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【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)

こんにちは,編集部F(公衆衛生担当)です.連載でお送りしている,「平成30年版医師国家試験出題基準」の新ワード紹介.
公衆衛生のトップバッターは,「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」です.

持続可能な開発のための2030アジェンダ(Sustainable Development Goals:SDGs)は,国連ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)の後継として2015年9月の国連総会で採択された,2016年から2030年までの国際目標です.

医師国家試験出題基準においては,今回の改定によって,MDGsと入れ替わる形でSDGsが加わりました.
MDGsはすでに期間が終了していますが,MDGsについて理解しておくと,SDGsについての理解も深まります
SDGsについて学ぶ前に,基礎知識としてMDGsについても勉強しておきましょう!

目次

国連ミレニアム開発目標(MDGs)

「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」

112〜116回国試での出題は?

まとめと次回予告

国連ミレニアム開発目標(MDGs)

MDGsは,世界の最貧層のニーズを満たすことを目的として,2000年の国連ミレニアムサミットにおいて採択されました.以下の8分野の開発目標について,2015年までに達成することが各国に求められました.

■ 8つの開発目標(MDGs)
(1)極度の貧困と飢餓の撲滅
(2)普遍的な初等教育の達成
(3)ジェンダー平等の推進と女性の地位向上
(4)乳幼児死亡率の削減
(5)妊産婦の健康状態の改善
(6)HIV/エイズ,マラリア,その他の疾病のまん延防止
(7)環境の持続可能性の確保
(8)開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

国試での過去の出題も見てみましょう.

108G4
国連ミレニアム開発目標〈MDG〉に含まれないのはどれか.
a 初等教育の普及
b 高度医療の推進
c 極度の貧困の撲滅
d 乳幼児死亡率の削減
e HIV/エイズの蔓延防止

aとc~eは8つの開発目標に含まれています.正解はbです.

2015年7月には,MDGsの最終評価が公表されました.極度の貧困にある人々の割合が1990年の47%から2015年は14%に減少し,初等教育の就学率が,2000年の83%から2015年は91%に向上するなど,MDGsが一定の成果を挙げたことが確認されました.しかし,5歳未満(乳幼児)死亡率妊産婦死亡率については,改善がみられたものの,目標水準には及びませんでした.

また,女性の地位向上は限定的で,ジェンダー間の格差も残っています.
さらに,二酸化炭素排出に伴う気候変動が開発を妨げている,といった新たな課題も指摘されました.

「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」

こうしたMDGsで残された課題に加え,新たに顕在化した課題に対応するため,
17のゴールからなる持続可能な開発目標が掲げられました.

■ SDGsの17のゴール
(1)貧困をなくす (2)飢餓をなくす
(3)健康と福祉 (4)質の高い教育
(5)ジェンダー平等 (6)きれいな水と衛生
(7)誰もが使えるクリーンエネルギー (8)人間らしい仕事と経済成長
(9)産業,技術革新,社会基盤 (10)格差の是正
(11)持続可能な都市とコミュニティづくり (12)責任ある生産と消費
(13)気候変動への緊急対応 (14)海洋資源の保全
(15)陸上資源の保全 (16)平和,法の正義,有効な制度
(17)目標達成に向けたパートナーシップ

前述の通り,108回国試でMDGsが出題された際は8つの開発目標が問われており,SDGsが出題される場合も,この17のゴールについて問われる可能性が高いと思われます.

でも,17個もあるゴールを覚えるのは大変ですよね.
重要なのは,SDGsが何を目的としているのか理解しておくことです.

108回でのMDGsの出題でも,8つの目標をしっかり覚えていなくても,MDGsの目的を理解していれば,bの「高度医療の推進」がMDGsの意図にそぐわないことに気づくと思います.“貧困を撲滅し,持続可能な世界を実現する”というSDGsの目的を覚えておきましょう.


また,MDGsは開発途上国に重きを置いていましたが,SDGsは先進国を含む全ての国に適用される普遍性が,最大の特徴とされています.SDGsでは,MDGsで目立っていた保健医療に関する目標だけでなく,環境や格差拡大など,先進国も取り組むべき目標も多くピックアップされていることに,この特徴が現れています.キーワードの羅列に見える17のゴールも,こうした観点をもって見てみると,イメージがしやすくなるのではないでしょうか.

※SDGsや17のゴールについてより詳しく知りたい方は,以下の外務省や国連開発計画のウェブサイトもあわせてご覧ください.

外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html
国連開発計画
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg/post-2015-development-goals.html

112〜116回国試での出題は?

112〜115回国試での出題はありませんでしたが,116回国試では誤答選択肢として「SDGs」が出題されました.

116F11

まとめと次回予告

少し長くなりましたが,持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)に関しては,以下の2つは最低限おさえておいてください!

(1)目的は貧困を撲滅し,持続可能な世界を実現すること
(2)開発途上国だけでなく,先進国も含めた全ての国が取り組む

さて,今回の出題基準改定では,SDGsの下位項目として,「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」も加わりました.国際保健分野において現在,大きな注目を集めている概念です.
公衆衛生の第2回では,このUHCを取り上げたいと思います!

(編集部F)

第1回:適用はいつから?
第2回:何が変わったのか~問題数100問減の影響は?~
新ワード紹介(1)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)
新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)
新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
老年医学にかかわる新ワード4つ
新ワード紹介(5)サルコペニア
新ワード紹介(6)運動器不安定症
新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
新ワード紹介(8)フレイル
新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
新ワード紹介(17)システマティックレビュー
新ワード紹介(18)産科医療補償制度
新ワード紹介(19)医療事故調査制度
新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
新ワード紹介(21)好酸球性食道炎(EoE)
新ワード紹介(22)ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)
新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)
新ワード紹介(24)高IgM症候群
新ワード紹介(25)重症先天性好中球減少症(SCN)
新ワード紹介(26)家族性地中海熱(自己炎症性疾患)
新ワード紹介(27)進行性多巣性白質脳症(PML)
新ワード紹介(28)ダメージコントロール(DCS)
新ワード紹介(29)ロービジョンケア

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