イヤーノート2025 内科・外科編
【いいんちょーの僕です。】第17回 国試の結果とご挨拶 (付録:Post-CC OSCE対策のコツ)
こんにちは!
先日,晴れて卒業式を終えましたI.O.です.
いやー,あらためて6年間あっというまでした!
そして第116回医師国家試験,本当におつかれさまでした.
気になる結果はといいますと…
私は何とか合格していました〜!よかった(涙)
合格された皆さん,本当におめでとうございます.
あらためてあの試験を振り返って思うことは…
「もう二度と経験したくない」
ただこれに尽きるという,とんでもなく過酷な二日間でした(涙)
前日の夜に“眠れない”という状態を初めて経験し,当日は緊張のあまり鉛筆と一緒にApple Pencilを机に並べてしまったり(友人に指摘され気づく),試験中は脳内で音楽が鳴り止まなかったりと,とにかく想定外な出来事の連続でした….終わった直後の気分は,開放感というより放心状態に近かったと思います.
「9割が合格する」という,それまでポジティブな意味で受け止めていたはずの言葉が,残り1ヶ月を切った辺りからものすごい重圧としてのしかかってくるとは….あの異様な感覚はいつまでも忘れないことでしょう.とても貴重な経験となりました!
…と,国試に合格した安堵と喜びに浸っているのも束の間.4月がすぐそこまで迫ってきています.
これから全国津々浦々,皆さん一人ひとりが選んだ病院で研修医としての生活が始まるんですね.
私のコラムはこれで最後となりますが,これを読んで頂いている皆さんがこの先も健康で,医師として幸せな人生を歩んでいくことを陰ながら心から願っています.
おたがいにがんばりましょうね!
これまでお付き合い頂き,本当にありがとうございました.
付録:Post-CC OSCE対策のコツ
付録として,昨年Post-CC OSCEを経験して「これに取り組んでみたら安心感があったな」という大まかな方針があったので,新6年生の方に向けて共有したいと思います.なお,Post-CC OSCEとはどのような試験なのかということについては第10回のコラムにまとめてありますので,よかったら目を通してみてください.
(※以下の内容は“試験対策”に重点を置いているため,必ずしも実臨床に沿わない考え方や表現が出てくると思います.本文は“Post-CC OSCEに受かるきっかけをつかみたい人”を対象としていますので,そのことを念頭にお読みください.重ねて,あくまで個人の意見として参考にしてもらえると嬉しいです.)
さて!いきなり結論ですが, 自分が取り組んでよかったと思う“安心セット”はこちらになります.
この“安心セット”について,説明していきたいと思います.
鑑別診断には優先順位が存在する
Post-CC OSCEの準備をしていった中での一番の学びは,「鑑別診断には優先順位が存在する」というものでした.つまり,疾患には“命に関わる重大な疾患(=見逃してはならない疾患)”と“そうではない疾患”の大きく2種類があって,それらを分けて考えると鑑別診断を円滑に進めることができるということです.
たとえば“発熱”という症候の患者さんがやってきた場合,考えられる疾患は様々ですが,中でも“髄膜炎”という疾患は“命に関わる重大な疾患”のひとつに当たり,一方で“かぜ症候群”は“そうではない疾患”に分けることができます.他にも,たとえば“頭痛”という症候の場合でいうと“くも膜下出血”は前者に該当しますし,“緊張性頭痛”などは後者に該当するとされています.これらの分類は,メディックメディア“鑑別! 1st impression”などに詳しく記載されていますので確認してみてください.
疾患は大きく2種類に分類されている ( 図は“鑑別! 1st impression”より)
「命に関わる重大な疾患(=見逃してはならない疾患)」とは文字通り,見逃した場合には命を亡くす危険のある疾患です.ということは,少しでもそれらの疾患を疑った場合,医療面接や身体診察を通じてそれらの疾患を除外するための情報を優先的に得ていかなければいけません.
仮に,救急外来で発熱の患者さんがやってきたとします.医師にとって,①この患者さんが“髄膜炎である可能性”を除外することは,②この患者さんが”かぜ症候群である可能性”を探ることよりも優先度が高いことは,おわかり頂けると思います.
「見逃してはならない疾患」を活用する
さて,以上のことをふまえてPost-CC OSCEの対策を考えていきます.もし,鑑別診断に優先順位をつけずPost-CC OSCEに臨んだ場合,つまり漠然と疾患を当てにいくような感覚で医療面接を始めてしまうと,どのようなことが起こるでしょうか.自分や周囲の実体験より,以下のような状況に陥る人が数多く発生すると思われます.
百聞は一見に如かずということで,上の内容については実際にロールプレイをしてみると共感しやすいのではと思いますので(苦笑),ぜひ一度友達とトライしてみてもらえたらと思います.
そして次は,冒頭の“Post-CC OSCEの安心セット”をインプットして鑑別診断に優先順位をつけた場合,どのような流れで試験を進めていくことになるのかについて書いてみたいと思います.
“安心セット”をおさえておくことによって生まれる一番のメリットは,「試験中のアドリブ要素が大きく減る」ということにあります.鑑別診断と聞くと,「患者さんの受け答えに応じてこちらもリアルタイムで質問を変えていく必要がある」というようなアドリブ要素の大きい印象が強く,そのことがPost-CC OSCEを難易度の高い試験と感じさせているように思います.
その点,「XXという症候の患者さんがやってきたら,まず疾患(A)と(B)を除外するんだ」ということだけを予めはっきりさせておくだけで,医療面接での質問から身体診察での手技,上級医へ報告する内容まで,その多くの部分についてあらかじめ準備しておくことができるようになります.またこの対策をしておくことで心にゆとりが生まれ,鑑別疾患(C)が考えやすくなるという効果もあります.実際,私は疾患(A)と(B)を“試験でパニックにならないための保険”としておさえておき,その上で全力で鑑別疾患(C)を挙げにいくということをしていました.
まずPost-CC OSCEで求められる基準をおさえる
もちろん実臨床においては,それぞれの症候で“見逃してはならない疾患”が2つだけ,ということはきっとないと思います.たとえば上図で紹介した“鑑別! 1st impression”の中にも,多くの疾患が記載されていましたよね.今回,私がなぜ2つという数を設定したかといえば,それは指導医より「Post-CC OSCEでは鑑別疾患を最低2つ,できたら3つは挙げられるようにしなさい」という助言があったからです.まず2つだけおさえておけば,すくなくとも試験中に黙り込んでしまう事態にはならないだろうと思いました.ですので,あくまでこの数はPost-CC OSCEで求められている基準だということを念頭においてもらえたらと思います.
また,今回おすすめしている流れ(例: 発熱の患者さん⇨髄膜炎を除外しよう)について,「この症例から髄膜炎を疑うのはちょっとナンセンスだろう」といったケースもあると思います.つまり,実臨床においては「1つの症候ごとに疾患を結び付けておくということはなく,他の症状など複数の患者情報と組み合わせることで鑑別疾患が挙がってくる」というのが自然だと思います.
しかしこちらについても,あくまでPost-CC OSCEという試験にかぎっていえば,「1つの症候に2つの鑑別疾患を用意しておく」ということを大まかな方針として持つことに大きな問題はないと思います.なぜかというと,その症候から想起される疾患としてそれが明らかに非合理的なものでないかぎり,「見逃してしまえば命に関わるため,万が一のために疑い除外した」という考え方は理解可能なものであり,そこで挙げた疾患名が大きな減点対象となることはないだろうと思うからです(この点,2つの鑑別疾患に何を選ぶのかということには少し注意が必要かもしれません).この試験では,すくなくない数の人がそれ以前の問題,つまり“疾患が浮かばない,質問が出てこない,身体診察ができない”といった壁にぶつかるので,そこをクリアしているということは合格に向けて大切なアドバンテージに繋がると思います.
以上,Post-CC OSCEという試験について,無事に終えるための対策として自身が実践したことをご紹介しました.よかったら参考にしてみてくださいね.
ここまでお読みいただき,ありがとうございました!
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■筆者プロフィール
I.O.:関東の医学生.1回目の大学で法学部を卒業後、会社員や音楽活動などを経て医学部へ入学.日本循環器学会関東甲信越支部Student Award最優秀賞.心電図検定3級.ディープラーニングG検定2020#1.
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–いいんちょーの僕です。目次–
第17回 国試の結果とご挨拶 (付録:Post-CC OSCE対策のコツ)
第11回 “Post-CC OSCE”という,事件.[後編]