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[5・6年生向け]平成30年版医師国家試験出題基準 特集
第3回:新ワード紹介(22)ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)

こんにちは,編集部Sです.

平成30年版医師国家試験出題基準」(厚労省のページに移動します)(適用は112回国試から)に新たに加わった用語をピックアップしてご紹介しています.

 

今日は,内分泌・代謝・栄養・乳腺疾患領域に新たに加わった
ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)」です.
医学各論「Cushing症候群」の備考というかたちで追加されています.

 

◆ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成
(AIMAH:ACTH-independent macronodular adrenal hyperplasia)

 

内分泌領域の「Cushing症候群」の特殊病態ですが,
遺伝子異常との関連が近年明らかにされたことから,にわかに注目されるようになりました.

 

副腎原発「Cushing症候群」の一病型として位置づけられ,
診断や治療に難渋することの多い疾患です.
AIMAHの代わりにBMAH(bilateral macronodular adrenal hyperplasia)とよばれることもあります.

 

一般的に,下垂体性Cushing症候群(ACTH産生下垂体腺腫)や異所性ACTH症候群はACTHの過剰分泌により両側副腎皮質のびまん性肥大を認めます.
一方副腎性Cushing症候群では,片側副腎に単発性のコルチゾール産生腺腫を認めるのが通例です.

 

しかし,AIMAHでは左右の副腎に結節が複数発生するため,
画像診断で多発性大結節を伴う両側副腎の著明な腫大を示すのが特徴です.

 

(写真提供:柴田 洋孝(大分大学医学部内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座 教授))

 

それでは,どうして両側の副腎に多発性の結節が生じるのでしょうか.

最近の研究により,腫瘍抑制遺伝子の1つである
armadillo repeat containing 5(ARMC5)の遺伝子に不活化変異が見出されました.
もともと親由来の一方の遺伝子に変異を有するところに,
生後の発生の過程でもう一方の遺伝子の体細胞変異が新たに加わると,
ARMC5の腫瘍抑制機能が失われ,副腎皮質細胞が多発性に腫瘍化し,
多数の結節を形成すると考えられます.
腫瘍は通常良性です.

 

この疾患では,コルチゾールの自律的な産生は比較的弱く,
典型的なCushing徴候を呈するよりも,
無症状の例(実際は多くの場合subclinical Cushing症候群の病態を呈する)が多いのが特徴です.

 

また興味深いことに,結節の一部は種々のホルモン受容体(GIP,バゾプレシン,βアドレナリン,LH,hCG受容体など)を異所性に発現することがあり,
その場合,これらのホルモン刺激によって奇異性のコルチゾール分泌が生じることが知られています.

 

このAIMAHという病態は,
鑑別診断・治療の面で,いくつかの難しい判断を迫られることがあります.

 

まず,類似した両側副腎皮質過形成を呈する病態として,
原発性色素性結節性副腎疾患PPNAD:primary pigmented nodular adrenal disease)があります.

この疾患はプロテインキナーゼAの調節サブユニット(PRKAR1A)遺伝子変異で発症し,
しばしばCarney複合(皮膚色素沈着や心粘液腫など)を合併します.
副腎の結節はAIMAHと比較して小型のため,
画像診断で認められる副腎の腫大は軽微ですが,
臨床的にはAIMAHよりCushing徴候を呈することが多いと言われています.

 

またAIMAHでは結節が片側の副腎に偏って生じることがあるため,
画像診断で片側腫大,左右差の著明な腫大として認識され,
この場合は通常の副腎性Cushing症候群で見られる片側性・孤発性の
副腎コルチゾール産生腺腫との鑑別に難渋することが少なくありません.

 

一方,副腎コルチゾール産生腺腫がまれに両側性に発症することもあり,
この場合もAIMAHとの鑑別が難しくなります.

 

なお,孤発性の副腎コルチゾール産生腺腫では,
最近の研究で,プロテインキナーゼAの触媒サブユニット(PRKACA)遺伝子の
体細胞変異が原因であることが明らかにされています.

 

 

最後に治療です.
通常の片側性・孤発性の副腎コルチゾール産生腺腫は,外科的摘除で完治します(もちろん,術後の相当期間,コルチゾールの補充療法は必要ですが).

ところがAIMAHではコルチゾールを産生する結節が両側に多数存在するため,
1つの結節のみ摘除するだけでは治療になりません.

現実には,コルチゾール過剰産生の程度や腫大副腎の左右差,
合併する代謝異常の程度を考慮しつつ,手術が必要と判断された場合,
個々の症例ごとに,術式(両側副腎全摘,一側全摘・対側亜全摘,または一側全摘)を選択することになります.

 

以上のように,副腎コルチゾール産生腺腫,AIMAH,PPNADの病態把握や鑑別診断は非常に複雑です.
下の表を参考に,頭の中を整理しておくことが重要ですね.

 

※監修:岩﨑 泰正(高知大学臨床医学部門 教授)

(編集部S)

 

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