コラム

【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第17回 心筋梗塞の心電図の成り立ち

(3)異常Q波

 

 

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今回のテーマ,異常Q波を理解するにあたって,
Window(窓)現象」という言葉を覚えましょう.

 

心臓の断面はドーナツ様になっています.

電極の対側の心筋には内膜側から外膜側へ
(電極から離れる)電流が流れていますが,
普段は電極直下の電流の影響が大きいため
心電図には反映されません

 

 

 

電極直下の心筋が壊死すると,
そこがまるで窓のようになり
対側の電流が初めてみえるようになります

 

 

 

 

特に胸部誘導では,R波は電極直下の心筋の
起電力がないと生じませんので,
起電力が失われるということはR波増高不良も起こります.

 

第19回で,急性心筋梗塞の心電図所見
(①T波増高,②ST上昇,③異常Q波,④冠性T波)
を時系列でまとめて解説する予定ですが,
異常Q波以外の所見は急性期を過ぎると消失しうる所見です.

 

一方で,死んでしまった心筋は通常再生しませんので,
このwindow(窓)現象による異常Q波は
いったん生じると正常心電図には戻りません

 

このため,異常Q波のみがみられる場合は昔の貫壁性虚血を示唆し,
陳旧性心筋梗塞の所見といえるのです.

 

 

今回のまとめ
●電極直下の心筋壊死が起こると,window(窓)現象で異常Q波が出現する.
●異常Q波は急性期を過ぎても残存する所見である(陳旧性心筋梗塞).

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師だけでなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

 

→【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波

 

 

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–「みんなの心電図」目次–

【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1  心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう
【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類

 

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