[Dr.Tの研修医日記]第3回:肺エコー検査(後編)
~気胸の新たな確定診断~

こんにちは,Dr.Tです.
前回ご紹介した「肺エコー」について,その概要を学んでいきましょう!
(前回の記事はこちら

これは前述の通り,私が病院見学の際に学んだ内容ですが,
最近では色々な論文でも取り扱われています.
耳学問は記憶に残りやすいので,大学での実習はそうやって活かせていったらいいですね.

 

◆まず,肺エコーの正常所見について◆

肺はその外側を臓側胸膜,さらに外側を壁側胸膜で囲まれています.
肺は空気でできているので,エコーでは正確に捉えることはできません
(エコーは空気に弱いからゼリー塗るんですね!).

ですが,胸膜はエコーでも見ることができるんです!
正常な肺にエコーを当てると,主に胸膜の2つの動きを捉えることができます.

1)lung sliding肺の動きにあわせて胸膜が滑るように移動する所見
(胸膜の真下に肺があるから胸膜も一緒に動いて,その動きを捉えている)

2)lung pluse心臓の動きに伴い肺が拍動し,それが胸膜に現れる所見

 

◆では,気胸になるとどうなりますか?◆

気胸では,胸膜の真下に空気が入るので,肺の動きがうまく胸膜に伝わらなくなります
結果,上の1)や2)のような所見は観察されなくなります

そして重要なのが,lung pointという所見です.
壁側胸膜と臓側胸膜がくっついている部分(胸膜が1),2)のように動いている部分)と
くっついていない部分(1),2)の動きがなく,胸膜が止まって見える部分)の境目に
気胸の断端が存在することになります.
これが気胸の確定診断となるのです.

現在では感度・特異度ともに非常に高い検査方法として,注目を浴びています.

 

 

最後にちらっと,医師国家試験110回B50~52の問題を見てみましょう.
http://qb-online.com/#/list/110B50-52

この問題はshockの鑑別をさせる問題であり,テーマとしては
「開放性気胸+心タンポナーデ(疑い)」となります.

注目したいのはB51の問題です.
今回書いたように,エコー検査では心タンポナーデはもちろんのこと,
気胸の確定診断も得られます.

外傷初期治療のprimary surveyに則り,エコー検査は非常に重要です.
肺エコーはまだまだ新しい概念ですが,救急領域ではホットな話題として時々目にします.
出題者の意図した問題背景を考えるのは面白いですよね.

 

大学での実習ではこのような最先端の医療を見る機会も多いかと思います.
教科書では得られない知識を得るチャンスです.
実習は面倒なことも多いかもしれませんが,そこでしか得られないものを見つけてみてください!
そしてぜひ私にも共有して頂けたら嬉しいです(笑).
それではまた後日!

(研修医T)

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