コラム

【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第26回 頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性

 

 

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これまでの記事はこちら

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頻脈をきたす病態は沢山ありますね.
見ているこちらがドキドキとしてしまうくらいです.

 

これから種々の不整脈の話をすすめる上で
まずは頻脈の分類と名称に慣れていただく必要があるので
それを紹介しましょう.

 

今回は「上室性」「心室性」という言葉について説明します.

 

心臓は解剖学的には4つの部屋に分かれています.
教科書にもよく断面で示されるように右房右室左房左室です.
これは「心室壁」という壁と「弁」という扉によって仕切られています.

 

これらは解剖学的な仕切りですが,
電気的な仕切りでいくと心臓は大きく2つの部屋に分かれます.
左右の心房は電気的に1つに繋がっており,
また心室も心室中隔から各自由壁に伸びる
ヒス-プルキンエ線維にみられるように

1つに繋がっているとすることができます.

 

心房筋と心室筋は基本的に絶縁体の線維性成分で分断されています.
これは母親の胎内にいる時に形作られるもので,
原始心筒の伝導性をもった中央部分は
後に房室結節となる部分を残して
周辺からアポトーシスされ絶縁性の組織に置換されるためです.

 

この時にアポトーシスに失敗すると

房室結節という本来1本しかない通り道の他に

余計な伝導路が病的に存在してしまいます.
これを副伝導路とよびます.

 

 

まとめると電気的に心臓は原則2つの部屋(心房,心室)と
それを繋ぐ1か所の通路(房室結節)から成り立つといえます.

 

特に体の上方にある心房2つをまとめて「上室」とよび
ここを起点に生じる頻脈を「上室性頻脈」とよびます.

 

一方で心室2つをまとめてこれを上室と対比して
「下室」とでも呼べばよいのですが,
何故かこれは「心室」とそのままよびます.
ここを起点に生じる頻脈を「心室性頻脈」とよびます.
これらのよび方ルールははただの慣習です.

 

以上が「上室性」「心室性」の言葉の説明になります.
これで「上室性」の言葉の意味がわかったと思いますので,
次回は上室性頻脈の種類について説明していこうと思います.

 

 

今回のまとめ
●心臓は電気的に2つの部屋(心房,心室)とそれを繋ぐ1ヵ所の通路(房室結節)から成り立つ.
上方にある心房2つ(右房,左房)をまとめて「上室」とよぶ.
下方にある心室2つ(右室,左室)はそのまま「心室」とよぶ.

 

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師だけでなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

 

→【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類

 

 

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–「みんなの心電図」目次–

【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1  心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう 【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類

 

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