国試

[6年生向け]公衆衛生で近年頻出なのは?
その2:注目の出題テーマ「NCDs(非感染性疾患)」

こんにちは,公衆衛生担当の編集部Fです.
公衆衛生対策特集,前回記事の配信から期間が空いてしまいましたが,今回は注目の出題テーマとしてNCDs(非感染性疾患)を紹介したいと思います.国試対策がラストスパートに入る仕上げの時期,息抜きに読んでみてください.

●NCDs(非感染性疾患)とは?

NCDs(Non-communicable diseases)とはWHOが定義した疾患群であり,循環器疾患・がん・慢性呼吸器疾患・糖尿病などの非感染性疾患の総称です.四大リスクファクターとして喫煙・不健康な食生活・運動不足・過度の飲酒が挙げられており,生活習慣病(Lifestyle disease)と非常に近い概念といえますが,国際的にはNCDsの方がよく用いられます.

日本では健康日本21(第二次)の基本方針においてNCDsが登場しています.健康日本21(第二次)の基本方針も113B23,111E4,110G26とたいへんよく出題されるので,過去問を見ながら一緒に覚えておきましょう!

■ 健康日本21(第二次)の基本方針

①健康寿命の延伸と健康格差の縮小
②生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCDの予防
③社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
④健康を支え,守るための社会環境の整備
⑤栄養・食生活,身体活動・運動,休養,飲酒,喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

※健康日本21(第二次)では,複数形のsを抜いたNCDの表記が用いられています.

111E4

健康日本21(第二次)の基本方針に含まれないのはどれか.
a 健康寿命の延伸 0.9%
b 非感染性疾患の予防 50.4%
c メンタルヘルス対策の充実 9.1%
d メタボリックシンドロームの認知 28.7%
e 栄養・食生活に関する社会環境の改善 11.1%

正解:d(選択肢右の%はメディックメディアの解答速報サービスによる受験生の選択率,以下同様)

解説:健康日本21(第二次)において,上記②の中に「メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少」という目標がありますが,「メタボリックシンドロームの認知」という項目はありません.

(以下余談です)ちなみに,第一次の健康日本21には「メタボリックシンドロームの認知度の向上」という目標がありました.ただし,第一次においても「基本方針」そのものであるわけではないので,問いが第一次であったとしても,正答(=含まれない)ということになります.

話が逸れましたが,ここで注目したいのはbを選択した受験生が半数以上いたことです.非感染性疾患≒生活習慣病ということを知っていれば,bはおそらく除外できるため,非感染性疾患という言葉に馴染みがなかった受験生がそれなりにいたと考えられます.

●非感染性疾患=先進国の問題ではない!

「非感染性疾患」が国試の問題文に初登場したのは上記の111E4でした.
その後,112F20,114F19で低所得国・高所得国の疾病構造の違いを問う問題が出題されましたが,どちらも大雑把にいえば「途上国は感染症が,先進国は生活習慣病が問題となっている」という知識で解ける問題です.

112F20

WHOが公表した2015年の低所得国と高所得国における主な死亡原因の割合を示す.

低所得国と高所得国における主な死亡原因の割合のグラフ(2015年,WHO公表)
(クリックして拡大)


(ア)はどれか.
a 感染症 72.6%
b 悪性新生物 0.3%
c 心血管疾患 0.2%
d 不慮の事故 3.3%
e 周産期の異常 23.7%

正解:a

114F19

WHOが公表した2016年のファクトシートによれば,低所得国よりも高所得国で上位にある死因はどれか.
a 交通事故 4.3%
b 下痢性疾患 0.1%
c 下気道感染症 0.2%
d 虚血性心疾患 95.3%
e 新生児仮死および出生時損傷 0.2%

正解:d

「途上国は感染症が,先進国は生活習慣病が問題となっている」というのは割と一般常識的にも知られていることであり,誤りというわけではありません.重要なのは「途上国でも生活習慣病が大きな問題となっている」ということです.その「問題」の程度も一般常識的感覚よりもかなり大きいです(詳細は後述).そして,115C24で非感染性疾患が国試に再び登場しました(通算2回目).

115C24

非感染性疾患(脳心血管疾患・悪性新生物・慢性呼吸器疾患・糖尿病を含む)の国際保健における現況について正しいのはどれか.
a 死亡原因としては感染性疾患より少ない. 3.1%
b 死亡の半分以上は高所得国で発生している. 25.7%
c 急速な都市化や生活習慣のグローバル化が加速要因となっている. 50.8%
d 最大の寄与を有する単一リスクファクターは塩分過剰摂取である. 0.4%
e 低・中所得国においては,富裕層の方が貧困層より死亡率が高い. 20.0%

正解:

解説:正答選択肢cにある通り,グローバル化の影響で途上国でもNCDsは急増しています.また,世界人口の8割以上は途上国に住む人々です.そういった背景があり,NCDsによる死亡の実に77%は低・中所得国で発生しているとされています(下記の「WHOファクトシート」による).111回当時に比べれば,非感染性疾患という概念を知っている受験生は多かったと思われますが,正答率は約50%と低く,1/4を超える受験生がbを除外できませんでした.

なお,最大のリスクファクターは「喫煙」であり,貧困層は「喫煙」や「不健康な食生活」による疾病リスクが高く,保健医療サービスへのアクセスも十分ではないため,dとeは誤りとなります.

「途上国におけるNCDsの急拡大」はぜひ押さえておきたいポイントですね.WHOのサイトではNCDsのファクトシートが閲覧できますので,目を通してみてください.

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/noncommunicable-diseases

●次回予告

国試前にもう一つ,別の重要テーマを紹介したいと思います.公衆衛生は直前でも点数を伸ばしやすいので,がんばってください!

(編集部F)

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