すでにご存じの方もおられるでしょうが,ここでインターフェロンγ遊離測定法について
特徴を並べてみましょう.

1,従来の検査法だったツベルクリン反応検査に対して,BCGやMAC感染の影響を受けずに結核菌の有無を調べられる
2,結核に対し感度の高い検査法のため,潜在性結核感染症の診断目的に使用される
特異度は高くないので確定診断には用いない).
※潜在性結核感染症とは,結核に感染しているが、症状の出ていない人,
周りに感染させる可能性は極めて低い人のことをいいます.
3,過去に結核の既往がある場合も陽性になる.
4,陽性になるのは,感染者と接触してから2~3ヶ月後のため,この時期に行われることが望ましい.

この検査のポイントは,陽性だからといって確定診断になるわけではないので,
治療をすぐに開始する目安にはならないということです.
結核の確定診断は,喀痰等から菌を検出することです.
排菌量が多く,感染拡大の可能性があれば適切な治療を行わなければなりませんね.

次にインターフェロンγ遊離測定法を使う具体的なタイミングも知っておきましょう.
結核患者との濃厚接触者診断の判断材料になります.)
症状から結核が疑われるものの,排菌のない患者補助診断を目的として使用します.)

ではここで改めて107回の問題文を読んでみましょう.
インターフェロンγ遊離測定法が確定診断ではなく,陽性になったとしても
「直ちに治療を開始する」わけではないので,eは誤りであることがわかりますね.

結核の拡大を防ぐために必要な検査であることや,正答率が低いことを考えると,
次回以降の国試で再び問われる可能性が高いですね.
要チェックポイントです!

ちなみに,最近報道された「都内の精神科病院で3年の間に10人が結核発症した」というニュース,
記憶に新しい方も多いのではないでしょうか.
このときに使用された検査法が,本メルマガでもご紹介した
インターフェロンγ遊離測定法だったそうです.

では最後に,次回国試に向けてのチェックポイント!

高齢者の新規登録者が増えているということで,
もう一つ押さえておきたいのが,既感染者の再燃です.

再燃しやすい人といえばもちろん,免疫力の低下した人
高齢者糖尿病患者人工透析中の患者ステロイドや抗癌剤を使用中の患者
HIV感染者などが挙げられます.
また珪肺アルコール大量飲酒者もリスクが高いので忘れてはいけません.

結核予防のためにも“どんな人が結核にかかりやすいのか”
知っておくことは重要ですね.

特にステロイドや抗癌剤治療を始める前に,潜在性結核感染症ではないかを
調べるためにもインターフェロンγ遊離測定法が使われることも
覚えておきたいポイントです.

今後,このような内容を問う問題が出てくるかもしれません.

それでは結核についてはこれまで.
次回のテーマは“ダニと感染症”を予定しております.
お時間のあるときに読んでいただけたらと思います.

(編集部A.M)

 関連コンテンツ

 関連する記事

新着記事カテゴリー


 すべて

 国試

 CBT・OSCE

 動画・アプリ

 マッチング

 実習

 コラム

 その他