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【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第15回 心筋梗塞の心電図の成り立ち

(1)T波増高

 

 

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これから4回にかけて,急性心筋梗塞の心電図変化の成り立ちについて,

 

(1)T波増高(今回),
(2)ST上昇(第16回),
(3)異常Q波(第17回),
(4)冠性T波(第18回)と順に解説します.

 

また,第19回では,これらの所見をまとめて経時的に理解する回を設ける予定です.

 

 

まずは (1)T波増高 の話です.
超急性期の心筋梗塞ではT波の増高が起こりますが,これはなぜでしょう?
一言で説明するなら「虚血が起こると心筋細胞周囲のK濃度が一過性に上昇するから」です.

 

 

まずは正常心電図において心室筋の心外膜側と心内膜側の活動電位を比べてみてみましょう.
すると心内膜側の方が先に脱分極します(効果 I 第9回).

 

 

また,1相の時に生じる外向き電流を引き起こすイオンの通り道(チャネル)は
Ito(一過性外向きKチャネル)と呼びます(第10回).
実はこのイオンチャネルの分布は心室筋の内外で分布に差があり,
心外膜側ほどたくさん存在するのです.
したがって,心外膜側の方が心内膜側より先に過分極を起こします(効果 II).

 

 

効果 I+効果 IIにより正常であっても,
心内膜側より心外膜側の活動電位時間(APD)の方が短くなっているのです.

 

 

ところでT波とは心内外の再分極のタイミングがずれている部分の
活動電位の差で生じる電流をキャッチしたものでしたね(第11回).
このItoの勾配(効果 II)が強ければ,
当然内外膜電位の差分であるT波も目立ってくるわけです.

 

 

さて,心臓に虚血が生じると組織のK濃度が一過性に上昇します.
K濃度が上昇するとItoの働きは増強されます.
したがって,よりT波も目立って「T波増高」となるのです.

 

 

 

心筋組織のK濃度上昇は再灌流によって急性期を過ぎると
wash outされ消失してしまいます.
したがって,「テント状T波」は虚血急性期にのみしかみられないのです.

 

 

エライ専門家先生には怒られてしまうかもしれませんが,
このItoの勾配の説明は難しいので一度聞いたら忘れてしまっても構いません.

 

「なんかK濃度が上昇するとイオンチャネルが…なんか変わってでも…
再灌流したらなくなっちゃう変化だから
陳旧性梗塞では消える所見だったな」,

 

ここまで説明できれば十分だと思います.

 

 

今回のまとめ
●虚血心筋の超急性期は一過性にK濃度上昇しており,T波は増高する.
 再灌流後にK濃度は元通り,したがって,「いずれは消える所見」である.

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師でなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

 

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