[5年生向け]国試からみる,臨床実習のポイント!(その7)患者さんと会話ができますか?
こんにちは,編集部のA.Mです.
臨床実習のポイントシリーズ7回目,
最終回の今日は「会話形式の問題」をテーマにお届けします.
会話形式の問題では,患者さんへのアドバイスや病態の説明,治療法,
あるいは患者さんからの訴えがセリフ形式の選択肢で出題されます.
私は107回国試を受験したのですが,そのとき感じたのは,
「今までの国試よりも,会話形式の問題が増えている気がする・・・」ということでした.
108回ではさらに増えた印象を受けたので,その問題数を数えてみたところ,
105,106回では10問程度でしたが,107回では22問,108回では29問となっていました.
少しずつですが増えていますね.
選択肢が会話形式となっていても,基本的には問われている内容がきちんと理解できていれば解答できますが,
実習中に意識していただきたいなーというポイントがあったので,お話ししたいと思います.
■患者さんにわかりやすい言葉で伝えられていますか?■
まずは問題をみてみましょう.
【108C21】
76歳の女性.一過性の右不全片麻痺と構音障害を主訴に来院した.15年前から高血圧症で通院中である.2年前の心電図検査では異常がなかった.数日前から動悸を自覚していたが,症状が軽かったため様子をみていた.今朝,朝食中に右上下肢の脱力感と構音障害とが出現した.症状は30分程度で消失したが,心配した家族に付き添われて受診した.来院時,意識は清明.脈拍92/分,不整.血圧124/74mmHg.眼瞼結膜に貧血を認めない.頸部血管雑音を認めない.過剰心音と心雑音とを認めない.呼吸音に異常を認めない.神経学的診察で異常を認めない.頭部CTでは明らかな異常を認めない.来院時に記録した12誘導心電図を次に示す.
この患者に対する説明として適切なのはどれか.
a 「高血圧の薬を変更します」
b 「今日の心電図は2年前と変わりはないようです」
c 「いつもの薬をしっかり内服していれば大丈夫です」
d 「高齢者ではよくあることですので様子をみてください」
e 「血液を固まりにくくする薬で治療する必要があります」
心電図から心房細動の所見を読み取り,その合併症である心原性塞栓症の予防のための対応を問われた問題です.
正解は「e “血液を固まりにくくする薬で治療する必要があります”」で,
正答率は98.9%と易問でした.
ここで注目していただきたいのは,「血液を固まりにくくする薬」という説明.
ワルファリンや,第Ⅹa因子阻害薬のことですね.
ワルファリンは比較的に有名な薬剤のため,知っている患者さんが多いかもしれませんが,
たぶん大丈夫だろうと思って専門的な言葉を使ってしまうと,
実は患者さんと全く意思の疎通がとれていなかった,なんてことが起こるかもしれません.
「ワルファリン」を「血液を固まりにくくする薬」と言い換えることができる,
つまり,患者さんにとってわかりやすい言葉で説明ができる,という力は,
実習や研修,その先でもずっと必要になってきます.
医学部に入学したばかりのときは自分もわからない言葉だらけだったのに,
勉強をしていくうちにその感覚を忘れてしまう人,案外多いと思います.
実習中にはそういったことを意識して患者さんとお話ししたり,
先生方が患者さんにどんな言葉で説明しているのか注目してみてください.
では,次の問題をみてみましょう.
【108F14】
家族から聴取した患者の言動のうち,一次妄想と考えられるのはどれか.
a 「夜眠れるかいつも心配しています」
b 「『自分の考えていることが抜き取られる』と言ってます」
c 「『いつもとは何か違って不気味な感じがする』と言ってます」
d 「『気が重くて,自分はつまらない人間だ』と嘆いてばかりです」
e 「難しい哲学的な言葉が多くて,何を言いたいのかわかりません」
こちらの問題は,患者さんやその家族の訴えを医学用語に変換できるか,という問題です.
一次妄想は,「c “『いつもとは何か違って不気味な感じがする』と言ってます”」でした.
実習などで話すのは患者さんとだけではありません.
患者さんから聞いた話をカンファなどで他の先生方に説明する必要があります.
「患者さんが○○と言っていました.」で,終わらせるのではなく,
「○○と言っていたので□□だと思います.」と,自分なりの結論まで付け足すことができるといいですね.
最後におまけ問題です.
【108I48】
2ヵ月の男児.右下腹部の膨らみを主訴に母親に連れられて来院した.全身状態は良好であり,機嫌もよい.膨らみを触れても痛がる様子はない.強く押すと消失するが離すとまた膨らむ.下腹部の写真を次に示す.
母親への説明として適切なのはどれか.
a 「緊急手術が必要です」
b 「膨れた時には浣腸してください」
c 「いつもより哺乳量を減らしてください」
d 「時々押して平らになることを確認してください」
e 「できるだけ泣かさないように注意してください」
答えは「d “時々押して平らになることを確認してください”」でした.
正答率が52.5%と低く,「e “できるだけ泣かさないように注意してください”」を選んだ方が,
22.6%いらっしゃいました.
「2ヶ月の赤ちゃんを泣かせないようにするのなんて不可能に近いんじゃ・・・」
と,考えることができれば正解にたどりつきやすくなるかもしれません.
実際の現場でも,お母さんの気持ちを考えた発言をしてみましょう.
今回で「国試からみる,臨床実習のポイント!」は終わりになります.
お付き合いいただきありがとうございました!
5年生のみなさんは臨床実習をぜひ大事にしてくださいね!
(編集部A.M)