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【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(5)サルコペニア

昨日の「導入編」に引き続き,今日は
サルコペニアについて理解を深めていきたいと思います.

 

 

◆サルコペニア

医学総論Ⅱ-6-B「高齢者の健康保持・増進」の中の
4「閉じこもり,廃用症候群」の備考として加えられました.

 

サルコ(sarco)は“筋肉”,ペニア(penia)は“喪失”を意味します.
要するに「筋肉が衰える,減少する」という意味の造語です.
1989年,Irwin Rosenbergによって提唱されました.

 

世界的に注目されている概念で,ヨーロッパでは
「身体的な障害や生活の質の低下,および死などの有害な転帰のリスクを伴うもので,
進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群」と定義され,
「筋肉量の低下」「筋力の低下」「身体能力の低下」の3つで評価されます.

 

加齢によるものを一次性サルコペニア,
疾患・活動・栄養障害などによるものを二次性サルコペニアといいます.

 

症状としては,握力低下歩行困難など.
これが進行すると転倒リスクが高まったり,要介護状態に移行してしまう恐れが高まります.
早期から疾患(病態)としてとらえ,
積極的に対応し進行を抑制する(または事前から予防する)ことが重要です.

 

 

 

そして近年,サルコペニアが
さまざまな疾患にかかわっていることが明らかになってきました.

 

例えば肝臓の分野では,
肝機能の低下に伴う栄養障害によって二次性サルコペニアをきたしやすいことや,
サルコペニアが背景にある,または合併した患者さんにおいて
肝疾患の予後が悪くなることが注目されています.
肝機能の低下をきたすと,肝性脳症や肝腎症候群などを合併しやすくなるためです.
日本肝臓学会はつい最近(2016年7月),肝疾患に特化した,独自のサルコペニア判定基準を公開しています.
https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/sarcopenia

 

 

 

サルコペニアについて共通化された定義や診断基準はまだありません.
現時点では,厚労省研究班が2012年にまとめたコンセンサス
(ヨーロッパにおけるコンセンサスのまとめ)が参考になります
厚生労働省研究班「サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A」).

 

また,日本ではサルコペニア・フレイル研究会が現在,診療ガイドラインを作成しています.
さまざまな分野で研究もされているので,今後の動向が注目されます.

 

■サルコペニア・フレイル研究会のサイトはこちら
■日本サルコペニア・悪液質・消耗性疾患研究会のサイトはこちら

 

 

 

◆◆◆

実は前回の国家試験(110回)で,
すでにサルコペニアが選択肢に登場しています.
国試に出たのは初めてです.

—–
【110G14】高齢者の嚥下障害について正しいのはどれか.
a 水分の誤嚥は少ない.
b 体位の影響を受けない.
c 喉頭閉鎖不全を伴わない.
d サルコペニアの要因ではない.
e むせがなくても誤嚥を否定できない.
—–
(QBオンラインにログインしている方はこちらから確認!)

 

嚥下障害の基本について問う問題で,
正答にサルコペニアの知識が必要なわけではありませんでしたが,
今後の出題にそなえて概念を確認しておきましょう.

 

同じく110回の国試では,膵癌から悪液質(cahexia)に至った症例が
臨床問題として出題されました.
この問題の「TO NEXT」で,サルコペニアの出題を予想しています.あわせてご確認ください.
書籍版『第110回医師国家試験問題解説』→534ページ
QBオンライン→https://qb-online.com/#/list/110G56
(TO NEXTは解説の一番最後にあります)

 

 

 

(編集部A)

 

 

第1回:適用はいつから?
第2回:何が変わったのか~問題数100問減の影響は?~
新ワード紹介(1)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)
新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)
新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
老年医学にかかわる新ワード4つ
新ワード紹介(5)サルコペニア
新ワード紹介(6)運動器不安定症
新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
新ワード紹介(8)フレイル
新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
新ワード紹介(17)システマティックレビュー
新ワード紹介(18)産科医療補償制度
新ワード紹介(19)医療事故調査制度
新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
新ワード紹介(21)好酸球性食道炎(EoE)
新ワード紹介(22)ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)
新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)
新ワード紹介(24)高IgM症候群
新ワード紹介(25)重症先天性好中球減少症(SCN)
新ワード紹介(26)家族性地中海熱(自己炎症性疾患)
新ワード紹介(27)進行性多巣性白質脳症(PML)
新ワード紹介(28)ダメージコントロール(DCS)
新ワード紹介(29)ロービジョンケア

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