新着記事

国試

【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)

編集部Sです.
平成30年版医師国家試験出題基準」(適用は112回国試から)に
新たに加わった用語をピックアップしてご紹介しています.

 

今日は,内分泌・代謝・栄養・乳腺疾患領域に追加された
「腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)」です.
医学各論X-3「副甲状腺〈上皮小体〉疾患とカルシウム・リン代謝異常」
B「カルシウム・リン代謝異常」に追記されました.

 

 

 

◆腫瘍性低リン血症性骨軟化症
(TIO:tumor-induced hypophosphatemic osteomalacia)

 

 

内分泌領域の「骨・カルシウム・リン代謝」に関する
新たな病態として注目されている概念です.

 

より具体的には,後天性の「くる病・骨軟化症」の一病型として位置づけられ,
類似疾患と鑑別診断の対象になります.

 

くる病といえば,ビタミンDの欠乏や作用障害により
骨の石灰化が障害されて発症する小児の疾患,というイメージがあるのではないでしょうか.
しかし成人でも,まれに同様の病態をきたすことがあります.
小児のように顕著な成長障害や骨変形をきたさないため,
「くる病」ではなく「骨軟化症」とよばれるのが一般的です.
日光浴不足によるビタミンD欠乏のほか,
薬剤(抗けいれん薬など)によるビタミンD代謝異常で発症することもあります.

 

 

 

これらに加え最近では,腫瘍から分泌されるリン代謝調節因子(FGF23)でも
同様の病態が生じることが,日本人を含めた研究者らにより明らかにされました.

 

リンは生体にとって非常に重要なミネラルで,
特に細胞内の代謝(リン酸化など)に必須です.
陸上動物は,リンをリン酸カルシウムの形で骨に貯蔵しています.

 

一方,リンを過剰に摂りすぎて体内に蓄積すると,
骨以外の場所にも石灰化を起こしてしまうため,
リンの過剰を骨細胞が感知してFGF23というホルモンを出し,
これが腎臓に働いて尿細管でのリンの再吸収を抑制したりビタミンDの活性化を阻害して,
結果的にリンの尿中排泄促進,および腸管からの吸収を低下させることにより,
体内のリン量を適切な範囲に維持する調節が行われています.

 

ところが,まれに腫瘍がFGF23を自律的に産生することがあります(FGF23産生腫瘍).
この場合,過剰なFGF23が腎臓からのリン排泄を勝手に促進してしまうため
リン欠乏となり,低リン血症,および骨形成不全による骨軟化症を発症してしまうのです.
FGF23を産生する腫瘍は間葉系由来の良性腫瘍が多いようですが,
前立腺癌や肺癌,軟骨肉腫,繊維肉腫など悪性の場合もあります.

 

患者さんは全身の骨痛や筋力低下を訴えるほか,
歩行障害,骨折,偽骨折などが高頻度にみられます.
血清リン値が測定されていないと,
神経筋疾患や線維筋痛症などと誤診されることも少なくないようです.
低リン血症に加えて骨型アルカリフォスターゼが顕著に上昇しますが,
血清カルシウムや副甲状腺ホルモンには異常を認めず,
活性型ビタミンDは低リン血症の存在下にもかかわらず正常下限~軽度低下を呈します.

 

 

 

この疾患の大きな特徴は,腫瘍を発見して切除すると治癒することです.
したがって,TIOが疑われた場合は,
積極的に血中FGF23を測定(現時点では保険未収載)すると同時に,
画像診断で腫瘍の局在を検索することが重要となります.

 

 

 

-+-+-+-+-+-

 

実はこのTIO,すでに109回国試で誤答選択肢として登場しています(109D19).

 

※書籍版『QB2017』→D-111ページ
QBオンライン→http://qb-online.com/#/list/109D19

 

QBオンライン「TO NEXT出題予想」には,TIO(109D19)のほかに,
FGF23(110I42)も掲載しているので,あわせて目を通しておくといいでしょう.

 

◆TO NEXT出題予想はこちら

 

 

 

※監修:岩﨑 泰正(高知大学臨床医学部門 教授)

 

(編集部S)

 

 

第1回:適用はいつから?
第2回:何が変わったのか~問題数100問減の影響は?~
新ワード紹介(1)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)
新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)
新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
老年医学にかかわる新ワード4つ
新ワード紹介(5)サルコペニア
新ワード紹介(6)運動器不安定症
新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
新ワード紹介(8)フレイル
新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
新ワード紹介(17)システマティックレビュー
新ワード紹介(18)産科医療補償制度
新ワード紹介(19)医療事故調査制度
新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
新ワード紹介(21)好酸球性食道炎(EoE)
新ワード紹介(22)ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)
新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)
新ワード紹介(24)高IgM症候群
新ワード紹介(25)重症先天性好中球減少症(SCN)
新ワード紹介(26)家族性地中海熱(自己炎症性疾患)
新ワード紹介(27)進行性多巣性白質脳症(PML)
新ワード紹介(28)ダメージコントロール(DCS)
新ワード紹介(29)ロービジョンケア

同シリーズの書籍・関連書籍

関連する記事