新着記事

その他

【みんなの心電図 〜非専門医のための読み方〜 第3回】心電図でわかること,わからないこと

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第3回 心電図でわかること,わからないこと

 

 

どんな検査にも言えることですが,「心電図」にも,
循環器疾患を対象としたときに「わかること」と「わからないこと」があり,
検査としての限界が存在します.まずは心電図という検査の有用性を
以下の3つに分類して整理してみましょう.

 

①心電図「にしかわからないこと」

 

心電図が最も威力を発揮する場面は「不整脈」の診断です.
逆に,心電図以外の検査で不整脈の証拠を得ることは困難です.

言い換えれば刺激伝導系の異常を確認するうえでは

心電図が唯一無二の検査となります.

 

②心電図「でもわかること」

 

「STが上がっています」と聞くと「心筋梗塞だ!」と
反射的に答える医療者は多いのではないでしょうか?

確かに,「鏡面像を伴うような限局した誘導のST上昇」を診た際には
一発診断で心筋梗塞を含めた急性冠症候群(ACS)を疑う必要があります.
しかし,非ST上昇型ACS(non-STEACS)というという概念があるように
急性冠症候群は必ずしもST上昇を伴うとは限りません.

 

急性冠症候群は
「胸部症状」

+「バイオマーカーの上昇(トロポニンなど)」

+「心電図虚血所見」
の組み合わせで診断されます.
「虚血疾患」の診断において心電図は,鋭敏にその変化を捉えやすいため
スクリーニングという意味では中心的な役割を果たしますが,
総合的判断をする要素のあくまで一部でしかないとも言えるでしょう.

 

③心電図「にはわかりにくいこと」

 

心電図では,心臓の“形”を直接みることはできません
“形”をみることが得意な検査には,
超音波などのいわゆる画像検査があります.

心臓超音波の分野では心筋や弁などの
形態異常を伴う心疾患(例えば心筋症や弁膜症など)を
総称してSHD(Structural Heart Disease)と呼びます.

こうした形態異常は画像で異常を実際にみることが確定診断には重要です.

心電図でも心肥大や心房拡大,心臓の回転などの
有力な情報を捉えることもありますが,
あくまで副次的所見に留まるのでことを知る必要があります.

 

………

 

「限界を知る」というと,なんだかアスリートのコメントのようですね.
救急外来を含めて実際の臨床現場では,
1枚の心電図読影に与えられる時間はほんの数秒~数十秒しかありません.
その中から重要な情報を過不足なく拾うという時には
「所見を拾う技術」と同じくらい,臨床的に問題とならない「所見を捨てる技術」が試されます.
「限界を理解して読影する」という感覚をもつことは
この「所見を捨てる技術」を研ぎ澄ます作業に直結しますので実はとても重要なのです.

 

今日のまとめ
●心電図に「しかわからないこと(不整脈)」,「でもわかること(虚血)」,
「にはわかりにくいこと(形態異常)」に区別して,心電図検査のもつ有用性と限界を理解する.

 

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師でなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

——————————————————–

本連載の続き・バックナンバーはこちら

——————————————————–