医師国家試験対策:画像問題対策

  • 医師国試合格のために,「画像を読む力」は必須!
  • 最近の画像問題の傾向を知ることが重要!
  • 座学と実習のセットで「診断にどういう画像が必要か」を学ぼう!

■ 医師国試合格のために,「画像を読む力」は必須

1回で400問出題される医師国家試験.
そのうちどのくらいの問題に「画像」がついているか,皆さんご存知ですか?

単純X線やCT,MRIといった放射線科領域のものだけでなく,
心電図のような生理学的検査の記録や,公衆衛生領域のグラフ・表など,提示される画像の種類は様々です.

こういった画像がついた問題を,そのまま「画像問題」と呼んでいるのですが,
なんと直近の117回国試全400問のうち108問,つまり約25%が画像問題でした.
特に臨床問題は全250問中99問を画像問題が占めており,中には画像が読めないと解くことができない問題も….

つまり,医師国試を攻略する上で,画像を読みとる能力は必須といえるのです.

117回医師国試 画像付きの問題割合

■ 言葉で覚えるだけでは不十分

早速117回国試の問題を1問見てみましょう.

【117F68】(3連問1問目)
次の文を読み,68〜70の問いに答えよ.
76歳の女性.歩行障害を主訴に来院した.
現病歴:6年前から左上肢の動かしにくさが出現し,4年前から歩くのが遅くなった.4年前から自宅近くの診療所でレボドパ〈L-dopa〉を処方され症状は改善した.1年前から内服薬の効果が持続しなくなり,歩行困難が進行した.半年前から,歩行中に足が止まってしまうことがあり,2回転倒したため専門外来を受診した.
既往歴:脂質異常症でスタチンを内服している.
生活歴:喫煙歴,飲酒歴はない.転倒しないようにほとんど外出しない.室内のトイレ歩行などの日常生活動作は自立している.
家族歴:特記すべきことはない.
現症:意識は清明.身長158cm,体重45kg.体温36.2℃.脈拍64/分,整.血圧110/60mmHg.胸腹部に異常を認めない.神経診察では仮面様顔貌,小声および摂食時のむせこみを認める.四肢筋強剛,動作緩慢を認める.筋力低下,感覚低下は認めない.
検査所見:血液所見:赤血球340万,Hb 11.2g/dL,白血球6,300,血小板13万.血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL,アルブミン4.5g/dL,総ビリルビン0.2mg/dL,AST 24U/L,ALT 18U/L,LD 160U/L(基準120〜245),γ-GT 41U/L(基準8〜50),CK 58U/L(基準30〜140),尿素窒素18mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL,血糖98mg/dL,Na 138mEq/L,K 4.0mEq/L,Cl 97mEq/L.CRP 0.2mg/dL.今回,撮像したドパミントランスポーターSPECT(A)と123I-MIBG交感神経心筋シンチグラム(B)を次に示す.

117F68~70 Parkinson病 ドパミントランスポーターSPECT

診断はどれか.
a Parkinson病
b 多系統萎縮症
c 進行性核上性麻痺
d 大脳皮質基底核変性症
e 薬剤性Parkinson症候群

117F68~70 Parkinson病 MIBG交感神経心筋シンチグラム

もう読み始めた瞬間に「うっ…」,選択肢を見て「Parkinson病/症候群の鑑別…ぐえ…」となった方も,多いのではないでしょうか.
皆さん,この問題の答えはわかりますか?

正解はa Parkinson病.
正答率は89.3%ということで, 10%ほどの受験生がこのあたりの鑑別を国試当日の時点でもモノに出来ていないようでした.
(選択率:a 89.3%,b 2.2%,c 3.1%,d 1.5%,e 3.9%)

MIBG心筋シンチグラフィは他疾患の問題で繰り返し登場しており,解説の中でも「Parkinson病で取りこみの低下がみられることにより,多系統萎縮症など他のParkinson症候群との鑑別に有用である」と記載されているものの,
「暗記ができていない」,「画像の読み方がわかっていない」などの理由で,失点した受験生が一定数います.

弊社書籍『イヤーノート』の付録である「イヤーノートATLAS」(以下「AT」)にはParkinson病のMIBG心筋シンチグラフィの画像が,しっかりと正常像との比較ができる形で掲載されていました.
所見を言葉として学ぶだけでなく,こういった画像を実際に見て,正常像との比較の仕方も学ぶ.これが「画像問題対策のキホンのキ」となります.
しっかり「AT」も並行して使う学習方法を身につけるようにしてくださいね!

Parkinson病 MIBG心筋シンチグラフィ 「イヤーノートATLAS」

■ 電子カルテに触れ,自分で異常所見を確認する

また,最近は診断そのものを問う画像問題はやや減少しており,その分「画像所見を元に診断をつけ,その後の治療や対応などを問う」問題が多くなっています.

次は116回国試の問題を1問見てみましょう.

【116A74】
42歳の男性.腹痛を主訴に来院した.昨日昼から心窩部痛を自覚していた.今朝,起床時に嘔吐した.その後右下腹部痛を自覚し,徐々に増悪するため受診した.身長170cm,体重78kg.体温37.3℃.脈拍84/分,整.血圧126/78mmHg.呼吸数16/分.SpO2 99%(room air).腹部は平坦で,右下腹部に圧痛と反跳痛を認める.血液所見:赤血球486万,Hb 15.2g/dL,Ht 43%,白血球16,200,血小板24万.血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL,アルブミン4.2g/dL,総ビリルビン0.7mg/dL,AST 23U/L,ALT 18U/L,LD 147U/L(基準120〜245),尿素窒素20mg/dL,クレアチニン0.9mg/dL.CRP 0.9mg/dL.腹部超音波検査では病変の描出が不明瞭であった.腹部造影CTの横断像(A)と斜冠状断像(B)を次に示す.

116A74 急性虫垂炎 腹部造影CT 水平断像

考慮すべき治療法はどれか.3つ選べ
a 手術
b 輸液
c 高圧浣腸
d 抗菌薬投与
e イレウス管挿入

116A74 急性虫垂炎 腹部造影CT 斜冠状断像

正答率89.7%の問題ですが,皆さん答えがわかりますか?
正解はa,b,d.
虫垂炎と診断して,絶食補液の上で,抗菌薬投与を行い俗に言う「散らす」方法か,手術(この場合は虫垂切除術)を検討させる問題でした.

国試本番での各選択肢を選んだ受験生の割合は,
a 94.8%,b 97.8%,c 0.5%,d 96.8%,e 10.1%.
10人に1人の受験生は,e イレウス管挿入を選択したようです.

虫垂の異常所見をより確認しやすくするために提示されている(斜)冠状断像のはずなのに,逆にこの画像でどういった所見を確認すべきかわからない受験生は,イレウスなどの他の疾患や病態が併存していることを疑って誤答した,といったところでしょうか.

「はじめは心窩部に認めた痛みが,右下腹部に移動する」といった,急性虫垂炎でよく聞く病歴が提示されているにもかかわらず,ここで得点しそびれるのは,かなりもったいないですよね.

「AT」でも掲載している通り,虫垂は走行の仕方や長さに個人差があるため,画像検査で確認するにあたって,水平断像だけでなく,冠状断像などの他のスライスもあわせて確認することが重要です.

虫垂炎 腹部造影CT 「イヤーノートATLAS」

病歴から鑑別に挙げた疾患について,「確認したい所見はこれ!だから,この画像検査のこのスライスを見よう!」と適切に判断できるようになっておくと,
国試で同じ疾患の臨床問題に遭遇したときに「ああ!やっぱりその画像が出るよね!」と,想定した画像が提示されることが解答の根拠や自信になり,よりスムーズに解答できるようになります.

ぜひ,
①『イヤーノート』に文字情報として記載されている画像所見を覚える
②「AT」で,実際の画像検査でどのように映るのかを確認する
③ 実習中に電子カルテを使って,異常所見が描出されているスライスを特定する訓練を積む
という3ステップで,画像問題対策をしていきましょう.

また,実習中に『イヤーノート』を書籍で持ち歩くのはさすがに重たい….
ぜひ実習中に気になった画像所見は,mediLinkアプリを使って,タブレットやスマートフォン1台でスムーズに確認してみてくださいね!

■ グラフ問題は思考訓練が重要

これは実物を見ていただく方が早いです…!
117回の問題を1問ご覧ください.

【117E19】
食事摂取基準の指標の概念図を次に示す.
ほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量(推奨量)はどれか.

117E19 日本人の食事摂取基準 指標の概念図

a A
b B
c C
d D
e E


問題番号からわかる通りE問題,つまり必修問題として出題されたものですが,
こちらの正答率は47.8%と,必修問題の中ではかなり難度が高いものに分類されます.

持っている知識から解答しようした受験生は
「え?食事摂取基準って言葉は過去問でみるけど,このグラフ何?知らない…」
と,かなり動揺してしまったのではないでしょうか.

正解はbで,設問文中の「ほとんどの人が1日の必要量を満たす」という表現を,
「1日の必要量を満たさない人が限られる=不足している人の割合が0ではないが,かなり低い」と置き換えられれば,それだけで解答可能な問題でした.

「知識ではなく,思考一本で解かざるを得ない問題が出うる」ということは十分に理解し,試験本番で動揺せずに頭を切り替えて問題に臨むことが重要です.
また,そういった問題にしっかりと対応できるように,過去問演習の際も「これは思考力を養う訓練に使う問題」としっかり割り切って解くようにしましょう.

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