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【第30回】マクロリエントリー理解の準備(2) 心房エコーと逆行性P波

 

 

みんなの心電図

〜非専門医のための読み方〜

 

第30回 マクロリエントリー理解の準備(2) 心房エコーと逆行性P波

 

 

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今回は房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)と房室回帰性頻拍(AVRT)で生じる
「心房エコー」と,その心電図所見である「逆行性P波」について説明します.

 

前回(第29回),
房室結節に2分路(fast pathwayとslow pathway)をもつ人がいる
というお話をしました.
では,もしこのような人の心臓で何らかの原因で
心房期外収縮が起きたらどうなるかを考えてみましょう.

 

 

心房期外収縮による興奮刺激が房室結節に入り込むタイミングによっては,
slow pathwayを順行性に下った興奮が,
逆行性にfast pathwayを興奮が駆け上がることがあります

 

この逆行性波を介して心房に伝わる電流は
通常のP波とベクトルの向きが真逆になります.
こうした房室結節のグルグルした電流から
心房側に(吐き出されるように)飛び出してくる
上行性にジワジワ伝わる電流を「心房エコー」と呼びます.

 

先程述べたように普段のP波と逆ベクトル方向に伝わるこの心房エコーは
通常P波が陽性となる誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)で
各誘導に対して電流が遠ざかってゆく,すなわち陰転化します
(洞結節由来のP波はⅡ誘導で陽性になるのが通常なのでした〔第6回〕).
心房エコーを反映した波形は「逆行性P波」とも呼ばれます.

 

逆行性P波はQRS波の直後にみえることが多いです.
一方で,心房エコーとヒス-プルキンエ線維の伝導が
同時に生じてしまうことも多いため,
その際には逆行性P波はQRSに隠れて(融合波として)見えなくなってしまいます.

以上が心房エコーと逆行性P波の説明になります.
次回とその次の回では,逆行性P波の意義をより深く理解するため
「冠状静脈洞調律」と「移動性調律」というものについてお話します.

 

今回のまとめ
●房室結節をslow→fastで伝導することで心房エコーを生じることがある.
●心房エコーは下方誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)で陰性の「逆行性P波」として観察される.

 

 

著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師だけでなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.

 

 

 

–「みんなの心電図」目次–

【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1  心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう
【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類
【第28回】刺激伝導系の整理
【第29回】マクロリエントリー理解の準備(1) 洞調律での2経路の伝導
【第30回】マクロリエントリー理解の準備(2) 心房エコーと逆行性P波