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【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第25回 頻脈の読影が心電図では最も難しい

 

 

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今回は,不整脈(特に頻脈)の読影の難しさについてお話します.

 

「虚血」(心筋梗塞など)や「形態異常」(心筋症など)の診断における心電図の立ち位置は,
採血心筋マーカー,超音波検査,症状などの複合的な診断要素の中の1つでした(第3回).

 

一方で「不整脈」心電図以外の補助的な検査方法がありません
したがって読影を突き詰める作業,また心電図読解が診断へ与える価値は
前者2者よりも圧倒的に大きくなります.

 

不整脈は2つに大別され頻脈と徐脈があります.

頻脈上室性不整脈の種類が多彩で,
また,頻拍過程で様々な伝導ブロックを伴いやすく
非常に鑑別が複雑とされます.
さらに,頻脈発作停止や慢性期レート管理に使用される薬剤が
膨大でありその選択は非常に難しいです.

 

一方で徐脈は種類が洞不全症候群とブロックの2系統しかありませんし,
治療方法もペースメーカー挿入が主で,複雑な薬剤治療はありません
(非専門医として介入する時にはACLSガイドラインに基づいて,
緊急時アトロピン投与くらいでしょう).
こうした意味では頻脈の読解は徐脈の読解よりも難しいと言えるでしょう.

 

もちろん徐脈もペースメーカーの挿入後管理まで
守備範囲とされる循環器専門医にとっては
その設定や機器トラブル対処を含めると
非常に覚えることが多い領域ではありますが,
非専門医としてはガイドラインの推奨する挿入基準の概要だけを覚えて,
それを紹介する手続きを確実に行えれば
すぐ臨床家としてのゴールに達してしまいます.

 

不整脈はしばしば教科書記述時には発生機序別に系統的に説明されます.
特に頻脈性不整脈の電気的機序は,

●異常自動能亢進
●リエントリー
●Triggered activity(撃発活動)

の3つに大別されます.

 

しかしこの分類は実臨床での鑑別・思考過程と
必ずしも一致するものではありません.
世の系統だった書物はこれに即して機序別に記載されますが,
読影で考慮しなければいけない疾患のカタマリと
こうした機序別分類とに乖離があるのです.

 

まとめとしてなぜ頻脈の読影が難しいのか私なりに気が付いた理由を列挙しましょう.

 

①徐脈性疾患に対して鑑別すべき原因病態の数が圧倒的に多い.
②洞結節とは異なる,異型の先行P波を探す手続きが複雑である.
③不応期に飛び込むことでの房室ブロックや
 変行伝導(=電気的脚ブロック)が合併する.
④頻拍下ではRR間隔があまりに密なため,
 例えばRR間隔不整・整といった理屈通りの鑑別が
 12誘導心電図の目視では困難なことがある.
⑤頻脈を停止させた薬剤使用後の波形(反応性)から
 頻脈の原因推定を振り返らなければならず,
 初療時の1枚の心電図だけで確定診断できないこともある.
⑥使用可能な薬剤の種類(抗不整脈薬)があまりに膨大である.
⑦12誘導心電図のみでは機序推定が不可能であり,
 特別なEPS(電気生理学検査)を必要とするものも多い.

 

不整脈(基本編)の連載では,頻脈性不整脈(主に上室性の頻脈性不整脈)を
理解できるよう必要な知識についてお伝えしていきます.
これだけでもみなさんの不整脈への対応能力はぐっと向上するはずです.

 

次回はまず,「上室性」「心室性」という言葉の意味についてお話します.

 

今回のまとめ
●不整脈は心電図で診断する.
●不整脈は大きく頻脈と徐脈に分けられる.
●不整脈では特に頻脈の読影・鑑別が難しい.
●本連載では上室性の頻脈性不整脈に焦点を当てて説明を行っていく.

 

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師だけでなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

 

 

→【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性

 

–「みんなの心電図」目次–

【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1  心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう 【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類

 

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