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【平成30年版医師国家試験出題基準】新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)

編集Aです.
平成30年版医師国家試験出題基準」(適用は112回国試から)に
新たに加わった用語をピックアップしてご紹介しています.
(※紹介順に意味はありません.)

 

今日も消化管領域から.
「胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)」を勉強しましょう.
その前に一つ,国試問題を.
—–
【109D8】経動脈的塞栓術の適応でないのはどれか.
a 出血性腸炎
b 出血性胃潰瘍
c 肝細胞癌の破裂
d 出血性大腸血管異形成
e 小腸動静脈奇形からの出血

 

※書籍版『QB2017』→A-430ページ,
 QBオンライン→ http://qb-online.com/#/list/109D8
—–

 

この問題は選択肢aとbで割れました(解答率は順に43.8%,44.9%).
正解(適応でないもの)はaの出血性腸炎ですが,
ここでは選択肢dとeに注目します.聞き慣れない病名ではないでしょうか.

 

いずれも「消化管血管形成異常(または消化管血管異形成)(angiodysplasia)」としてまとめられます.
消化管出血の要因となりうる病態で,
多くは内視鏡治療(クリッピング,アルゴンプラズマ凝固法など)の適応となります.
内視鏡治療が困難な場合には,経動脈的塞栓術外科的治療が行われます.

 

実は,消化管出血の原因疾患として,血管形成異常が注目されています.
今回出題基準に追加されたGAVEも,その一つです.
上記のような問題(間違い選択肢としてですが)が出ていることもふまえ,
今後の出題にそなえておきましょう.

 

 

 

◆胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE:gastric antral vascular ectasia)

 


医学各論IV-5-E-1「虚血性小腸炎・大腸炎」の備考欄に追記されました.

 

(ちなみに「虚血性小腸炎」自体も,今回付け加えられています.
内視鏡技術の進歩や,ダブルバルーン内視鏡・カプセル内視鏡の登場により,
小腸疾患が見つかりやすくなってきているのでしたね).
[4年前の紹介記事はこちら

 

1953年,Riderらが初めて報告した疾患概念で,
その後Jabbariらが“watermelon stomach”と名付け,確立されました.
胃前庭部に限局する毛細血管拡張が幽門輪に向かって縦走し,
スイカの表面模様のような発赤を示すのが特徴とされました.

 

これに対して,1984年,Leeらが
「前庭部に限局する,びまん性の点状・斑状発赤を呈する毛細血管拡張症」のことを
“diffuse antral vascular ectasia(DAVE)”と報告.

 

その後,watermelon stomachとDAVEは同じ疾患と考えられるようになり,
“GAVE”と総称されるようになりました.
(このような経緯を経て現在は疾患概念が確立したため,
そろそろ国試で出題してはどうかとなったのではないでしょうか.)

 

 

 

内視鏡的には,胃前庭部
特徴的な毛細血管拡張による発赤を認めます.
機械的刺激や蠕動運動によって容易に出血し,大出血をきたすことがあります.

 

基礎疾患として肝硬変が多く(約30%),
その他に慢性腎臓病,自己免疫疾患,大動脈弁狭窄,骨髄移植後などが知られています.

 

発症機序は不明ですが,萎縮性胃炎に伴う高ガストリン血症,胃蠕動運動の亢進,
肝硬変症例では門脈圧亢進や血中エストロゲン増加などが原因と想定されています.

 

しかし,門脈圧を低下させる治療を行っても,出血に対する効果はあまりありません.
門脈圧との関係については,まだ立証されていないのが現状です.
出血に対しては,レーザー焼灼やアルゴンプラズマ凝固法などの
内視鏡的治療が有効とされています.

 

国試レベルでのポイントとして,
●内視鏡画像からの診断(スイカの表面模様のような発赤所見)
●(エビデンスはありませんが)肝硬変との関連
●内視鏡的治療の選択(レーザー焼灼,アルゴンプラズマ凝固法)
をおさえておきましょう.

 

 

 

ちなみに,肝硬変に伴う門脈圧亢進症による胃粘膜病変として
GAVEとは別に,「門脈圧亢進症性胃症(PHG:portal hypertensive gastropathy)」
という疾患もあります.
PHGの好発部位は胃体部や穹窿部で,前庭部にはほとんど発症しません.
GAVEとは異なり,内視鏡で観察される発赤所見はモザイク状.
病理所見もGAVEとは異なることが報告されています.
こちらは門脈圧を低下させる薬物療法が有効です.

 

いずれも発症機序が十分解明されていませんが,大出血を招く疾患であり,
今後も病態の解明や治療法の確立が模索されていきそうです.
内視鏡画像,一度は確認しておいてくださいね.

GAVEの画像検索はこちら  PHGの画像検索はこちら

 

 

 

※監修:押谷 伸英(社会福祉法人石井記念愛染園附属愛染橋病院 副院長)

 

(編集部A)

 

 

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