
レビューブック 小児科2021-2022
突然ですが,みなさん!新生児マススクリーニング対象疾患(6疾患)ちゃんと言えますか?
の6つでしたね.
覚えてない人はこちらで確認しておきましょう!
→医ンプット
(お気に入りのゴロを見つけて暗記しよう!自分の考えた暗記法を投稿することもできますよ!)
さてこちらの新生児マススクリーニングなのですが,
実は平成26年4月から対象疾患が6疾患から約20疾患に増えています.
その鍵をにぎるのが,今回紹介する「タンデムマス・スクリーニング」なのです.
「え!?6疾患じゃなくてもっと多かったの?そんなの知らないぞ??」
という人も,
「タンデムマスってなんとなく聞いたことあるけど,実際のところよくわかんないなー」
という人も,
「そもそも新生児マススクリーニングってなんやねん」
という人も,
一緒にマススクリーニングについての理解を深めていきましょう.
まず,従来の「新生児マススクリーング」について簡単に説明すると,
小児科や産婦人科の実習などで,新生児室にて,赤ちゃんのかかとに小さい針で穴を開け,
血液を絞りだすのを見たことがある人もいるかと思いますが,このスクリーニング事業のおかげで,
1万人以上の小児が障害の発生を免れたとも言われております.
さて,そんな新生児マススクリーニングですが,1990年に米国にて新しい検査法が開発されました.
それが「タンデムマス法」です.世界でも2000年以降次第に普及するようになり,
日本においても「タンデムマス法」によるスクリーニングを導入するかどうか,検討が進められてきました.
そして,2014年に正式に導入され,全国の都道府県で「タンデムマス法」を用いたスクリーニングが行われるようになりました.
タンデムマス法では「タンデム型質量分析計」という非常に感度のいい測定機器を用い,
これまで使っていた血液ろ紙を使い,一回の分析(約2分間)でより多くの病気をスクリーニングすることができるようになりました.
対象疾患が増えたことで,今までより多くの小児が障害発生を予防することが出来ると期待されています.
現在では,従来の対象6疾患のうち,アミノ酸代謝異常であるフェニルケトン尿症,ホモシスチン尿症,メープルシロップ尿症の3つは
タンデムマス法によるスクリーニングが行われています.(クレチン症,先天性副腎皮質過形成,ガラクトース血症は従来の方法で続けられている.)
さらに従来行われていたガスリー法よりも検査精度が良いため,
「再採血」の率も低くおさえられ,家族の精神的負担や精密検査の費用負担の軽減にも一役買っています.
良いことずくめの「タンデムマス・スクリーニング」ですが,具体的にはどんな疾患が対象疾患として追加されたのか.
みなさん気になりますよね?
国試対策の上では,ひとつひとつの疾患名を覚える必要はないですが,この機会に一挙に羅列してみましょうか.
いかがでしょうか?
それぞれの疾患名を覚えるよりも,従来のアミノ酸代謝異常に加えて,
「有機酸代謝異常疾患」や「脂肪酸代謝異常疾患」も
スクリーニングできるようになったと大まかに覚えておきましょう.
「タンデムマス法」によって追加された「先天性代謝異常疾患」の発生頻度は
いずれも数万から数十万分の1という非常に低い確率ではありますが,
これらの疾患を合計すると1万分の1以上の確率で遭遇することになります.
毎年約100万人の新生児が生まれていますから,
「タンデムマス法」の導入によって新たに毎年100人以上の小児を障害発生から予防することができるのです.
素晴らしいですね.
(ちなみに,2014年6月の発売以降多くの反響をいただき,国試小児科対策のスタンダードとして多くの受験生の手にとってもらえた「レビューブック 小児科」が2016年9月に待望の第2版の発売しましたが,そちらでも「タンデムマス・スクリーニング」に関するまとめの表を新規追加しております!)
それでは,最後に110回国試の問題をみてみましょう.
【110B12】
タンデムマス法による新生児マススクリーニングの検査対象となるのはどれか.
a 核酸代謝異常
b 金属代謝異常
c 有機酸代謝異常
d ムコ多糖体代謝異常
e ミトコンドリアDNA異常
「タンデムマス法」では,従来のアミノ酸代謝異常に加えて,「有機酸代謝異常疾患」や「脂肪酸代謝異常疾患」もスクリーニング出来るようになったんでしたね.
よって答えはcです.しかし,この問題の正答率は50.8%とかなり低めでした.
「タンデムマス・スクリーニング」はこの問題が国試初登場となったので(そもそも出題基準にはまだ載ってないのに出題されちゃったので),多くの受験生が困惑しながら解いたことでしょう.この問題の正答率が低かったことから,今後リベンジ問題として再登場する可能性は大いにあります.きっと.
それでは,次回をお楽しみに!
(編集部W)
■第1回:適用はいつから?
■第2回:何が変わったのか~問題数100問減の影響は?~
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■新ワード紹介(2)胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)
■新ワード紹介(3)腫瘍性低リン血症性骨軟化症(TIO)
■新ワード紹介(4)nephrogenic systemic fibrosis(NSF)
■老年医学にかかわる新ワード4つ
■新ワード紹介(5)サルコペニア
■新ワード紹介(6)運動器不安定症
■新ワード紹介(7)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
■新ワード紹介(8)フレイル
■新ワード紹介(9)家族性低尿酸血症
■新ワード紹介(10)タンデムマス・スクリーニング
■新ワード紹介(11)ジカウイルス感染症
■新ワード紹介(12)持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
■新ワード紹介(13)アシネトバクター感染症
■新ワード紹介(14)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
■新ワード紹介(15)難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
■新ワード紹介(16)ジュネーブ宣言
■新ワード紹介(17)システマティックレビュー
■新ワード紹介(18)産科医療補償制度
■新ワード紹介(19)医療事故調査制度
■新ワード紹介(20)地域医療構想/地域包括ケアシステム
■新ワード紹介(21)好酸球性食道炎(EoE)
■新ワード紹介(22)ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)
■新ワード紹介(23)被包化膵臓壊死(WON)
■新ワード紹介(24)高IgM症候群
■新ワード紹介(25)重症先天性好中球減少症(SCN)
■新ワード紹介(26)家族性地中海熱(自己炎症性疾患)
■新ワード紹介(27)進行性多巣性白質脳症(PML)
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■新ワード紹介(29)ロービジョンケア