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[5・6年生向け]平成30年版医師国家試験出題基準 特集
第4回:新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)

編集Aです.
平成30年版医師国家試験出題基準」(適用は112回国試から)に
新たに加わった用語をピックアップしてご紹介しているこの企画,
しばらくご無沙汰してしまいましたが,今日は
消化器領域各論VI「消化器・腹壁・腹膜疾患」)に加わった「被包化膵臓壊死〈WON〉」について紹介します.

 

◆被包化(膵臓)壊死(WON:walled-off necrosis)

「急性膵炎」の備考欄に追記された用語です.
この用語の理解のためには,まず,2012年に策定された「改訂Atlanta分類」について
総合的に理解するところから始めましょう.

 

「Atlanta分類」とは,急性膵炎の合併症などに関する国際的な定義・分類です.
初版は1992年.
アメリカのアトランタで行われた国際シンポジウムで策定されたので,
このように呼ばれています.

 

初版では,膵炎に伴う局所合併症は
「感染性膵壊死」と「膵膿瘍」の2つに大別されていました.
貯留した膿の内部に壊死物を伴うものを「感染性膵壊死」,伴わないものを「膵膿瘍」と呼び,
それぞれ異なる治療方針がとられてきました.
しかし実際,現場では両者の区別は非常に困難なことが多く,
「本当にこの分け方でよいのか」,という議論が活発になっていきました.

 

そこで,2012年にAtlanta分類が改訂され,
急性膵炎に伴う合併症の分類の定義が以下のように改められました.

 

●膵実質および膵周囲の貯留を「液体貯留」と「壊死性貯留」に区分した
●このうち壊死性貯留について,「発症後4週以内」(=急性壊死性貯留(ANC))「4週以降」(=被包化壊死(WON))に区分した
●膵実質壊死だけでなく,膵周囲壊死のみの場合も「壊死性膵炎」と定義した
●「感染性膵壊死」は,ANCまたはWONに,感染(細菌性・真菌性)が加わったものと改めた

 

 

文章にするとややこしいので,こちらの図版で理解しましょう.

(「病気がみえるvol.1 消化器」第5版,p.409より)

 

 

合併症の定義に,経時的な概念が加えられています.
時間の経過につれて(壊死巣が)固体から液体へと変化し,
液状化した壊死物の周囲が被膜で覆われるようになる,という考え方です.
感染の有無はそれぞれの概念の中に含まれています.

 

言葉の面では,
まず「膵膿瘍」という用語がなくなりました
また,新しく「被包化壊死(WON:walled-off necrosis)」という用語が登場しました.
「壊死組織と液状成分が混在し,周囲が線維性に被包化された状態」と定義されます.

 

これまで膵膿瘍とされてきた病態の多くは「膵仮性嚢胞(pancreatic psuedocyst:PPC)」に,
そしてこれまでの定義上「(膵)仮性嚢胞」とされていた病態の多くは「WON」に含まれることになると考えられています.
すでに新しい分類が臨床現場でも定着しているので,古い分類を使わないように気をつけましょう.

 

「被包化」の所見は,造影CT検査で確認されます.
急性壊死性貯留(ANC)の段階では被包化の所見は認められませんが,
WONに至っているケースでは,いびつな多房性・囊胞様の構造物(被膜に包まれていることを示す)が認められます.
特に感染性のWONの場合は,早急にドレナージ(経乳頭的・経消化管的・経皮的など)を行い
壊死物質を除去する必要があります.

 

「イヤーノート2018」(B-91ページ)には画像は掲載していませんが,
「病気がみえるvol.1 消化器」(第5版)をお持ちの方は409ページを,
さらに,各病態におけるCT画像を一度は(インターネットでもよいので)
ながめておくとよいと思います.[検索結果の一例はこちら

 

 

 

加えて,この改訂Atlanta分類では
重症急性膵炎の確定診断フローについても修正されています.
これに準じて,日本版のガイドラインも2015年に改訂されました(「急性膵炎診療ガイドライン2015」).
医師国試レベルでは,ガイドラインの内容すべてを理解する必要はもちろんありませんが,
国試ではもともと急性膵炎の問題は頻出ですし,
ここ最近も,急性膵炎の症例(特に重症度診断を伴うもの)の出題は多いです.
[例:111I79 110D52 107D35

 

頻出の「重症度診断」はもちろん,
今後は合併症や,重症例に関する新しい概念,その治療方針
(初期治療,重症例に対する集中治療,合併症に対する治療)を含んだ
積極的な出題が予想されます.

 

6年生の皆さんはまだ余裕のある今のうちに,
実習中の4・5年生は,膵炎の患者さんを受け持つ際はもちろん,消化器講座をローテートする際に
時間を見つけてガイドラインを一読しておくと,理解が深まるかと思います.

 

 

 

 

まだ連載は続きます.
次回は,免疫分野に加わった疾患を紹介する予定です.

 

(編集部A)