国試

[6年生向け]公衆衛生で近年頻出なのは?
その2:注目の出題テーマ「感染症関連法(感染症法・検疫法・予防接種法)」

今日は公衆衛生の注目出題テーマとして,感染症関連法(感染症法・検疫法・予防接種法)を紹介したいと思います.

※昨年も同様の内容で配信していますが,今回は116回の出題内容も加味した更新版です.

これら3法に関する出題については,もともと出題頻度・正答率ともに高めだったのですが,新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けてか,近年はより細かい知識を問う出題が増えており,正答率が大きく下がっています

この傾向は117回以降も続くと考えられます.

覚えておけば確実に得点できるものの,頻繁に変更があり,かつ紛らわしいポイントも多いので,この記事が本番直前の知識整理に役立てば幸いです!

国試で新しい情報が出題されるまでにはおおむね3~4年程度のラグがあり,変わったばかりのポイントが直接出題される可能性は低いのですが,関連する知識が出題される可能性はあるため,変わったポイントも含めて整理しておくのがオススメです.

●予防接種法

予防接種は定期接種,臨時接種,任意接種の3つに分類されます.定期接種は通常実施される予防接種であり,市町村長が実施主体となります.また,定期接種はA類疾病B類疾病に分類されます.

A類疾病は2020年1月にロタウイルス感染症が追加され15疾病となり,覚えるのが大変ですが,大まかにいうと小児が罹患すると重篤化・後遺症のリスクがある疾病です.

■A類疾病(主に小児の集団予防目的,本人に接種の努力義務あり・接種勧奨あり)

ジフテリア,百日せき,急性灰白髄炎(ポリオ),麻しん,風しん,日本脳炎,破傷風,結核,Hib感染症,小児の肺炎球菌感染症,ヒトパピローマウイルス感染症,水痘,B型肝炎,ロタウイルス感染症,痘そう(天然痘)

※痘そうはA類疾病に含まれていますが,天然痘は1980年に根絶されているため,実際に予防接種は行われていません.

■B類疾病(主に高齢者の個人予防目的,努力義務・接種勧奨ともになし)

インフルエンザ,高齢者の肺炎球菌感染症

臨時接種は「まん延予防上緊急の必要があるとき」に実施される予防接種であり,市町村長または都道府県知事が実施主体となります.

なお,費用負担については,定期接種は市町村,臨時接種は市町村が実施した場合は国・都道府県・市町村,都道府県が実施した場合は国・都道府県となります.

ちなみに,2020年11月の『予防接種法』改正により,新型コロナウイルス感染症ワクチンは臨時接種の特例と位置づけられました(国が市町村へ接種の実施を指示できること,費用を国が全額負担することなどが定められています).

任意接種は法に定められていない,希望者に対して自己負担で実施される予防接種であり,小児に対するおたふくかぜワクチンやインフルエンザワクチン,海外渡航者に対するA型肝炎ワクチンなどがあります.

それでは115・116回の問題を見てみましょう.


115F11

予防接種法で任意の予防接種に含まれるのはどれか.
a MRワクチン 0.2%
b 水痘ワクチン 0.3%
c 日本脳炎ワクチン 1.8%
d おたふくかぜワクチン 65.4%
e ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン 32.3%

正解:d(選択肢右の%はメディックメディアの解答速報サービスによる受験生の選択率,以下同様)

解説

HPVワクチンについては,長い間積極的な勧奨が控えられていたこともあり,定期接種ではないと誤解した受験生が多かったのか,1/3近い受験生が引っかかってしまったようです(なお,2022年4月からは積極的な勧奨が再開しています).

また,おたふくかぜは難聴などの後遺症があるにもかかわらず定期接種になっていないことが問題視されているので,いい所を突いた問題だと思います.


116C29

予防接種法に規定されている定期接種について正しいのはどれか.2つ選べ.
a 1類疾病と2類疾病がある. 29.6%
b 実施主体は都道府県である. 3.7%
c 接種費用が公費で負担される. 33.4%
d 医師は副反応を疑う症状を知った時に報告する義務がある. 91.2%
e すべての対象疾病について,接種対象者には接種の努力義務がある. 42.1%

正解:c,d

解説
:正しくはA類疾病とB類疾病です(第2条).ちなみに,10年ほど前に1類疾病→A類疾病,2類疾病→B類疾病と分類名が変更されました.
:定期接種の実施主体は市町村です(第5条).
:定期接種の接種費用は市町村が負担します(第25条).
:「定期の予防接種等を受けたことによるものと疑われる症状の報告」の規定により,病院・診療所の開設者または医師は厚生労働大臣へ報告する義務があります(第12条).
:A類疾病は本人に接種の努力義務がありますが,B類疾病にはありません(第9条).接種勧奨もA類疾病にはあり,B類疾病にはなしなので(第8条),セットで覚えておきましょう.

その他に近年では114C27113F26でB類疾病,105E33で定期接種の対象が問われています.過去には実施主体なども問われており,新型コロナウイルス感染症の流行を受け臨時接種についても問われるかもしれないので,上記のまとめでぜひ復習しておいてください.

※QBオンラインに登録しているとリンクから解説がみられます(以下同).

また,予防接種については接種間隔114C26108E35で問われています.以前は異なる種類の予防接種を行う際,生ワクチンは27日間,不活化ワクチンは6日間の間隔をおくこととされていましたが,制度改正により2020年10月から注射生ワクチンの後に異なる種類の注射生ワクチンを接種する場合のみ27日間以上の間隔をおくこととされ,その他の組合せについては制限がなくなりました.

主な注射生ワクチンはMR(麻しん風しん混合)ワクチン,BCGワクチン,水痘ワクチン,おたふくかぜワクチンの4つですので,おさえておきましょう(ちなみに,ロタウイルスワクチンは経口生ワクチンです).

●検疫法・感染症法

『検疫法』に基づく検疫感染症も確認しておきましょう.

■検疫感染症

・『感染症法』の1類感染症

エボラ出血熱,クリミア・コンゴ出血熱,痘そう(天然痘),南米出血熱,ペスト,マールブルグ病,ラッサ熱

・新型インフルエンザ等感染症

新型コロナウイルス感染症

※新型インフルエンザ等感染症は,新型インフルエンザ・再興型インフルエンザの2つを含む分類でしたが,2021年2月の『感染症法』改正により,新型コロナウイルス感染症・再興型コロナウイルス感染症が新型インフルエンザ等感染症に追加されました.2年以内の期限付きで指定するものであり,現在は新型コロナウイルス感染症が指定されています.

・政令で定めるその他の感染症

中東呼吸器症候群(MERS),鳥インフルエンザ(H5N1またはH7N9)
ジカウイルス感染症,チクングニア熱,デング熱,マラリア

※上の3つは2類感染症,下の4つは4類感染症です.

『感染症法』は細かい内容を追うと膨大になるため,ここでは115回の問題を解きながら,よく問われる届出・入院勧告の対象公費負担について確認してみてください.

なお,『感染症法』には1~5類感染症新型インフルエンザ等感染症の他に,以下の2つの分類があります(新型コロナウイルス感染症も当初は指定感染症に指定されていました).

  • 新感染症:未知で危険性が極めて高い感染症→1年以内の期限付きで指定し,1類感染症に準じた対応・措置をとる(現在,指定されている感染症はなし)
  • 指定感染症:1~3類感染症と新型インフルエンザ等感染症に含まれない既知の感染症で,1~3類感染症に準じた対応の必要があるもの→1年以内の期限付きで指定し,1~3類感染症に準じた対応・措置をとる(現在,指定されている感染症はなし)

115C15

感染症について正しいのはどれか.
a 結核は検疫感染症である. 24.9%
b コレラの治療医療費は全額公費負担となる. 3.5%
c 髄膜炎菌感染症は定期予防接種の対象である. 13.0%
d マラリアは感染症法に基づく入院勧告の対象となる. 5.4%
e 新型インフルエンザは,診断後直ちに都道府県知事に届け出る. 53.2%

正解:e

解説:
:結核は2類感染症ですが,上記の通り検疫感染症には含まれていません.
:コレラは3類感染症で,3~5類感染症には公費負担はありません.医療費が全額公費負担となるのは新感染症のみです.1・2類感染症と新型インフルエンザ等感染症は医療保険が適用され,残りが公費負担となります.
:『予防接種法』の項で示した通り,髄膜炎菌感染症は定期接種の対象ではありません.
:マラリアは4類感染症で,入院勧告の対象となるのは1・2類感染症,新感染症,新型インフルエンザ等感染症です.
:1~4類感染症,新感染症,新型インフルエンザ等感染症を診断した医師は直ちに届け出る必要があります.なお,5類感染症(全数把握)は診断後7日以内に届け出る必要がありますが,侵襲性髄膜炎菌感染症,麻しん,風しんの3疾患は直ちに届け出る必要があります.

※1~5類感染症の内訳は厚生労働省のサイトで確認ができます.


●次回予告

国試前にもう一つ重要テーマを,改めて別の記事で後日紹介したいと思います.
公衆衛生は直前でも点数を伸ばしやすいので,がんばってください!


(編集部F)

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