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【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(28)ダメージコントロール(DCS)

こんにちは,編集Aです.
平成30年版医師国家試験出題基準」(適用は112回国試から)に
新たに加わった用語をピックアップして紹介しているこの企画.

 

…そうなんです.この連載,まだ生きています.
だいぶ間があいてしまいごめんなさい…

 

本日は,出題基準の【備考欄】にひっそりと追加されている用語の中から.
ダメージコントロール」に注目してみます.
医学総論IX 治療10D12「多発外傷・爆傷」の治療・処置の関連用語として
「部位別治療優先順位の判断」と併記される形で,書き加えられました.

 

◆ダメージコントロール
(DCS:damage control surgery)

ダメージコントロール」は,重症外傷に対する応急処置・手術において
近年重視されている概念です.

もともとは戦時中に使われていた言葉で,
敵の攻撃を受けた戦艦を,なんとか自分達の領地の港に帰すために行う応急処置,という意味です.

これが転じて,外傷治療の戦略を「damage control surgery(DCS)」と呼ぶようになったそうです.

元が軍事的な用語ということで,やや抵抗がある人もいるかもしれませんが,
概念のイメージはしやすいですよね.

 

通常の手術は,いわば
「解剖学的な異常や,病態を修復するための手術」です.
手術前には,全身状態の安定化が絶対条件です.

これに対して,DCSは
生理学的な異常を修復し,命をつなぐ手術」といえます.
つまり,手術前に全身状態を改善してから行うのではなく
致死的な状態から(しかも短時間で),いかに全身状態を整えるか,が重要になります.

 

DCSには,以下の3つの段階(要素)があります.

1)蘇生目的の初回手術(出血などをいかにコントロールできるか)
2)全身の安定化を図る集中治療(バイタルの補正)
3)根本的な修復・再建のための手術

 

もっとも問題になるのは「出血のコントロール」です.
外傷手術では,大量の出血を伴います.
重症外傷の場合,ただでさえ大量の出血があるのに,
そこにさらに手術を加えることになるため,コントロールが難しいのです.

 

日本救急医学会の用語集では,DCSについて
『「外傷死の三徴」の存在などからその適応を判断する』と書かれています.
「外傷死の三徴(=致死的三徴)」については,日本救急医学会では以下のように説明しています.

・重症外傷において予後不良の原因となる3つの因子のこと(一般的な「死の三徴(瞳孔反応停止,呼吸停止,心停止)」とは異なる)
・重症外傷において,低体温(hypothermia),アシドーシス(acidosis),凝固異常(coagulopathy)は「deadly triad(bloody vicious cycle)」と呼ばれ,予後を不良にする重要な因子である
・deadly triadの客観的指標(諸家の報告には多少のばらつきがある)
1)hypothermia:深部体温34℃以下
2)acidosis:pH <7.2
3)coagulopathy:non-mechanical bleedingの出現

→Bloody vicious cycleに陥った重症腹部外傷を中心に,DCSが広く応用されるようになってきている

出典 http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0121.htm(2017年12月閲覧)

 

…まとめると,外傷死の三徴とは
1)低体温(深部体温34℃以下)
2)代謝性アシドーシス(動脈血pH 7.2未満)
3)血液凝固障害の出現

です.
しかし実際は,このレベルまでいかなくても,
早期にダメージコントロール手術の必要性を判断することが増えているようです.

 

国試対策としては(そしてもちろん,臨床現場に出てからも)このあたりのキーワードを含め,
外傷に対する初期対応を今一度整理しておくことをおすすめします.

外傷の初期診療・対応をテーマとする国試問題は
103回(9年前)と,108回~110回で集中的に出題されています.
「QBオンライン」で“外傷初期”で「全文検索」すると,以下の7題がヒットしてきます(うち3題は,必修問題).
今後も出題されやすいテーマの一つと予想されますので,必ず確認しておきましょう.
(以下,QBオンラインに登録・ログインしていれば直接とべます)
103E62-64
108E60-62
108H24
109C24
 109E63-65
 109H28
110B50-52

 

ちなみに,今年の夏に放送されていたドラマ「コード・ブルー」の第3話で
DCSの概念が出てきていたそうです(私は見ていませんでした…).
こちらの先生のブログを拝読すると,イメージがわきやすいかもしれません.

 

この連載もだいぶ回数を重ねてきましたが,
あともう1つか2つ,配信したい…と…思っ…ています……
楽しみにしてくださっている方,もう少々お待ちください.

(編集部A)

 

 

第1回:適用はいつから?
第2回:何が変わったのか~問題数100問減の影響は?~
新ワード紹介(1)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)
新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)
新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
老年医学にかかわる新ワード4つ
新ワード紹介(5)サルコペニア
新ワード紹介(6)運動器不安定症
新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
新ワード紹介(8)フレイル
新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
新ワード紹介(17)システマティックレビュー
新ワード紹介(18)産科医療補償制度
新ワード紹介(19)医療事故調査制度
新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
新ワード紹介(21)好酸球性食道炎(EoE)
新ワード紹介(22)ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)
新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)
新ワード紹介(24)高IgM症候群
新ワード紹介(25)重症先天性好中球減少症(SCN)
新ワード紹介(26)家族性地中海熱(自己炎症性疾患)
新ワード紹介(27)進行性多巣性白質脳症(PML)
新ワード紹介(28)ダメージコントロール(DCS)
新ワード紹介(29)ロービジョンケア

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