[Dr.Mの研修医日記]第2回:初めての患者Kさん

こんにちは。研修医Mです。
研修医として働き始めたばかりの頃は、右も左も分からず、
失敗をしては指導医やナースに怒られてばかりの日々で、
心が折れそうになるときもありました。

そのような中、今でも記憶に残る、
初めて担当した患者Kさんとのエピソードを紹介します。

Kさんは急性骨髄性白血病で、抗がん剤による化学療法を行っていましたが、
予後は極めて厳しく、さらに副作用で重篤な汎血球減少をきたしていました。

白血球は検出限界以下でほぼゼロ、Hbも7未満、血小板も1万未満で
輸血に依存している状態でした。

通常、抗がん剤投与終了後、血球は時間の経過と共に回復していくのですが、
Kさんの場合は血球減少が遷延している状態でした。

ただでさえ予後が悪い上、気難しい性格のKさんは対応が難しく、
正直苦手な患者でした。

ある日のこと、
Kさんの血球は相変わらず低値で推移していたため、
採血結果を伝える際に、ついうっかり
「前回から変わりはないです」と言ってしまいました。

Kさんは一言ぽつりと
「変わらないってのは、俺にとっては絶望的なことなんだよ。」

やってしまった!
頭が真っ白になりました。
もっとKさんの心情に配慮した言い方があったのではないだろうか?
ひたすら頭を下げて謝る私に対して、Kさんは言いました。

「なあM先生。誰だって最初から完璧にできる人間なんていないんだ。
そんなの当たり前じゃないか。
失敗したっていい。ついそういう言葉が出てしまったけど、
気にしないでいいんだよ。
あなたが精一杯頑張っていることは見ていたら分かる。
あなたに対して文句を言う奴がいたら、俺がふざけるなって言ってやるよ。」

失敗続きで心が折れそうになっていた時期だったこともあり、
Kさんの言葉に私は目頭が熱くなって涙を堪えるので精一杯でした。

それからというもの、Kさんは相変わらずぶっきらぼうながらも、
何かと私のことを気にかけてくれるようになりました。
幸い感染症にもかからず、無事に汎血球減少から回復して
ひとまず退院できることになったある日、見送りの際に

「親身になって診てくれてありがとう。M先生はきっといい医者になれるよ。」

と言ってもらえたのが本当に嬉しかったです。

患者さんを救おうと思って働いている一方で、
逆に患者さんに励まされることは多いです。
そのような患者さんとの関わり合いも、
医師という仕事のやりがいの一つなのではないでしょうか。

(研修医M)

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