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【公衆衛生の近年頻出は?】その3:低正答率の「平均余命」(1)

公衆衛生担当の編集部Fです.

前回は,近年頻出&低正答率の出題テーマとして,健康日本21を紹介しました.

 

※前回の記事(12/11配信)

【公衆衛生の近年頻出は?】

その2:近年頻出&低正答率の出題テーマ :健康日本21

【公衆衛生の近年頻出は?】その2:低正答率の「健康日本21」

今回は同様に低正答率の出題テーマとして,年末の記事でも少し触れた平均余命を過去問とともに解説します.

 

 

3つの指標:平均余命・平均寿命・健康寿命

 

平均余命は「ある年齢の人が平均してあと何年生きられるか」を示す期待値です.

 

例えば20歳の人の平均余命であれば,20歳平均余命と呼びます.

名前が似ている平均寿命は,「生まれたばかりの児が平均してあと何年生きられるか」

を示す期待値であり,0歳平均余命とも呼びます.

 

なお,前回解説した健康日本21(第二次)において,

その延伸が基本方針に掲げられている健康寿命は,

WHOによって「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」

と定義されています.

 

健康寿命は2000年に定義された比較的新しい指標ですが,

古くからあった平均余命・平均寿命とともに近年注目が高まっており,

そうした背景を踏まえて出題が増加していると思われます.

 

平均余命は厳密に学ぼうとすると非常に難しいのですが,

国試レベルでは大まかに理解できていれば十分です.

少し長くなりますが,順番に解説していきます.

 

 

生存曲線と定常人口

 

平均余命などの指標は,厚生労働省が公開している「生命表」に掲載されています.

生命表では,ある年の初めに10万人が同時に生まれ,

この10万人が“その生まれた年の年齢別死亡率通りに死亡していく”

と仮定し,様々な指標を算出しています.

 

これだけだとわかりにくいと思いますので,『公衆衛生がみえる』の図を用いて解説します.

グラフの縦軸は生存数(lx),横軸が年齢(x)です.

ある年に生まれた10万人が,年齢を重ねるごとにだんだんと死亡していき,

最終的に0人(全員死亡)となる過程を示しています.これを生存曲線と呼びます.

 

生まれた直後は死亡者がそれほど多くないためほぼ平坦,

年齢を重ねると疾病などによる死亡が増え,傾きが大きくなっていく,という流れです.

 

※この生存曲線はわかりやすくするために,若~中年層の死亡率を高くしています.

 現在の日本のような健康水準の高い国の生存曲線は,もっと右上に膨らんでいます.

 また,アフリカ諸国のように乳幼児死亡率が高い国は,最初からグラフが下降します.

 

ある年齢(x)での生存数(lx)に対し,死亡数はdxで表します.

当然,生存数(lx)=100,000-死亡数(dx)という関係になります.

 

ここまでは簡単ですが,難しいのが110G11でも出てきた定常人口です.

まずは定義から見てみましょう.

 

●x歳の生存者が,x+n歳に達するまでの間に生存する年数の総和が定常人口nLx

 

次に具体的な数字を当てはめて,理解しましょう(50~80歳,つまり30L50).

 

50歳の人達の中には,1年後に亡くなってしまう人もいれば,

70歳で亡くなる人もいますし,もちろん80歳以上まで生きる人もいます.

 

51歳で亡くなるAさん,70歳で亡くなるBさん,

80歳になっても生きているCさん,…と,50歳時点の生存者それぞれが,

80歳に達するまでの間に生存する年数を合計したものが定常人口(30L50)です.

 

※あくまで80歳に達するまでの間を考えているので,

 80歳で亡くなる人も85歳で亡くなる人も同じ年数がカウントされます.

 

そして,このx歳(50歳)時点の生存者が,

x+n歳(80歳)に達するまでの間に生存する年数の総和(定常人口)は,

生命曲線のx(50)~x+n(80)の下の面積に相当します.

 

1年×1年間生存した人数+2年×2年間生存した人数+3年×3年間生存した人数,…

この計算を1年未満の細かい年齢まで連続的にやっていく…というわけです.

 

つまり,積分ですね.

 

この定常人口の概念を,全員が死亡するまでに拡張したもの(x+nを∞にしたもの)が,

定常人口総数Tx)です.グラフでも確認してみてください.

 

●x歳の生存者が,(その後全員死亡するまで)生存する年数の総和が定常人口総数Tx

 

※Txを定常人口と呼ぶこともあります.

(以下の110G11でも問題文には「x歳以上の定常人口をTxとした場合」とあります)

参考:生命表諸関数の定義(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/22th/dl/22th_07.pdf

 

 

平均余命の求め方

 

長くなりましたが,ここまできて平均余命をしっかり理解することができます.

以下の図を見てください.

 

Txがx歳時点の生存者(lx)がx歳以降に生存した年数の合計であること,

Txが曲線下の面積(積分)に相当することは,これまでに説明しました.

 

このTxをならして,面積および縦の長さが同じである長方形を作ります.

この長方形の面積Txx歳以降に生存した年数の合計)を,

生存者数lxで割ることで,平均余命が求められます.

 

よって,平均余命の式はTx/lxとなります.

それでは過去問を見てみましょう.

 

110G11

x歳での生存人数をlxとし,x歳以上の定常人口をTxとした場合,x歳の平均余命はどれか.

 

数式がたくさん登場し,面食らった110回受験生は多かったと思います.

正解はbです(正答率47.3%).他の選択肢についても説明します.

※正答率はメディックメディアの医師国試採点サービスによる数値です.

 

aは0歳平均余命(平均寿命)です.cはx+1歳の平均余命です.

ここまでの説明で,この2つは明らかに違うことはわかるかと思います.

 

dは平均寿命からx歳を引いています.

例えばxを40と考えて,平均寿命から40歳を引いたら,

40歳平均余命が求められそうですが,誤りです.

 

平均寿命-x歳>x歳平均余命,となることが知られています.

(111B21の正答に直結する重要な知識なので,次回詳しく説明します)

30.8%の受験生がdを選んでしまいました.

 

eはx歳平均余命にx歳を足しています.

例えばxを40と考えて,40歳平均余命に40歳を加えたら,

平均寿命が求められそうですが,これも誤りです.

 

x歳平均余命+x歳>平均寿命,となります.

(dの解説で示した不等式の「-x歳」を移項しただけですね)

 

―次回予告―

 

長くなってしまったので,今回はここまでです.

110G11に関しては,平均余命の式を知っているかどうかの知識問題,

と捉えることもできるかと思います.

 

ただし,冒頭で述べた通り平均余命は大変重要な指標なので,

国試対策を兼ねてぜひ理解しておいてください.

 

なお,111B21は110G11の誤答dに関する知識が必須となる問題でした.

111回では平均余命に関する出題がもう1問(111E39)ありましたので,

今回の内容を踏まえ,次回はその2問を解説したいと思います.

 

(編集部F)