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【第29回】マクロリエントリー理解の準備(1) 洞調律での2経路の伝導

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第29回 マクロリエントリー理解の準備(1) 洞調律での2経路の伝導

 

 

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今回からは上室性不整脈の電気生理学的な説明を行っていきますが,
その前に「マクロリエントリー」と「ミクロリエントリー
という言葉について説明しておきましょう.

 

 

房室回帰性頻拍(AVRT),房室結節リエントリー頻拍(AVNRT),心房粗動(AFL),
心房細動(AF)では電気的な旋回経路(リエントリー回路)があります.
このうち前3者はリエントリー回路が大きいので「マクロリエントリー」,
心房細動はリエントリー回路が無数の小さなものなので
ミクロリエントリー」とよびます.

 

本連載では基本的にマクロリエントリー→ミクロリエントリーの順で
上室性不整脈の説明を行っていきます.
ただし心房粗動(AFL)は心房細動(AF)を学んだ後に勉強した方がわかりやすいため,
心房細動(AF)の後に説明を行います.

 

したがって説明は,
「房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)」→「房室回帰性頻拍(AVRT)」
→「心房細動(AF)」→「心房粗動(AFL)」
の順で行っていきます.

 

それでは最初の「房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)」の説明に入ります.
房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)を理解するためには房室結節の
fast pathwayslow pathwayについて理解する必要があるので,
今回はそれについて説明します.

 

 

房室結節は通常は1本路ですが,
健常者でも4人に1人くらいは
ドーナッツ状の2分路(fast pathwayとslow pathway)
を有しています.

 

fast pathway伝導速度が速いですが,
代わりに不応期は長いです
(=一旦興奮すると再度脱分極するには長い時間を要します).

 

slow pathwayは逆に伝導速度は遅いですが,
不応期は短いです
(=一旦脱分極すると再度脱分極するには時間をさほど要しません).
この2経路の不均一さが不思議なバランスを生み出すのです.

洞結節からの興奮が2分路を通過する時には
どのようなことが起こっているのでしょうか?

 

まずはfast pathwayをおりた電流が先にヒス-プルキンエ線維へと到達し,
心室筋の収縮をきたします.
fast pathwayを通過した電流はさらに,逆行性にslow pathwayを走行伝播します.
しかし順行性に興奮するslow pathwayの電流もありますので,
順行波と逆行波は互いの不応期に飛び込む形となり,相殺してしまいます.

 

「心房から伝わる電流」:「心室に伝わる電流」=1:1
の関係が保たれますので,1本路とは区別がつきません
(次の図のように2分路を隠してしまうと,より1:1対応がみやすくなるでしょう).

 

しかし,心房期外収縮などの予想外の電流の流入が回路内に生じると,
このドーナッツ状の経路を介して複雑な電流が生じて
1:1の関係が崩れてしまうことがあります.
次回からはそうしたイレギュラーな伝導について学んでいきましょう.

 

今回のまとめ
●リエントリー回路をもつ不整脈はマクロリエントリーとミクロリエントリーの2つに分けられる.
●マクロリエントリーには,房室回帰性頻拍(AVRT),房室結節リエントリー頻拍(AVNRT),心房粗動(AFL),が含まれる.
●ミクロリエントリーには心房細動(AF)が含まれる.
●房室結節は通常1本路だが,健常者でも2分路(fast pathwayとslow pathway)をもつ人がいる.
●洞調律では2 pathwayがあっても,1:1伝導しているようにみえる.

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師だけでなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

 

 

–「みんなの心電図」目次–

【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1  心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう
【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類
【第28回】刺激伝導系の整理
【第29回】マクロリエントリー理解の準備(1) 洞調律での2経路の伝導