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国境なき医師団やJICAで働く(7:JICAで働く その2)~竹中裕先生~[みんなが知らない医師のシゴト]

 

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【JICAで働く その2】

↑本記事の目次です

 

 

■JICAの技術協力プロジェクトに参加

 

JICAの行う業務のメインとなる3本の柱は、無償資金協力、円借款、および技術協力である。

そのほかに青年海外協力隊や、災害時の緊急援助隊、国内における研修生の受け入れ業務などがある。

無償資金協力とは、たとえば途上国に病院を建てる・道路を整備する、などのプロジェクトを日本国の資金で行うものである。

円借款というのは、同様のプロジェクトを日本からの借金貸付で行うものである。

技術協力は、日本からさまざまな分野の専門家を派遣し、人材育成やシステム構築などを行うことである。

 

●地方の診療所

 

 

■カンボジアへ

 

2013年末から約2ヶ月、私はカンボジアにおける母子保健の技術協力のプロジェクトにインターンとして参加した。

多くのJICAプロジェクトは、業務の実施者がJICAとなり、実際のプロジェクトはそのつど団体やコンサルタント会社と契約し、その契約に基づいて業務が行われ、その内容は業務進捗状況をJICAがチェックする形態で進められる。

 このカンボジアのプロジェクトは主として、国立国際医療研究センター(以下NCGM)が担当して行われているものだった。

 今でこそ訳知り顔でこのようなことを語っているが、当時は誰がJICAの職員で、誰がプロジェクトを請け負っているのかの区別も、よく分からないままであった。

 NCGMは病院のほかに、国際医療協力局という部署があり、JICAのプロジェクトの実施をはじめ、種々の国際保健医療に関する業務を行っている。

 セミナーやイベントも多く、また、国際協力を目指す医師・看護師などの人材募集・育成を行っているので、興味のある人はホームページなどで確認してみたら良いと思う。

 

 

 

■新鮮だったインターン

 

 

さて、このインターンの経験は、いままで臨床一筋に生きてきた私にとってはきわめて新鮮であった。“JICAのプロジェクトの専門家”という日本から派遣されてきた方々の下で、日々の業務を見学する日々だった。

実際の専門家の方々の日々の業務は、研修を計画したり、そのための折衝を病院や役所の人々と行うことである。

プロジェクト自体の大きな目標が何かを理解していなければ、何を目的に何をしているのかがよく見えてこない。

プロジェクトの活動は主に病院やヘルスセンターで行われているため、実際に産婦人科医や助産師、妊婦さんと接することもあるにもかかわらず、自分が医療を行わないことにとても不思議な感覚を覚えたものである。

 

 

 

●プノンペンで会議

 

 

 

 

■海外なのに日本人との仕事が多い

 

このインターン活動でもっとも印象に残ったことをひとつ挙げるならば、JICAはやはり日本の団体だということを再認識したことだった。

 JICAやUSAIDなど、国がその母体となっている援助団体の援助の方針は、国対国である。このカンボジアのプロジェクトでいうと、日本とカンボジアの間の援助である。

そのため、プロジェクトにかかわる人間は日本人がカンボジア人である。

結果、朝から晩まで日本人同士で仕事をするか、日本人とカンボジア人で仕事をするか、たまに国際機関を交えた会議に出席するかというスタイルになる。

カンボジアに来て、カンボジアのために働いているにもかかわらず、一日中日本人と日本語のみで仕事をし、日本人と食事をする日もあるという、不思議な状態がここには存在するのである。

そして、このように海外で働いている日本人からその経験談を聞いたりすることは、とても刺激になるし、また、将来のキャリアを考える上でとても役に立つ。

私もこのインターンの期間にJICAやNCGMのことだけでなく、公衆衛生の重要さおよびMPH(master of public health, 公衆衛生修士)を取得することが、海外で医師として働くうえでいかに重要かなどを知ることが出来た。(MPHの重要性あるいは留学に関しては、“MPH(マスター・オブ・パブリックヘルス)留学へのパスポート 世界を目指すヘルスプロフェッション (シリーズ日米医学交流)” に詳しく書いてあるので、参照されたい。)

   

■JICAの業務は、要は外交なのだ

 

その後、3週間JICAの短期専門家としてドミニカ共和国へ派遣されることになった。

上記のカンボジアのプロジェクトとやや似ているともいえるが、母子保健にかかわるプロジェクトで、このプロジェクトの内容に関する調査を担当することになった。

当時、同プロジェクトのリーダー(日本人)から、目からうろこが落ちるようなことを教えてもらった。

JICAの業務は、要は外交なのだと。

言われてみればそれは当然である。保健の専門家はその専門を生かしてドミニカ共和国のためになることを成し遂げる。

その結果、ドミニカ共和国の国民は日本人および日本国に感謝し、日本のことを好きになってもらう。

保健は目的であるともに、手段でもある。このときに、少しだけJICAという組織が分かったような気がした。  

 

●ドミニカで会議・調査結果を発表

 

 

 

~第8回へ続く~

 

※全10回を予定しています!続きもお楽しみに!

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