〔分析〕データでみる108回国試(その5)難問・割れ問の勉強の仕方は?

こんにちは,編集部A.Mです.
データでみる国試,第5回は「正答率からみる難問・割れ問」をテーマにお話します.

まずは正答率の分布をみてみましょう.
こちらは一般・臨床問題の分布です.(採点除外,複数正解を除きます.)
正答率分布(一般臨床)
医師国試では,多くの人が解けた問題を確実に解くことが重要です.
一般・臨床問題については,70%以上の正答率の問題は落とさないでおきたいところですね.

次に必修の分布をみてみましょう.
正答率分布(必修)
必修問題では,90%以上の問題は誰でも反射的に解けるレベル,
70%未満は,「これ必修なの?」とざわつくレベルです.
合格基準が80%以上の絶対基準である必修では,
正答率80%以上の問題は確実に正当しなくてはいけない問題と考えられますね.

■みんなが悩んだ難問は?
それでは正答率が低かった問題をみてみましょう.

【108I2】
むずむず脚症候群について正しいのはどれか.
a レム〈REM〉睡眠と関係が深い.
b ドパミン遮断薬が有効である.
c 加齢とともに患者数は減少する.
d 脚の異常感覚は運動によって改善しない.
e 足関節などの不随意運動が入眠後にみられる.

近年話題に登ることが多い「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」.
正解はeとなりますが,本疾患がメインテーマで出題されたのは初めてということもあり,
正答率は10.8%と非常に低かったです.

初出の疾患,教科書にはあまり記載されていない最新の情報を聞かれると,
受験生にとって苦しいものになりますね.

次の問題をみてみましょう.

【108H18】
大量の鼻出血のため搬入された成人患者にまず行うのはどれか.
a 電気凝固
b 鼻根部圧迫
c 顎動脈塞栓術
d 外頸動脈結紮
e アドレナリン含浸ガーゼ挿入

過去問を解いたことのある方なら,なんとなく見覚えのある問題ではないでしょうか.
【106F30】でも鼻出血の対処法を問う問題が出題され,
来院前に患者さん自身が行う処置として,“鼻根部圧迫を指示”が正解となりました.

【108H18】の場合はどうでしょうか.
すでに来院しており,しかも大量の鼻出血!
となると,鼻根部圧迫だけで出血を止めることは難しそうですよね.
正解はeのアドレナリン含浸ガーゼ挿入でした.
正答率は17.0%と低く,必修問題であることを考えると難問だったといえます.

必修は過去問の知識だけでなく,さらに状況に応じた対応を考える必要性のある問題が多いです.
問題を深読みしすぎるのも危ないですが,簡単な問題ばかりと侮るのも危険ですね.
必修問題への対策として,ひたすら必修問題のみを解く期間を作り,
必修問題に慣れておくことをオススメします.

さて次に,必修除外となった次の問題を考えてみましょう.

【108F23】
33歳の1回経妊1回経産婦.妊娠28週.本日朝からの軽度の下腹部痛と少量の性器出血とを主訴に来院した.妊娠27週の妊婦健康診査までは特に異常を指摘されていなかった.腟鏡診で淡血性の帯下を少量認める.内診で子宮口は閉鎖している.胎児心拍数陣痛図で10分周期の子宮収縮を認める.経腟超音波検査で頸管長15mm,内子宮口の楔状の開大を認める.腹部超音波検査で胎児推定体重は1,200g,羊水量は正常,胎盤は子宮底部にあり異常所見を認めない.BPS〈biophysical profile score〉は10点である.
治療薬として適切なのはどれか.
a 硝酸薬
b α刺激薬
c β2刺激薬
d 抗コリン薬
e 副腎皮質ステロイド

切迫早産への治療を問う問題で,正答率が20.3%と低かったのですが,
みなさん正解がわかりますか?

切迫早産なら子宮収縮を抑制したい→塩酸リトドリンだ!とは思うけど,
選択肢をみても塩酸リトドリンがない・・・
しかもbとcの刺激薬はなんか禁忌っぽいな・・・
ステロイドなら,早産が予想されるときに胎児の肺成熟を促進する目的で投与するし,
これが一番無難だ!

そんなふうに考えた人が多かったのか,ステロイドを選んだ人が49.1%と最多でした.
確かに胎児の肺成熟を促進するためにステロイドの投与は行いますが,
この症例では子宮収縮を抑制するのが先決です.

では,5つの薬剤の中で子宮抑制の機序をもつものは・・・?

正解は,cのβ2刺激薬となります.
代表的な切迫早産治療薬である塩酸リトドリンはβ2刺激薬であり,
子宮平滑筋を弛緩させることで子宮収縮を抑制するんです.

まさかこんな問題が必修で出てくるとは!と驚いた受験生も多かったと思います.
薬の名称を覚えるだけでなく,機序をわかって処方できるのか
そこを問われた問題でしたね.

今回この必修の臨床問題(3点分)が必修除外として扱われたこともあり,
必修落ちを免れた人が多かったようです.

■解答が綺麗にわかれた割れ問
では次に,受験生の解答が割れた,割れ問をみていきましょう.

【108A8】
5歳女児の左鼓膜の写真を次に示す.
108A8
治療として適切なのはどれか.
a 抗菌薬投与
b 鼓膜切開術
c 鼓膜チューブ留置術
d 鼓膜形成術
e 鼓室形成術

こちら先天性真珠腫の診断とその対応が問われた,画像一発問題ですね.
答えはeの鼓室形成術でした.
それぞれの解答率は,
a 25.1%,b 20.2%,c 26.8%,d 1.9%,e 26.1%
と,d以外は綺麗に解答がわかれた問題でした.

この画像,実は【106I24】で不正解選択肢として全く同じものが出ていました.
(反転されてはいますが.)
過去問の正解選択肢はもちろんのこと,不正解選択肢までチェックを怠らないでくださいね!

【108C12 】
頭部にみられる病的所見はどれか.
a asterixis
b clubbing
c gynecomastia
d nystagmus
e scoliosis

英語の問題は苦手意識が強い方も多いのでは?
私も受験生だったときは英語問題対策に悩まされました.

正解はdのnystagmusで眼振です.
解答率は以下の通り.
a 17.3%,b 15.9%,c 24.7%,d28.6%,e 13.5%
これも綺麗に解答がわかれており,英語の意味がわからずお手上げだったようです.

苦手意識克服のために,『QB必修』の英語予想問題を解いたり,
レビューブック必修・禁忌』の「DOCtan」を活用してみてくださいね.

それでは最後の問題です.
【108D13】
約3年前から転びやすくなった68歳の男性で,筋強剛と立ち直り反射障害があるが振戦はなく頭部MRIでは異常を認めない.
最も考えられるのはどれか.
a Parkinson病
b 多系統萎縮症
c 正常圧水頭症
d 進行性核上性麻痺
e 大脳皮質基底核変性症

この少ない情報で疾患を絞り込めるか!と突っ込みたくなる問題ですね.
転びやすい,筋硬直,立ち直り反射障害などからParkinson病やParkinson症候群を考えます.
振戦がない,頭部MRIで異常をみないなどの条件から考えると,
厚労省からは正答が発表されていませんが,
この中ではdの進行性核上性麻痺の可能性が高いのではないでしょうか.

問題としては適切ですが,受験者レベルでは難しすぎるという理由のため,
こちらの問題は採点対象から外されました.
解答率はa 10.0%,b 16.1%,c 2.4%,d 49.1%,e 22.6%となっていました.
難しい問題はみんなわからない!と割りきって,次の問題に進むという気持ちも大事ですね.

ただ,これは受験時の話です.
受験生には難問であったり,割れ問となった問題は,
翌年以降でリベンジ問題として扱われる場合もあります.
109回以降の国試を受けるみなさんにとっては,解けなくてはならない問題になる可能性もあるんです.
この話は次回のメルマガで詳しく解説したいと思います.

今回はこのへんで.
次回をお楽しみに!

(編集部A.M)

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