レビューブックシリーズ(電子版)
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1 心房の伝導)
みんなの心電図
〜非専門医のための読み方〜
第6回 P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1 心房の伝導)
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刺激伝導系の興奮は上大静脈開口部にある洞結節から始まります.
心房では細胞同士がギャップコネクションにより接着しており,
ここをイオンが通過することで,伝導が起こります.
後にでてくるプルキンエ線維を高速道路にたとえると,
心房の刺激伝導はじわじわゆっくり細胞間を伝わっていく,
一般道のイメージです.(第8回)
刺激伝導系を整理するうえでは
「高速道路のように周囲と隔絶された伝導専用経路であるのか?」,
「伝わる速度が遅いのか,早いのか?」といった
性質の違いを整理することが大切です.
網目のような一般道をじわじわ伝わる電気の流れ一つ一つを
頭で理解することは難しいです.
そこで,出発地“洞結節”から目的地“心室”に向かって流れる
心房の電気を(細かい道筋の違いはいったん無視して),
右心房に流れるものと左心房に流れるものの2つに大別して考えます.
右房に流れた電気によりできる波を「右房波」,
左房に流れた電気によりできる波を「左房波」といいます.
通常の洞結節は右房流出路付近にあることから
伝導は右房から始まります.
したがって,右房波と左房波のタイミングは
右房波→左房波の順番に出現します.
次に,12種類もある誘導のうち,
どこに着目してこの右房波と左房波をみればよいのでしょうか?
その答えは「Ⅱ誘導」と「V1誘導」です.
Ⅱ誘導では右房波も左房波も電極に近づきます.
電極に近づく電気は心電図で上向きに記録されるのでしたね(第4回).
したがって,上向きの単峰性P波となります.
一方でV1は患者さんの右胸につく電極ですから,
先に出現する右房の電流は近づき,
後に出現する左房の電流は遠ざかっていきますね.
したがって,上向き→下向きの順番で二相性のP波になります.
右房波と左房波の見え方は
電極との位置関係によって12誘導で様々です(第5回).
しかし一番高くて見やすいのがⅡ誘導であり,
右房波と左房波のコントラストがはっきりとするのがV1誘導です.
このため,P波をみる際にはⅡ誘導とV1誘導をみるクセをつけることを
オススメします.
今回のまとめ
●心房波(P波)は「Ⅱ誘導」と「V1誘導」に注目する
著者:Dr. ヤッシー
内科医.心電図読影へのあくなき探求心をもち,
循環器非専門医でありながら心電図検定1級を取得.
これまでに得た知識・スキルを臨床現場で役立てることはもちろん,
教育・指導にも熱心.若手医師だけでなく,
多職種から勉強会開催の要望を受けるなど,頼られる存在.
→【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
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–「みんなの心電図」目次–
【第1回】連載のコンセプトと自己紹介
【第2回】初学者はなぜ,心電図を苦手と感じているのか?
【第3回】心電図でわかること,わからないこと
【第4回】近づく電気,離れる電気
【第5回】電極のつけ方と基本波形
【第6回】P波はⅡ誘導とV1誘導を見よ (刺激伝導系その1 心房の伝導)
【第7回】心房から心室へは1本道(刺激伝導系その2 房室結節の伝導)
【第8回】心室壁の高速道路と一般道 (刺激伝導系その3 ヒス-プルキンエ線維の伝導)
【第9回】心室壁はつっかえないように縮んで,伸びる(QRST波形理解の下準備その1)
【第10回】パッチクランプ法でみる細胞1粒の活動電位(QRST波形理解の下準備 その2)
【第11回】QRST波形の成り立ち(刺激伝導系その4 心室の興奮と弛緩)
【第12回】QRS波の胸部誘導でのグラデーションを感じよう 【第13回】心電図を確認する眼の動き
【第14回】冠症候群の診断は合わせ技1本
【第15回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (1)T波増高
【第16回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (2)ST上昇
【第17回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (3)異常Q波
【第18回】心筋梗塞の心電図の成り立ち (4)冠性T波
【第19回】心筋梗塞の心電図は出る順番が大切
【第20回】心内膜下虚血の心電図 ST低下
【第21回】ST変化の鏡面像(Mirror image)
【第22回】冠血流域と誘導の対応関係
【第23回】速読式 心拍推定
【第24回】速読式 QT延長推定と基礎疾患
【第25回】頻脈の読影が心電図では最も難しい
【第26回】頻脈性不整脈の分類 (1)上室性と心室性
【第27回】頻脈性不整脈の分類 (2)上室性頻脈の種類
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