イヤーノート2025(電子版)
[第112回から適用]平成30年版医師国家試験出題基準 特集
第1回:出題範囲・概要のおさらい
こんにちは,編集Aです.
本日8月15日は終戦の日ですが,
先日実施されたある世論調査で,18歳・19歳 500人のうちの14%が
日本が終戦を迎えた日を「知らない」と回答したそうです.
皆さんはどうでしょうか.
さて,本日から医師国家試験出題基準のお話をします.
昨年も連載をしましたが,追加情報も交えてお話していきますので,お付き合い下さい.
まず今日は,重要な点をおさらいしましょう.
◆112回国試から適用『平成30年版医師国家試験出題基準』◆
医師国試出題基準(ガイドラインとも呼ばれます)は,概ね4年毎に改定されてきましたが,
今回は5年ぶりの改定となりました.
今の6年生が受験する,次の「112回」(2018年2月実施予定)から適用されます.
既報のとおり,112回国試からは
一般問題の出題数が100問減る(全体の出題数が400問になる)ことが確定しています.
出題基準の改定も,このタイミングに合わせて行われたものと思われます.
[参考]
医道審議会医師分科会の審議結果について|厚生労働省
※受験予定の方へ重要なお知らせ|第112回医師国家試験における変更点について|厚生労働省
◆気になるのは「ブループリント」~出題範囲は変わるのか?その対策は?~◆
さて,ここで気になるのは
「どういう種類の一般問題が減らされるのか」ということですよね.
出題基準には,各分野の出題割合を示した
「ブループリント」というものが収載されています(平成30年版のブループリントはこちら).
このブループリントは,「一般問題」「臨床問題」という区分けではなく
「必修」「総論」「各論」という切り口で作られています.
各区分の問題数までは明確に公表されていないため,はっきりしたことは言えないのですが,
示されているブループリント上の数字,
そしてこれまでの出題傾向,コアカリ改訂の動向などから総合的に判断すると,
確定とは言えないものの,下記のようなことが言えます.
【1】一般問題が100問減らされるが,出題分野に大きな変化はない
ブループリントで示されている「項目」自体に,大きな構成変更はありません.
いわゆる解剖の基礎知識にあたると考えられる,医学総論III「人体の正常構造と機能」は
出題数は数問ほど減りそうですが,
まったく出題されないというわけではないようです.
出題割合の増減はあっても,出題範囲自体には大きな変更がないため,
112回を受験する皆さんは,これまでと同様の範囲について
過去問対策を行う必要があります.
【2】総論(解剖,生理,検査,治療)+各論,まんべんなく100問減らされる?
減らされる一般問題の内訳ですが,
ブループリントの数字上,公衆衛生以外の分野から
まんべんなく問題数が減らされています(※メディックメディア調べ).
解剖だけでなく,検査や治療,そして各論的な知識(病態,症状,診断,治療など)から
少しずつ出題数が減らされそうです.
特に基礎的な知識はCBTで問われやすいため,
「CBTで基礎分野をしっかりやるのだから,医師国試は臨床実習の成果を問うものに絞る」
ということが予想されます.
すでにここ最近の一般問題では,
基礎的知識を臨床に則して問うような問題
(例えば単に解剖の知識を聞くのではなく,手術の術式などにあわせた問題)が
増えている印象です.
—【例:110D11】—
肝左葉切除で肝切離面に露出する静脈はどれか.
a 右肝静脈
b 中肝静脈
c 左肝静脈
d 下大静脈
e 短肝静脈
[解説]肝臓には解剖学的葉区分と機能的葉区分がありますが,外科手術における左葉は,機能的葉区分における左葉を指します.
中肝静脈は肝右葉と肝左葉の境界部を走行するため,肝左葉切除や肝右葉切除では中肝静脈が肝切離面に露出します.
[正解]b(QBオンラインにログインしていればこちらから飛べます)
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今後は特に,臨床を意識しながら一般問題にのぞむ
(臨床症状や治療を理解するために必要な病態の知識,外科的手術で使う解剖の知識,など)
ことがますます重要になってきます.
◆新しい疾患・用語が多数登場◆
出題内容に大きな変化はないと言いましたが,
社会的背景をふまえた用語や,各科で注目されている疾患など,
細かなレベルでは,多数の言葉が追加されています.
その“新ワード”の中から,昨年度は19個をピックアップして紹介しましたので(以下にリンクを貼ります),
改めて確認しておいてください(余裕のある今のうちに,教科書などで見ておきましょう!).
そして今年もいくつか,追加で用語を紹介していきます.
次回以降,お楽しみに!
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■新ワード紹介(1)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)
■新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)
■新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
■新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
■老年医学にかかわる新ワード4つ
■新ワード紹介(5)サルコペニア
■新ワード紹介(6)運動器不安定症
■新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
■新ワード紹介(8)フレイル
■新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
■新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
■新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
■新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
■新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
■新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
■新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
■新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
■新ワード紹介(17)システマティックレビュー
■新ワード紹介(18)産科医療補償制度
■新ワード紹介(19)医療事故調査制度
■新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
■最終回:まとめ
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(編集部A)