コラム

【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第9回 心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる

(QRST波形理解の下準備 その1)

 

 

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心室の収縮・拡張を反映した波形がQRSTです.
この波形の成り立ちを理解するために,
今回と次回で下準備をしましょう.

 

心室壁の細胞は,「内膜側」にあるものと
外膜側」にあるもので電気的性質が異なります

 

 

この違いが心室壁の収縮の特徴を説明するうえで重要になります

 

ドーナツ様の左室の輪切りを思い浮かべてください.

心室壁の収縮とは,内側に向かって縮むことですが,
もしも外膜側から収縮が始まったら,
つっかえてしまって効率はとても悪いですよね.

 

人間の心臓は不思議と効率がよくできており,
収縮する時は内膜側が先に収縮します.

 

逆に拡張する時は外膜側が先に拡張します.
収縮のときと同様にこのほうが効率がいいですよね.

 

 

この心室壁の収縮・拡張の順番が、電気がどちら向きに流れるかを決め、
心電図の各誘導でR波・T波が上向きなのか下向きなのかに関係します.

 

電気生理学の専門家の方はご存じかもしれませんが,
心筋の中間層にも活動電位持続時間が極端に長いという
面白い性質のM細胞も近年発見されて実際の様相は
内膜側と外膜側の2層性のみでは説明ができないほど複雑です.
しかし説明の導入ではかえって理解の妨げとなりますので,
古典的解釈で説明しますことをお許しください.

 

 

今回のまとめ
●心室壁は内膜側から収縮し,外膜側から拡張する

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師でなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

 

→【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)

 

 

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–「みんなの心電図」目次–

【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1  心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう 【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類

 

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