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【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(26)家族性地中海熱(自己炎症性疾患)
編集部Sです.「平成30年版医師国家試験出題基準」に新たに加わった用語をピックアップしてご紹介しています.
今日は,免疫不全シリーズの最終回.医学各論Ⅺ「アレルギー性疾患,膠原病,免疫病」の原発性免疫不全症の項に追加された家族性地中海熱(自己炎症性疾患)についてご紹介します.
目次
家族性地中海熱(FMF:familial Mediterranean fever)
家族性地中海熱は,発作性に起こる発熱と腹部,胸部の疼痛や関節腫脹などの症状が繰り返される遺伝疾患で,自己炎症性疾患に分類されます.地中海沿岸や中近東の人に多いですが,日本でも500名以上が診断されています.
典型例では突然高熱を認め,半日から3日間持続します.発熱は周期性に起こり,その間隔は4週間毎が多いです.随伴症状として漿膜炎による激しい腹痛や胸背部痛を訴えます.
発作時にはCRP,血清アミロイドAの著明な高値を認め,発作間欠期にこれらは陰性化します.発作の抑制にはコルヒチンが約90%以上の症例で奏効します.長期的に炎症が継続するとアミロイドーシスに至ることもあります.
原因遺伝子としてMEFV遺伝子が知られており,常染色体劣性遺伝形式をとります.原因遺伝子産物はPyrin(パイリン)であり,炎症経路を抑える働きをもつ蛋白質とされています.
自己炎症性疾患とは
自己炎症性疾患は,自然免疫の異常によって炎症反応が自然に起こり臓器障害を合併する疾患であり,周期性発熱を認めるものも少なくありません.(一方,獲得免疫の異常によって発症する疾患は「自己免疫疾患」と呼称されます.)
自己炎症性疾患は狭義のものでも15種類以上存在し,発熱,関節炎,皮疹などを認める疾患では鑑別すべき重要な疾患です.広義のものでは全身型若年性特発性関節炎などがあり,こちらは膠原病・リウマチ疾患との鑑別で重要となります.家族性地中海熱はこれらの中で最も頻度が高い疾患の1つです.
- ・周期性発熱を呈すること
- ・胸痛,腹痛,関節痛などを合併すること
- ・発作間欠期には炎症反応を認めないこと
- ・コルヒチンが奏効すること
- ・長期的な炎症ではアミロイドーシスに至ることがあること
などが重要です.
112〜116回国試での出題は?
112回〜116回国試での出題はありませんでした.今後,自己炎症性疾患という疾患の概念(自然免疫系の異常)に関して問われたり,代表的疾患例の選択肢として問われたりする可能性もあるので,ポイントをおさえておきましょう.
※監修:森尾 友宏(東京医科歯科大学大学院 発生発達病態学分野 教授)
※本連載は2016年に公開された記事に,最新の国試での出題状況を加筆して再配信したものです.掲載情報の最終責任は編集部にあることをご了承ください.
(編集部S)
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