イヤーノート2025 内科・外科編
【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
こんにちは.編集部Kです.「平成30年版医師国家試験出題基準」(適用は112回国試から)に新たに追加された用語をピックアップして解説していきます.
今回は医学各論Ⅻ「感染性疾患」の1-A「ウイルスによる感染症」の中から「ジカウイルス感染症」を取り上げます.
目次
ジカウイルス感染症(通称:ジカ熱)って?
2015年にブラジルを含む中南米で流行し,2016年夏に迫るリオオリンピックの開催も重なったことで,日本の報道でも大きく取り上げられ,一般的な認知度も向上しました.
ポイントは以下の3つです.
蚊による媒介 ・症状は軽度 ・小頭症と関連
それでは具体的に「ジカウイルス感染症」について見ていきましょう.
ジカウイルス感染症はカによって媒介されるウイルス性疾患で,2014年に国内流行したデング熱と同じく,ネッタイシマカや日本にも生息しているヒトスジシマカにより媒介されます.(デング熱を紹介した過去の記事はこちら)
感染しても発症しない「不顕性感染」の確率は約80%とされており,発症するとしても,数日の潜伏期間を経た後,発熱,発疹,関節炎,結膜充血,筋肉痛,頭痛などのデング熱と類似した臨床症状を呈し,それらの症状はデング熱よりも軽症で,1週間ほどで自然軽快していきます.
では,なぜこんなにも世界で注目を集め,WHOが「緊急事態宣言(2016年2月〜同年11月)」を出すまでになっていたのか.それは,妊婦のジカウイルス感染により,胎児の「小頭症などの先天異常」の発生リスクが上昇するからです.
ジカウイルスにより,胎児の脳細胞の成長が妨げられ,小頭症や神経異常などを引き起こしていると考えられており,ジカウイルス感染により,小頭症の発生リスクは50倍になるという研究もでています.
日本国内にも媒介蚊が生息するため,今後国内流行する可能性はあり,発生動向を充分に注意していく必要がありますが,ジカウイルス感染症に対する唯一かつ絶対的な予防策は蚊に刺されないことです.
ウイルスを媒介することのできる蚊は日中の屋外にて活発に活動しているため,外に出るときは長袖を着たり,虫よけ対策をするなどして感染防止をすることが重要ですね.
今後,ジカウイルス感染症が国試に出題されるとしたら,やはり小頭症の発生とからめた公衆衛生的な視点で出題されることが予想されます.
「蚊による媒介」,「症状は軽度」,「小頭症と関連」の3つのポイントを押さえ,しっかりと理解しておきましょう.
112〜116回での出題状況は?
115回国試で英語問題が出題されています!
感染症は流行がおさまると忘れられがちなので,この機会にチェックしておきたいですね.
(編集部K)
■第1回:適用はいつから?
■第2回:何が変わったのか~問題数100問減の影響は?~
■新ワード紹介(1)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)
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■新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
■新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
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■新ワード紹介(5)サルコペニア
■新ワード紹介(6)運動器不安定症
■新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
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■新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
■新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
■新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
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■新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
■新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
■新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
■新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
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■新ワード紹介(19)医療事故調査制度
■新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
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■新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)
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■新ワード紹介(25)重症先天性好中球減少症(SCN)
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■新ワード紹介(28)ダメージコントロール(DCS)
■新ワード紹介(29)ロービジョンケア