第118回医師国家試験問題解説
医師国家試験 基本情報
- 日程は2日間,問題は3形式(各論・総論・必修)で400問出題
- 必修は絶対基準,各論・総論は相対基準で採点される
- 合格率は9割.残りの1割に入らないための勉強をすることが大切
国試のこと,知っていますか?
医師国家試験について,皆さんどれくらいご存知ですか…?
どんな試験なのか知らないままでは目標を立てづらく,モチベーションを保つのも難しくなってしまいます.
国試対策を始める前にぜひ一度,試験の概要を確認しておきましょう.
合格率は?
合格率は例年90%前後です.
医師国家試験は毎年10,000人前後が受験し,約90%が合格する試験です.
この【合格率90%】という数字は,試験の難易度や受験生のレベルを示す数字ではありません.
皆さんが意識すべきこと,それは
【不合格率10%】の試験
=「他の人が解けない問題を解けた人」が合格する試験ではなく,「多くの人が解けた問題を確実に解いた人」が合格する試験
ということです.
そのため,他の受験生の動向から大きく外れた勉強をしない,「不合格とならない勉強」を心がける必要があります.
問題数は?
問題数は 1日200問で合計400問です.
直近国試の時間割は以下の通りです.
118回国試の時間割
近年の国家試験では,全400問が2日間合計6コマに分けて出題されており,
114回以降は,2日間で400問を均等に分配する形で出題されています.
しかし,実際皆さんが受験する年の時間割がどうなっているかは受験期直前(1月末ころ)に届く受験票で確認することになります.
問題形式は?
問題形式は問題の内容,構造,正答肢数など,いろいろな分け方があります.
問題形式を理解するためには,先ほどの時間割にある「分類」とは何か知っておく必要があります.
国試の問題はその内容によって,
疾患ごとの知識を問う「各論」
研修医になるための最低限の知識を問う「必修」
疾患を跨いで横断的に問う「総論」
の3つに大別でき,1日に各論・必修・総論の試験が1コマずつ実施されます.
どの分類の問題も,その構造によって
特定のテーマを明示され,その知識が問われる一般問題
「○歳の□性.」などの症例提示で始まる臨床問題
の2つに分けることができます.
一般問題
臨床問題
※臨床問題には上記の例のような1症例に1設問出題されるもの以外に,1症例に複数の設問が設けられる場合があります.
これを「臨床長文問題」と呼び,必修問題では2連問,総論問題では3連問が出題されます.
また,医師国試は選択肢・正答のタイプによって,
五者択一のA問題
五者択二,択三のX2,X3問題
選択肢の数が6つ以上ある多肢選択問題
数字で解答する計算問題
に分類されます.
合格基準は?
医師国家試験では,3つの基準で合否が決まります.
医師国家試験の合格基準は,下記の通り3つあります.
①必修問題
必修問題は2日間で一般問題50問,臨床問題50問の100問出題されます.
基本的に1問1点の医師国家試験ですが,ここで注意すべきなのは,
例外的に必修臨床問題は1問3点で採点されるということです.
必修一般1点×50問+必修臨床3点×50問の計200点のうち,160点以上(=80%以上)とれれば,①必修問題の基準はクリアです.
必修問題は医師として必ず知っておくべき知識を問うブロックであるため,ボーダーが80%に設定されています.
以下の例のような,臨床医にとっての常識や,研修医になってすぐに求められる知識といった,
普段は勉強しないテーマからの出題に苦しめられる受験生が多いです.
そのため,ボーダーの点数だけをみて「簡単な問題群なんだろう」と高をくくらず,十分な対策を打つことが重要です.
②一般・臨床問題
必修問題以外(=各論・総論)の一般問題と臨床問題を1問1点で採点し,その合計点で評価する基準です.
先ほどの①必修問題の基準と異なり,毎年ボーダーが変動するのが特徴で,近年およそ75%前後を推移しています.
③禁忌肢
患者の死や不可逆的な臓器の機能廃絶につながる選択肢や,医師として遵守すべき法律に抵触する選択肢が禁忌肢となります.
4つ(個数は年によって異なる)選んだだけで,他の問題がすべて正解でも不合格になるという強力な選択肢です.
内容的にそうそう選んでしまうことはありませんが,油断は禁物です.
治療や検査におけるものだけでなく,医師法違反など,法規に関するものも禁忌肢になりえますので,まんべんなくチェックしておく必要があります.
また,「禁忌」と思われる内容の選択肢について,採点側がそれを「禁忌肢」に設定したかどうかは公表されません.
「禁忌肢を選んだとは思えないのに,国試本番の成績表を見ると禁忌肢の欄が【0】ではなかった」という学生さんもいます.
対策が不十分な場合には,予想だにしない禁忌肢を選んでしまう可能性もありますので,下記の記事などを利用しながら,十分な禁忌肢対策をしていきましょう.
不適切問題・採点除外問題とは?
医師国試では例年,悪問や難問がどうしても数問出題されてしまいます.
例えば「答えを1つ選ぶ問題なのに,答えが1つに決まらない問題」は,
不適切問題として「aのみが正解であったが,bを選んだものも正解とする」「正解がないため,採点対象から除外する」といった対応がなされます.
また,「成立はしているが,必修問題とするには難しすぎる問題」の場合は,
「正解した受験生はその問題を採点対象に含め,不正解の受験生についてはその問題を採点対象から除外する」などのパターンもあり,対応は様々です.
ただ,どの問題が不適切問題・採点除外問題になるか,当然試験本番中に受験生が知ることはありません.合格発表時に厚生労働省のホームページに掲載される情報を見て初めて,どの問題が不適切問題・採点除外だったか,また何故その問題が採点除外になったかを知ることができます.
※118回医師国試では不適切問題・採点除外問題はありませんでした.
出題される分野は?
医師国試では,基礎医学・臨床医学・社会医学など,医学関連科目のすべてが出題範囲となります.
しかし,全ての分野から均等に出題されるわけではありません.
近年の国家試験で特に出題割合が高かったのは,
消化器,循環器,内分泌代謝,呼吸器,神経,小児科
産科,公衆衛生,救急,感染症,精神科,医学総論
の12科目です.
このうち,メジャー科目(前半7つ)はなるべく早く対策することをオススメしています.
また,医師国試には「出題基準」(別称「ガイドライン」)というものがあります.
これは厚生労働省が概ね4年ごとに医師国家試験に出題する範囲(分野)と疾患をリスト化しているものです.
現在は,昨年発表された「令和6年度版医師国家試験出題基準(クリックで厚生労働省のページにジャンプします)」が適用されていますので,ぜひご確認ください.
試験実施日は?
医師国家試験は例年,2月の上〜中旬の土日2日間で行われます.
(最新の118回国試は2024年2月3日(土),4日(日)に実施されました)
真冬ということで,新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症がより問題となる時期です.
できる限り対策をして,万全の体調で臨めるようにしておきたいところですね.
また,国試対策に充てられる時間を国試実施日から計算すると,勉強のスケジュールを立てやすくなります.
早めに対策を始めて,直前で慌てることがないようにしましょう!
受験会場は?
受験会場は,全国12の都道府県(北海道,宮城県,東京都,新潟県,愛知県,石川県,大阪府,広島県,香川県,福岡県,熊本県,沖縄県)に設けられます.
基本的に大学ごとに受験会場が設定されるため,大学の先輩に「受験会場がどこだったか」「会場で困ったことはなかったか」など,聞いておくとよいでしょう.
まとめ
繰り返しになりますが,医師国試は「他の人が解けない問題を解けた人」が受かる試験ではなく,「他の人が解けた問題を間違えてしまった人」が落ちる試験です.
決して難しいことではないので,他の受験生の動向から大きく外れた勉強をしないように周りを常に意識して,平均的な母集団から置いていかれないようにしましょう.