国試

【公衆衛生の近年頻出は?】その4:低正答率の「平均余命」(2)

公衆衛生担当の編集部Fです.
だいぶ間が空いてしまいましたが,前回は近年頻出&低正答率の出題テーマとして,
平均余命を過去問(110G11)とあわせて紹介しました.

 

※前回の記事(1/4配信)

【公衆衛生の近年頻出は?】その3:低正答率の「平均余命」(1)

 

今回は前回の内容を踏まえ,111回の平均余命関連の出題を解説します.

 

国試対策において「過去3年の回数別は超重要」とよく言われます.
今回の記事は過去3年で3回出題された平均余命の総まとめとなりますので,
国試直前ではありますが,気分転換に読んでみてください.
※掲載している正答率はメディックメディアの医師国試採点サービスによる数値です.

 

111B21

厚生労働省の簡易生命表(平成27年)で80歳の日本人女性の平均余命に最も近いのはどれか.
a 3年
b 6年
c 12年
d 18年
e 24年

 

「80歳の日本人女性の平均余命」をピンポイントで覚えている人はいないと思います.
よって,この問題は以下の2つの事実を知っているかがカギとなります.

 

・現在の日本人女性の平均寿命が約87歳であること
平均寿命-x歳>x歳平均余命となること

 

日本が世界でもトップクラスの長寿国(特に女性)であることは一般的にも知られており,
「87歳くらい」と大体の年齢を記憶している受験生は多かったと思います.

 

そのためか,おそらく87(平均寿命)-80=7と考え,
誤ってbを選んでしまった受験生は70.3%にのぼりました.

 

しかし,前回でもお伝えした通り,
平均寿命-x歳>x歳平均余命となることが知られています.
その理由を簡潔に言うと,ある年齢に達している人は,
その年齢に達するまでの様々な死亡リスクを乗り越えているからです.

 

20歳といった若い年齢ではイメージしにくいので,80歳で考えてみましょう.
80歳の人は0~79歳までの間,幼い頃も,若い頃も,年を重ねてからも,
病気などで死亡する可能性はいくらでもあったはずです.
それにもかかわらず80歳まで生きているということは,
79歳までに死亡した人よりも,生存能力が高いといえるのです.

 

そのため,平均寿命(0歳平均余命)よりも長く生きると予想されます.
また,x歳+x歳平均余命は,xに比例して大きくなります.
これらのことは実際の統計数値にも現れています.
以下のグラフは平成29年「簡易生命表」による最新のデータです.

 

 

たとえこの事実を知っていても,80+12=92歳という年齢は現在の日本でも長寿といえ,
cを選ぶのは勇気がいると思います(正答率はわずか21.5%).

 

なお,平均寿命を考えるとaは明らかに短いです(aを選んだ受験生は7.5%).
また,いくら現在の日本でも100歳前後まで生きる人は少ないと考えられ,
dとeは除外できるはずです(dは0.6%,eは0.1%とほとんど選ばれていません).

 

111B21は,110G11で誤答が多かったdの内容を別のアプローチから出題したといえます.

110G11は「平均余命の算出式を覚えているか」という単なる知識問題に見えるかもしれませんが,

111回の伏線になっていたわけです.

 

いくら国試が「みんなが解ける問題を落とさない」ことが重要な試験とはいえ,
直近の過去問をしっかり吟味しておけば解ける問題を解けないのはもったいないです.

 

110G11,111B21は「超重要」とされる過去3年に含まれていますので,
平均余命の定義や考え方はぜひ押さえておいてください.
※余談ですが,メディックメディアの回数別(110回)や『QB公衆衛生』では,
 110G11の誤答選択肢の理由をすべて解説していたので,
 そこまで読んでいた受験生は111B21に正答できたと思います.

 

最後に,111E39の解説です.前回・今回の総復習として,見てみましょう.

 

111E39

A地区とB地区の生命表を基に作成した生命曲線を示す.

正しいのはどれか.

 

前回解説した内容を思い出しながら,正答を絞っていきましょう.
まず,出生直後に傾きが大きくなっているため,A地区の方が乳児死亡率は高いです.

 

次に, 平均寿命(0歳平均余命)と70歳平均余命の比較です.
平均余命は曲線下面積が大きい方が長くなることを,前回に説明しました.
先に比較しやすい70歳平均余命を比べてみると,
A地区の曲線下面積が明らかに大きいため,解答はaとcに絞られます.

 

最後,平均寿命の比較が少し悩みますが,両地区の曲線下面積のうち,
重複していない部分を比較することで解決します.

 

70歳まではB地区の方が大きく(差分をxとします),
70歳以降はA地区の方が大きくなっています(差分をyとします).
図で示すと,以下のようになります.

 

このxとyを比較すると,xの方が大きいのは明らかです.

よって,トータルの曲線下面積(=平均寿命)はB地区>A地区であり,
正解はcとなります(正答率77.8%.aを選んだ受験生は17.7%)

 

―終わりに―

 

国試本番まであと数日ですが,直前でも伸ばしやすいのが公衆衛生です.
今週は気温の変化が大きいようなので,暖かくして食事や睡眠をしっかりとり,
最後まで諦めずにがんばってください!

 

(編集部F)

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