レビューブックシリーズ(電子版)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
みんなの心電図
〜非専門医のための読み方〜
第11回 QRST波形の成り立ち
(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
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これまでの記事はこちら
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前の2回の記事で,QRST波形理解の下準備をしてきました.
いよいよ今回は,これらの知識をQRST波形の理解へつなげましょう.
まず第9回では,心室の収縮は内膜側から始まり,
拡張は心外膜側から始まるということを説明しました.
次に第10回では,心筋細胞が収縮,弛緩するということは
細胞レベルでは各々,脱分極,再分極という膜電位の変化が
起こっていると説明しました.
したがって,心室の収縮・拡張時に起こる現象を時系列で並べると
「内膜側の脱分極」⇒「外膜側の脱分極」⇒「外膜側の再分極」⇒「内膜側の再分極」
となります.
これをふまえて内膜・外膜の各々の活動電位を示したのが次の図です.
先に内膜側が脱分極するので,同じ時間の外膜側と比べると内膜は相対的に+です.
このため電流は内膜側から外膜側へと流れます.
再分極は外膜側から始まるため,この時も内膜は相対的に+となり,
内膜側から外膜側へと電流が流れます.
外部の電極から見た際には近づく電流は上向きに触れるので,
2つの上向きの波が現れます.
これがQRSの山とTの山なのです.
誘導によってはQRSが下向きになるものがあり(後に解説します),
正常ではQRSが下向きならT波も下向きになります.
虚血の所見として「陰性T波」というものがありますが,
あくまでこれはQRSの山と逆向きの際につける所見であり,
「下向きのT波」という意味ではありません.
QRSがそもそも下向きの誘導では「上向きのT波」を「陰性T波」とよぶので注意しましょう.
今回のまとめ
●正常ではQRSとT波は同じ向き
●QRSと逆向きのT波は,上向きでも「陰性T波」とよぶ(虚血の所見)
著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師だけでなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.
→【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう
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–「みんなの心電図」目次–
【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1 心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう
【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類
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