イヤーノート2025 内科・外科編
医師国家試験対策:画像問題対策
- 医師国試合格のために,「画像を読む力」は必須!
- 最近の画像問題の傾向を知ることが重要!
- 座学と実習のセットで「診断にどういう画像が必要か」を学ぼう!
■ 医師国試合格のために,「画像を読む力」は必須
1回で400問出題される医師国家試験.
そのうちどのくらいの問題に「画像」がついているか,皆さんご存知ですか?
単純X線やCT,MRIといった放射線科領域はもちろん,超音波,病理,心電図,公衆衛生領域のグラフ・表など,提示される画像の種類は様々です.
こういった画像がついた問題を,そのまま「画像問題」と呼んでいるのですが,
なんと直近の118回国試全400問のうち89問,つまり約22%が画像問題でした.
特に臨床問題は全250問中80問(3割以上)を画像問題が占めており,中には画像が読めないと解くことができない問題も….
つまり,医師国試を攻略する上で,画像を読みとる能力は必須といえるのです.
■ 言葉で覚えるだけでは不十分
早速118回国試の問題を1問見てみましょう.
【118D27】
65歳の女性.頸部腫瘤を主訴に来院した.8ヵ月前から頸部腫瘤を自覚していたが,痛みがないためそのままにしていた.頸部腫瘤の大きさに変化はないが,家族が心配したため受診した.発熱,寝汗および体重減少はない.胸部と腹部に異常所見を認めない.両側頸部と両側鼠径部に径2〜3cmで可動性良好な弾性硬のリンパ節を複数触知し,圧痛は認めない.血液所見:赤血球415万,Hb 12.5g/dL,Ht 40%,白血球5,600,血小板28万.血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL,アルブミン4.2g/dL,LD 200U/L(基準124〜222).免疫血清学所見:CRP 0.2mg/dL,HTLV-1抗体陰性.末梢血塗抹標本で異常細胞を認めない.骨髄生検で異常細胞を認めない.頸部〜骨盤部造影CTで両側頸部,両側鼠径部および腹部大動脈周囲に径3cmのリンパ節腫大を認める.右頸部リンパ節生検組織H-E染色標本(A)とCD20免疫組織化学染色標本(B)を次に示す.
最も考えられるのはどれか.
a 濾胞性リンパ腫
b Burkittリンパ腫
c 末梢性T細胞リンパ腫
d 成人T細胞白血病・リンパ腫
e びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
病理画像に苦手意識を持っている方は多いのではないでしょうか.
皆さん,この問題の答えはわかりますか?
正解はa 濾胞性リンパ腫.
正答率は80.7%ということで, 20%ほどの受験生がこのあたりの鑑別を国試当日の時点でもモノに出来ていないようでした.
(選択率:a 80.7%,b 0.8%,c 0.3%,d 0.1%,e 18.1%)
濾胞性リンパ腫は名前の通り,組織像で濾胞構造が多数みられます.
濾胞性リンパ腫の組織像は,誤答率の高かったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫と比較できる形で病みえに掲載されていました.
所見を言葉として学ぶだけでなく,こういった画像を実際に見て,言葉と画像を結び付けて覚えることが重要です.
しっかり「病みえ」も並行して使う学習方法を身につけるようにしてくださいね!
イヤーノートATLAS G27より
病気がみえるvol.5 p.206より
■ 画像と疾患の知識を結びつけて考えよう
また,最近は診断そのものを問う画像問題はやや減少しており,その分「画像所見を元に診断をつけ,その後の治療や対応などを問う」問題が多くなっています.
118回国試の問題を1問見てみましょう.
【118D29】
32歳の経産婦(2妊1産).妊娠35週1日,性器出血を主訴に救急車で搬入された.妊娠33週まで別の医療機関で妊婦健康診査を受けていた.里帰り分娩の目的で当院を受診予定であったが,性器出血を自覚したため救急車を要請した.意識は清明.体温37.2℃.心拍数92/分,整.血圧108/72mmHg.呼吸数20/分.SpO2 98%(room air).腟鏡診で外子宮口から出血が持続し,総量が約200mLであった.胎児心拍数陣痛図にて胎児の状態は良好であり,10分間に1回の子宮収縮を認める.来院時の経腟超音波像(矢印は内子宮口)を次に示す.
適切な対応はどれか.
a 輸血
b 体位変換
c 緊急帝王切開
d 双手子宮圧迫
e 硫酸マグネシウム投与
正答率77.6%の問題ですが,皆さん答えがわかりますか?
正解は「c 緊急帝王切開」.
部分前置胎盤,あるいは辺縁前置胎盤と診断して,入院管理下で妊娠を継続するか,緊急帝王切開かを検討させる問題でした.
国試本番での各選択肢を選んだ受験生の割合は,
a 3.4%,b 5.1%,c 77.6%,d 0.8%,e 13.1%.
1割以上の受験生は,「e 硫酸マグネシウム投与」を選択したようです.
超音波画像から前置胎盤であることが読み解けなかった受験生は,切迫早産などの他の疾患や病態を疑って誤答した,といったところでしょうか.
「外子宮口から出血が持続し,総量が約200mLであった」といった,前置胎盤でよく聞く病歴が提示されているにもかかわらず,ここで得点しそびれるのはもったいないですよね.
「AT」には,前置胎盤や切迫早産の超音波検査像がシェーマ付きで分かりやすく解説されています!
また,「病みえ」に掲載されている通り,全前置胎盤,部分前置胎盤,辺縁前置胎盤は「前置胎盤」と一括して取り扱うことが多く,どの画像を見ても前置胎盤と判断できることも重要です.
イヤーノートATLAS 産34,産38より
病気がみえる vol.10 p.129より
さらに本問では,画像所見から疾患を特定した後,その後の対応について考え,正解にたどりつく必要があります.
今回は,疾患の画像所見を理解しておくことに加え,「基本的に前置胎盤では帝王切開を選択する」という知識がないと,正解に至ることができませんでした.
近年の国試では,画像所見と疾患についての知識の両方がないと解けない問題が多くなっています.
画像だけ!知識だけ!ではなく,両者を紐づけて覚えておくことが大切ですね.
■ グラフ問題は思考訓練が重要
これは実物を見ていただく方が早いです…!
117回の問題を1問ご覧ください.
【117E19】
食事摂取基準の指標の概念図を次に示す.
ほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量(推奨量)はどれか.
a A
b B
c C
d D
e E
問題番号からわかる通りE問題,つまり必修問題として出題されたものですが,
こちらの正答率は47.8%と,必修問題の中ではかなり難度が高いものに分類されます.
持っている知識から解答しようした受験生は
「え?食事摂取基準って言葉は過去問でみるけど,このグラフ何?知らない…」
と,かなり動揺してしまったのではないでしょうか.
正解はbで,設問文中の「ほとんどの人が1日の必要量を満たす」という表現を,
「1日の必要量を満たさない人が限られる=不足している人の割合が0ではないが,かなり低い」と置き換えられれば,それだけで解答可能な問題でした.
「知識ではなく,思考一本で解かざるを得ない問題が出うる」ということは十分に理解し,試験本番で動揺せずに頭を切り替えて問題に臨むことが重要です.
また,そういった問題にしっかりと対応できるように,過去問演習の際も「これは思考力を養う訓練に使う問題」としっかり割り切って解くようにしましょう.
■ 実習での器具の確認も大切
最後に,臨床で用いる医療器具についての問題を紹介します.
【118E21】
写真(A〜E)を次に示す.
肛門直腸の診察に用いる器具はどれか.
a A
b B
c C
d D
e E
実習で見たことがある人は正解できましたね.
また,国試勉強をしている方は,過去問で見たことがある!と思われたかもしれません.
この問題の正解はa.肛門鏡を選ぶ問題でした.
正答率は75.8%ということで, 必修問題の中では難易度が高い問題だったようです.
(選択率:a 75.8%,b 1.6%,c 3.5%,d 17.8%,e 1.3%)
肛門鏡については,前回の第117回医師国家試験で,画像問題E6の選択肢に登場していました.
過去問を解く時,誤答選択肢の画像についてもきちんと調べていた人は,正解できたのではないでしょうか.
最近の医師国家試験に登場した器具については,各診療科の実習での見学中に,器具の形状や使用方法を確認することが重要です.
また,その機会がなかったとしても,学習するときに見慣れない器具についてはきちんと調べることが大切ですね.
いかがだったでしょうか.
今回紹介した画像問題は,多くが正答率8割前後のものであり,
受験生にとって合否の分かれ目になりうる問題といえるのではないでしょうか.
これらの問題をしっかり得点することで,合格が盤石なものになると思います.
国試勉強の際は,今回紹介したポイントをふまえて,「AT」や「病みえ」も活用しながら,画像問題にしっかり太刀打ちできるように対策を行いましょう!