国試

[6年生向け]公衆衛生で近年頻出なのは?
その3:注目の出題テーマ「生活保護制度」

今日は公衆衛生の注目出題テーマとして,生活保護制度を紹介したいと思います.

これまで生活保護は「公費医療」「国民医療費」といった大きな出題テーマの一部として出題されることがほとんどだったのですが,116回では生活保護を主題とする問題が2日にわたって出題されました.

この2問は細かい知識を問う選択肢が多く,正答率がかなり低くなりました.

生活保護をはじめとした福祉制度については苦手意識をもっている受験生が多いと思いますので,この記事でぜひ要点をおさえておいてください!


1.生活保護制度の概要

資産や能力などすべてを活用してもなお生活に困窮する世帯に対し,困窮の程度に応じて必要な保護を行い,健康で文化的な最低限度の生活を保障し,その自立を助長する制度です.

根拠法は『生活保護法』ですが,『日本国憲法』第25条に規定されている生存権(すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する.)の理念に基づき設けられた制度とされています.

なお,生活保護に関しては福祉事務所が相談・申請から支給に到るまでの様々な事務を担います.

2.生活保護の種類(=8種類の扶助)

生活保護には以下の8種類の扶助があり,1つまたは複数の扶助を組み合わせて支給されます.医療・介護扶助のみ現物給付で,その他は現金給付というのがポイントです.

3.生活保護の統計

生活保護に関しても様々な統計がありますので,よく出題されるポイントを簡潔にまとめておきます(被保護実人員被保護世帯数を混同しないように気をつけてください).

・被保護実人員は1992年(バブル崩壊の頃)から増加し続けていたが,2015年をピークにここ数年は減少(約200万人.扶助の種別では医療扶助が約5割を占め最多).

・被保護世帯数も同様に1992年から増加し続けていたが,ここ数年は増える年も減る年もあり,おおむね横ばい(約160万人).

・4つの世帯類型(高齢者世帯,母子世帯,障害者世帯・傷病者世帯,その他の世帯)の構成割合をみると,高齢者世帯が約55%を占め最多.

・高齢者世帯の8~9割が単身世帯

被保護世帯数は横ばいなのに被保護実人員は減少している→単独世帯の生活保護が増加,中でも高齢者単独世帯の生活保護が増加している,とまとめることができます.

それでは実際の出題を見てみましょう.上記のまとめで触れていない細かい知識に関しては,以下の選択肢解説で「出たとこ」だけはおさえておきましょう.


116C30

生活保護法について正しいのはどれか.2つ選べ.
a 給付の申請は保健所で行う. 3.6%
b 分娩は扶助の対象外である. 54.3%
c 生存権の理念に基づき制定されている. 98.1%
d 介護扶助は原則として金銭給付によって行う. 6.6%
e 医療扶助では原則として後発医薬品を使用する. 37.4%

正解:c,e(選択肢右の%はメディックメディアの解答速報サービスによる受験生の選択率,以下同様)

解説
:給付の申請は福祉事務所で行います.
:8つの扶助の1つに分娩に必要な費用を支給する「出産扶助」があります.
:『日本国憲法』第25条の生存権の理念に基づく制度です.
:介護扶助(と医療扶助)は現物給付です.
:必要と認められる場合は先発医薬品の使用も可能ですが,2018年10月以降は,原則として後発医薬品を使用することになっています.

eについて知っていた受験生はほとんどいなかったと思われますが,a~dは基本的な知識なので,生活保護制度の概要をおさえておけば消去法で正解に到ることができるかと思います.


116F17

生活保護について正しいのはどれか.
a 生活保護基準は都道府県が定める. 3.2%
b 被保護世帯数は近年減少傾向にある. 14.2%
c 被保護世帯数は高齢者世帯が最も多い. 60.1%
d 生活保護の開始は要介護状態が最も多い. 1.3%
e 生活保護受給者は国民健康保険に加入している. 21.2%

正解:c

解説
:生活保護基準とは簡単にいうと「生活保護をどういう人に,どれぐらい支給するか」という基準であり,厚生労働大臣が定めます.
:「近年」がどの範囲を指すのか不明瞭ですが,上記の通り被保護世帯数はおおむね横ばいであり,減少傾向にはないため誤りと判断できます.
:4つの世帯類型のうち,最多なのは高齢者世帯です.
:保護開始の理由は「貯金等の減少・喪失」が4割を超え最も多く,「要介護状態」は1%程度に留まっています.
:被用者保険非加入者(国民健康保険および後期高齢者医療制度の被保険者)の場合は,各医療保険制度の被保険者から除外され,医療扶助により医療費が全額公費負担されます.なお,被用者保険加入者の場合は保険が優先され,残りが公費負担されます.

1日目のC30よりもレベルの高い知識を問う選択肢が多くなっています.高齢者,特に単身の高齢者の貧困は大きな社会問題となっていますので,正答選択肢cの内容はぜひ覚えておきましょう.


● 終わりに

国試はよく「皆が解ける問題を解ければ受かる試験」といわれています.公衆衛生は臨床医学に比べると,知識さえあれば判断に迷う問題は少ないと思います.

解ける問題を落ち着いてしっかり解いて,合格を勝ち取ってください!


(編集部F)

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