第117回医師国家試験問題解説
第118回 医師国家試験分析(前編):大学別合格状況・合格基準は?
2024年2月3,4日の2日間にわたり,118回医師国家試験が行われました.
メディックメディアでは国試採点サービス「講師速報」を毎年行っているのですが,
おかげさまで今回なんと9,500人を超える受験生の方にご参加いただき,
たくさんの解答情報を得ることができました.
そこで,このコーナーでは採点サービスで得られた情報などに基づき,
118回国試の傾向はどうだったのか,
受験生はどのような問題でつまずくのかを分析していきたいと思います.
118回国試対策に,ぜひ分析結果を活用してください.
■合格状況(118回医師国家試験)
合格基準得点率(ボーダーライン)は必修問題と一般,臨床問題(必修を除く一般問題・臨床問題)とで異なります.必修問題は合格基準は80%で例年一定の絶対基準ですが,一般・臨床問題は相対基準のため,基準が毎年変動します.111回以前では一般臨床問題の合格基準の得点率が63%台の年もありましたが,ここ近年ではボーダーラインが上昇傾向にあり,今年の118回では一般臨床問題の合格基準が76.7%と過去最高水準に達しました.一般,臨床問題でも80%近い得点が求められ,受験生には高い得点率が求められました.
令和5年3月末に”令和6年版医師国家試験出題基準について”が発表され,新しい出題基準となりました.過去も新しい出題基準が発表された次の国家試験では平均得点率が上昇し,それに伴い合格基準点も上昇する傾向がありました.今回も同様の傾向の可能性も考えられます.
近年は毎年約10,000人が受験しており,合格率は90%前後で推移しています.新卒と既卒を合わせた合格率は今年は92.4%で,過去10年では最も高い合格率となりました.
10人のうち9人が合格する試験だけに,「他の人が解けない問題を解けた人」が合格する試験ではなく,
「多くの人が解けた問題を確実に解いた人」が合格する試験といえるでしょう.
つまり,他の受験生の動向から大きく外れた勉強をしない,「不合格とならない勉強」を心がける必要があります.
■大学別合格状況(118回医師国家試験)
新卒合格率が100%だったのは群馬大,自治医大,東海大,名古屋大の4校です(東海大学は124人が出願して109人受験,109人合格しているので,卒業試験などで受験者を絞った可能性があります.)、前年の5校から減少しました.自治医大の合格率は2013年以降,10年連続で全国最高を記録していましたが,23年は2位となっていました.24年は新卒・既卒共に100.0%となり,再び合格率首位に返り咲きしました.
■出題数と時間割
医師国試は,全400問を2日間で解きます.
113回までは各日で出題数に微妙な違いがありましたが,
114回からは1・2日目の時間割が統一され,出題数が均等に200題ずつになっています.
●1問あたりの所要時間
さてここで,1問をどれくらいのスピードで解いたらいいか考えてみましょう.
ブロックごとに1問あたりの所要時間を概算してみました.
どのコマもだいたい2分で1問解かなければなりません.
ただ,どの問題も均等に2分使っていいわけではありません.
当然,一般問題より臨床問題の方が問題文を読む時間がかかります.
また,どのブロックにおいても見直しの時間を設ける必要があります(マークミスに要注意!).
模試などを受けて,自分なりに時間配分を検討してみましょう.
ちなみに,両日とも試験開始時間が9:30,終了時間が18:30です.
■出題形式
●五肢択一だけじゃない!
国試は400問すべてマークシート方式ですが,
出題形式で最も多いのはA形式と呼ばれる五肢択一の問題形式です.
他に,X2形式と呼ばれる“2つ選べ”問題,X3形式と呼ばれる“3つ選べ”問題,
多肢選択と呼ばれる6肢以上の選択肢から選ぶ問題,そして数値を解答する計算問題といった出題形式があります.
下記の円グラフが示すとおり,118回もダントツでA形式の問題が多かったです.
●複数選択の問題でも高い正答率となった118回国家試験
では次に,選択形式の問題の平均正答率をみてみましょう.
118回の選択形式の問題における平均正答率は,A形式,X2形式の正答率が114回以降で最も高く,X3形式でも82.5%とこれまでと比較して非常に高い正答率でした.
しかしながら,111回以前のX2,X3形式の平均正答率がA形式よりも低くなるという傾向は
118回でも変わらず続いています.
知識が曖昧なままだと,解答を1つ(2つ)選べず,失点してしまうというのがX2,X3形式の恐ろしさです.いずれも80%を超える高い正答率であり,各分野での正確な知識,解答力が求められています.
●計算問題は落ち着いて正確に!
118回国試では【A75】【C73】【C75】【D75】と,4問の計算問題が出題されました.
(117回国試では,3問の計算問題が出題されました.)
計算問題の演習では,
まず感度・特異度や寄与危険割合,標準化死亡比といった計算問題に出てくる用語の定義や,
その求め方をすぐに使えるように覚えておくことが重要です.
さらにA-aDO2や血漿浸透圧の求め方といった重要な公式,
特に出題されたことのある公式やその周辺の公式をピックアップして,使えるように覚えてください.
また,日頃から問題文中から計算方法を読み取ることや,丁寧に手計算することを心がけましょう.
また,117回では初めて臨床長文問題(いわゆる3連問)において計算問題が出題されました.
116回では,これまでA形式(五者択一)しか出題のなかった必修ブロックで出題されたこともあり,
どのブロックのどの箇所に計算問題が来ても,慌てないように心構えをしておく必要がありそうです.
■合格基準
●3項目を全て満たせば合格
国試では,必修問題,一般問題・臨床問題それぞれに合格基準が設けられています.
どちらも合格基準を上回らなければ合格できません.
また,臨床現場において絶対にしてはいけない選択肢を禁忌肢と呼び,
この禁忌肢をある一定の数以上選択してしまうと,それだけで不合格になってしまいます.
118回の合格基準をみてみましょう.
必修問題の合格基準は,年によって変わらない絶対基準です.
他の人ができていようがいなかろうが,80%以上の得点率でなければ合格できません.
対して,一般・臨床問題の合格基準は相対基準です.
他の受験生の出来具合で基準が毎年変わりますが,例年70%前後で推移していましたが、116回から118回は上昇傾向にあり,前述のように118回は76.7%まで上がっています.
また,117回では禁忌肢問題数が3問以下から2問以下となっていましたが118回では3問以下に戻りました.
禁忌については中編で詳しく述べていきます.
■採点除外等の取り扱いとした問題
国試では例年,合格発表時に厚労省から採点除外となる問題や,複数正解となる問題が発表されます.
問題そのものは適切だが,国試で出題するには難度が高すぎるものや,
設問文の解釈次第で複数パターンの正答が出てしまうものに対して,これらの対応がなされます.
118回では採点除外等の問題はありませんでした.
118回国試分析,前編はここで終わりです.
中編では不合格者についての細かい分析を行っていきます.