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【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(8)フレイル

編集Aです.今日は,老年医学特集の最終回.
医学総論VII「診察」→2B7「介護の必要度」の備考欄に追加された
「フレイル(の評価)」です.

 

◆フレイル(frailty)

 

日本老年医学会が2014年5月に提唱した名称です.

 

これまで「虚弱」とよばれてきた概念ですが,
最近は「虚弱」の意味・概念そのものがより深く議論されるようにもなりました.

 

そのため,改めて日本老年医学会が
『高齢者において,筋力や活動が低下している状態』を重要な概念と定め,
「フレイル」という名称を付けました.

 

このときに発表されたステートメントでは,医療・介護従事者に対して
・フレイルの概念を正しく理解すること
・予防に積極的に取り組むこと
をよびかけています.

 

このことが医師国試でも重視され,今回の出題基準に加えられたのだと思われます.
難しいことが出題されるわけではないと思われますが,
上記の2点(フレイルの概念の理解+予防が重要だということ)は必ずおさえておきましょう.

 

 

というのも,フレイルに関して
まだはっきりとした定義や診断基準は存在していないからです.
(そのためこの記事でもはっきりとしたポイントを示すことができないのですが…)

 

概念については,日本老年医学会のものよりも踏み込んで
「高齢期に生理的予備能(=日常生活で必要な能力と,運動時などに必要となる能力の最大値の差)が低下することにより,ストレスに対する脆弱性が増し,機能障害,要介護状態,さらに死に陥りやすい状態」
と考えるのが一般的です.
要介護状態に陥る“一歩手前の段階”です.

 

人は誰もが,加齢とともに身体能力が低下していきます.
日常生活に必要なことが自力でできなくなると「要介護」ですが,
その手前,つまり日常生活は自身の身体能力で送れているものの,
健康を崩しやすくなったり,精神的に落ち込みやすくなったり…
このような状態が「フレイル」にあてはまります.

 

上記の文章ではわかりづらいですが,
身体的な側面(筋力低下・歩行困難など)だけでなく,認知機能精神的・心理的側面
さらに社会的な要素(一人暮らし・貧困など)も含んでいることがポイントです.
可逆性”であり,適切な対策や予防を行えば
フレイルから脱することができると考えられています.

 

 

 

なぜフレイルが重視されているのか.それは,フレイルが
病態の予後,外科手術の適応,死亡の予測因子になることが明らかになってきたからです.
ストレスへの反応性も高いため,薬物療法のレジメンなどを
慎重に検討しなければいけないこともあります.
そのため,フレイルかどうかを早期かつ適切に見極める必要があるのです.

 

では,高齢の患者さんを診察する際,
その患者さんが「フレイル」かどうか,診断基準がない中で
どのように判断すればよいのでしょうか.
痩せて筋力が落ちているし,歩きづらそう…であっても,
心身はその患者さんが日常生活を送るうえで十分に健康で,
充実した生活を送っている…という場合.その方はフレイルなのでしょうか.

 

いわゆる「老年症候群」とよばれるものが
フレイルの代表的な臨床症状とされていますが,
アメリカでは2001年,Friedが「虚弱の表現型」として下記の基準を提唱しています.
—–
1)力が弱くなる
2)倦怠感や日常動作がおっくうになる
3)活動性が低下する
4)歩くのが遅くなる
5)体重が減少する

上記のうち1つも当てはまらない→「健康(頑強)」
1つまたは2つ当てはまる→「前虚弱」
3つ以上当てはまる→「虚弱」
—–

 

しかし,この基準で拾いきれない症例も多く,
さらに踏み込んだ診断基準の作成が待たれています.
各疾患との関連も議論されており,
例えば,糖尿病ではフレイルになりやすい,という報告が増えています.

 

フレイルの予防は,適度な運動と,適切な食事です.
病態の進行を止めて,要介護状態に陥るのを防ぐことが目的です.

 

いろいろと議論がなされていますので,いくつか資料をご紹介します.
理解を深めたい方は,ぜひ読んでみてください.
https://www.arterial-stiffness.com/pdf/no21/046-047.pdf
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/189640.html
https://medicalnote.jp/contents/160309-003-VD

 

 

 

+-+-+-+-+-+-

 

さて,今日まで連続で,
関連する4つの言葉を紹介してきました.

 

老年医学にかかわる新ワード4つ
新ワード紹介(5)サルコペニア
新ワード紹介(6)運動器不安定症
新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
■新ワード紹介(8)フレイル (※この記事)

 

「概念を正しく理解しよう」というのがポイントでしたので,
ふわっとしたお話になってしまったかもしれません.
具体的なイメージを持てるよう,実習などで実際の症例を見ることができる機会があれば
意識して患者さんと向き合ってください.

 

(編集部A)

 

 

第1回:適用はいつから?
第2回:何が変わったのか~問題数100問減の影響は?~
新ワード紹介(1)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)
新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)
新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
老年医学にかかわる新ワード4つ
新ワード紹介(5)サルコペニア
新ワード紹介(6)運動器不安定症
新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
新ワード紹介(8)フレイル
新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
新ワード紹介(17)システマティックレビュー
新ワード紹介(18)産科医療補償制度
新ワード紹介(19)医療事故調査制度
新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
新ワード紹介(21)好酸球性食道炎(EoE)
新ワード紹介(22)ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)
新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)
新ワード紹介(24)高IgM症候群
新ワード紹介(25)重症先天性好中球減少症(SCN)
新ワード紹介(26)家族性地中海熱(自己炎症性疾患)
新ワード紹介(27)進行性多巣性白質脳症(PML)
新ワード紹介(28)ダメージコントロール(DCS)
新ワード紹介(29)ロービジョンケア

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