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【第1回】連載のコンセプトと自己紹介

 

 

みなさん,こんにちは.メディックメディア編集部です.
この度,心電図の読み方を解説する連載をスタートすることになりました!
著者のDr.ヤッシーは,循環器専門医ではないにもかかわらず,心電図検定1級保持者.
非専門医だからこそ,なぜ難しいかを理解し,どう考えればわかるのか,
という目線で解説してくれています.
心電図を学び始めの方や苦手意識をお持ちの方はもちろん,
応用力(臨床力)を身に付けたい方にもおすすめです!

 

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みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第1回 連載のコンセプトと自己紹介

 

 

「心電図」,「輸液・電解質」,「抗菌薬」.これらの知識は,
専門とする科にかかわらず臨床で必要になります.
医学生・研修医が「まずマスターしたい」領域のベスト3ではないでしょうか.
しかし,いずれも膨大な知識と,それを臨床で活かすための経験を必要とすることから,
「苦手なもの」としてもベスト3ではないでしょうか.

 

なかでも「心電図」については,一度挫折してしまうと,
「専門医にまかせればいいや」
と諦めてしまう人が多いように思います
(それでも心のどこかで“心電図をスマートに読めたらなあ”と感じながら).
「輸液・電解質」,「抗菌薬」はある程度体系的に学ぶツールが世の中には出回っていますが,
「心電図」だけは体系的に読影方法を学ぶ機会がないことに気が付きます.

 

多くの人は,学生時代に国家試験対策として
なんとなく5択問題で「不整脈」の診断名を選ぶ訓練をした後は,
臨床の現場で現実の心電図を解釈する知識がないまま医療者として生きていくのです.
先日,ベッドサイドラーニングで私についた医学部6年生に
「心電図について知っていることを何でもいいから,言ってごらんなさい.」
と聞いてみました.
「波の名前にはPQRSTがあります.徐脈の問題を診断するときにはPQ間隔の変化を確認.
…後は何もわかりません.」
これはあくまで一例にすぎません.
もちろん各個人差があるものの,進級して臨床実習に出ている医学生さんでさえ
「心電図」に関する知識はこんなものです.

 

ちなみに私は循環器内科医ではありません.
しかし,自らも基礎電気生理学を含む心電図関連書籍を読みあさり,
心電図読影に対しては人一倍強い興味がありました.
臨床では年間1万枚以上の読影業務をこなし,
不整脈を専門としている循環器内科医の父にはしばしば気になる症例を相談し,
また心電図をテーマとした論文で知識が増えるように心がけて,
そのたびに実臨床に即した読影方法となるように修正を続けてきました.
そして現在は「非専門医として心電図にどう取り組むべきか」というテーマに対して,
一定の読影方法を確立するに至りました.

 

これから始める連載で,電気生理学の解釈を最小限(頭の疲れない範囲)で取り入れながら,
ロジカルな読影方法を解説します.
単に診断を教えるだけでなく,“読影脳”が育つ解説です.
この読影方法は論理的であるために,経験数に依存せず,
ベテランでなくても,臨床で出会う心電図を十分読むことができることが特徴です.
現に私は臨床経験数が少なかった研修医当時でも,
この読影方法で心電図検定1級*にも一発で合格できました.
心電図は循環器の先生だけのモノといった風潮があるなかで,
非専門医でもここまで読めるということは読者の皆さまにとっても
勇気づけられることではないでしょうか.

 

*心電図検定は日本不整脈心電学会が医療者を対象に行っている検定試験です.
各級に相当するレベルを設定しており,1級は心電図の極めて高度で専門的な
判読力を有する者(循環器専門医または心電図に深く精通したメディカルプロフェッショナル)を
対象としたレベル.合格率6割未満の難関試験です.

 

私の推奨する読影方法は,ありがたいことに院内では
循環器内科志望の研修医を含めて若手からの支持を受けました.
若手医師やコメディカルからの要望を受け,院内での勉強会を定期的に行ってきました.
ちなみに世の中には無数の心電図講義や書籍が存在しますが,
読影脳を育てる観点から見て「いいモノ」と「わるいモノ」があります.
それぞれの特徴を挙げてみます.

 

「いいモノ」
1.実臨床に即しているもの(コンサルトや投薬といった次のアクションが明示されていること)
2.読影手続きの論理が解説されているもの
3.臨床家として迷うポイント(特に虚血の判定)についてヒントが豊富であるもの
4.読者/勉強者の対象を「非専門医」と「不整脈専門医」とに分けて考えているもの

 

「わるいモノ」
1.チャンピオン画像(典型例)ばかり並べて図鑑的に提示し,悩ましい症例に蓋をしているもの
2.論理があまりに乏しくて,日常の読影の手続きとしていかせないもの(“眼で見て全て慣れろ”的な)
3.いたずらに電気生理学の知識を並べて勉強者の脳を疲弊させ,混乱させるもの
4.数字や基準をいっぱい並べ立てて,さも「クライテリア」を暗記すれば読影できると錯覚させるもの
5.緊急性や重症度,頻度に関して★いくつのような漠然とした指標で説明し,
  臨床のアクションとして投薬やコンサルトをどう進めるのかを提示しないもの

 

さらに,心電図12誘導の読影には実は大きく分けて,2つのゴールが存在します.

 

1つ目は循環器内科に紹介すべきかを緊急性を含めて判断する,全ての医療者に必要な読影力
2つ目は抗不整脈薬の治療法選択やカテーテル検査/治療前の評価として電気生理の背景因子推定
(例えば,副伝導路の位置推定,特発性VTの起源推定)など,循環器内科専門の医師に必要な読影力

 

です.

 

非専門医が目指すべきは前者です
(将来,不整脈専門医を考えている医学生・初学者も
まずはこのゴールの達成を目指すべきでしょう).
この連載でも前者を対象としています.
そのためマニアックな知識は極力そぎ落としながらも,
過不足ない知識を体系的に伝えるように心がけています.
どうぞ気長にお付き合いください.

 

メディックメディアの皆さまには,今回この連載を通じて,
読影法について広く伝える機会を頂けましたことを改めて感謝申し上げます.
「心電図」を苦手とする全ての医療者がこの連載を通じて,
心電図読影に興味と自信を得られますことを願ってやみません.

 

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師でなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

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